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額縁
私はこの部屋の大きな窓から見える、くるしいほどあたたかな太陽あるいはひんやりとあたたかな月を何年もみつめた。飛散防止の格子柄の間に、それよりもさらに小さな格子柄が並び、やっとその姿が見える。大きな窓はまるで額縁のようにたたずみ、ただじっとそこから私の内と外を隔てている。
私がこの部屋の中で唯一外と曖昧になれる場所。
窓に手を当てればあたたかく、あるいはつめたく感じれる場所。
そのあたたかさやつめたさは、ずっと変わらないように思える。外にある木々や空、いろんな色の屋根、無数の電灯、長い電線をつなげた鉄塔、ひかりを私から遮るカーテン。清らかな空気だけを私の中へ入れる網戸は太陽の光をうけ、きらきらと煌く。
冬の日、陽がのぼっているうちは窓からあたたかな光が影を落とし、少し右に身体を向けると、しんとした空気が鼻を抜けるようになる。
夏の日、私たちの身体は所詮タンパク質と水、その他の有機物で構成された実に脆い存在なのだと知らしめるようにふり注ぐ陽の光は、いつか人や木、動くもの生きるものすべてを焼きつくすのだろうか。
何もかもが有限で無限ではないいのちを抱えたこの星で、いつか誰もいなくなった星にあたたかな光を与える太陽は、つめたくもそっとやさしいあたたかさを見せる月は、なにを思うのだろうか?