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よる

雨降るよる、きこえる。

深夜に走るタクシーの光さえも眩しくて目をあけたくなくなる、さむい、さむいよる。きみにホットミルクを作ってあげよう。少し、シナモンかラムダークを入れようか。

ひとびとが静かにしている間、実用的ではないものばかりが詰め込められた箱に閉じこもりたいこともある。そうすれば、朝には少し良くなってる気がしてしまう。

ウールのちくちくは、きみを眠らせないようにしている。いじわるなやさしさはどこにでもありそうで、ないのだ。

さむい日にはしずかに過ごさなければならない。知らぬまにゆっくりと、それは近づいてきているのだから。

雨がつよくなってきた。ひとはいつの間にか、この世界でいちばんにつよいと思ってしまうが、ここではひとなんかよりも、ずっとずっとつよい。言葉は知らないけど、ずっとつよい。

カシミヤのブランケットから、あしを出してはいけないよ。きみが寝ている間にも星は跨がれていく。何千、何万、何億光年離れた先の友人を思い出して。交わした言葉はなんだったろうか。

きみのいるしずかなよる、いいおとなたちはまだしらない。