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ろうそく

贈りものを探していた
残らないものを探していた
灯すと樹木のもようが浮かぶ蜜ろうのろうそくは
美しいひとに相応しかった

はずんで階段をおりると
夜に似合うピアノの音 
ほの暗く林檎の匂いのする部屋で
ろうそくは大切にされているらしく
心地よさげにちんまりと立っていた

後日訪ねると 
ろうそくは、なかった
あのひとは 
とっておきの日に火をつけたよと微笑んだ

願ったとおりに消えてしまった何か
かえり道、さみしい燃えがらを
えいっ 
月に向かってほうった