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Dear My Sister

あなたは私より5ヶ月ほど前に私の両親の元にきて、生きてきましたね。
私は生まれてすぐあなたに支えられて今まで生きてきました。

私が車に乗るとすぐ寝てしまう癖は、幼い頃からあなたがあんまりにも心地よくさせてくれるからなのですよ。自然と眠りについてしまうのです。
けれども幼い私はあなたを汚してしまったり、蹴飛ばしてしまったりしてしまったようですね。本当にごめんなさい。

あなたたちを動かすのは確かに人間ですが、人間の力だけでは動きません。
あなたがしっかりと心臓を動かし、血液を流すことによって何馬力という大きな力が動くのです。

あなたはもう長いこと私たちをいろんなところへ運んでくれましたね。
富士山へと続く山道を登ったのも覚えています。あまりにもぐるぐると回るので少し気分が悪くなってしまいましたが、あなたは私たちを力強く運んでくれました。
長野に行ったのも覚えています。山や湖などの素敵な景色をあなたと一緒に気の済むまで眺めましたね。
言い尽くせないほどの思い出がありますが、私たちはもちろん、あなたも年老いて、私たちはあなたの老体にたくさん鞭を打ってしまったと思います。
それほどあなたのことが好きだったのです。
あなたの代わりになるものを幾度となく探しました。それは何年も。
その間もあなたは私たちを運び続けてくれ、危ない目にも一度も合わせず走り続けてくれましたね。
もしも危ない目に合えば、私たちはもちろん、あなたにも大きな怪我を負うことになると思うといつもひやひやしていました。でもそうはならなかった。
それはあなたを動かす人間の能力もあるかと思いますが、私はどうしてもあなたのおかげだと思ってしまいます。

あなたの代わりになるものを見つけたのはつい数ヶ月前のことでした。
いつか来るその日を私たちは覚悟していたつもりでしたが、やっぱり寂しくてたまりませんでした。
だってあなたは私にとって唯一のおねえちゃんのような存在だったから。
身体を悪くしてからあなたに頼ることが多くなって、そのたびにあなたの大きな愛と力を感じました。
あなたの力なしに私はここまでこれなかったのです。
今まで本当に、ありがとう。

あなたは廃車になると聞きました。
すごくすごく残念で心が痛いです。
でも同じだけ、大きな役目を終えたあなたには姿形が変わってもゆっくり休んで欲しい気持ちがあります。
どうか、わかってくださいね。

これから先、青光りする新しい車で、桜並木を走るときも、夏の照りつけるような天気の下走るときも、秋の涼しげな空気を感じながら走るときも、雪で真っ白になった道を走るときも、あなたのことを思い出すことでしょう。

今までたくさんの思い出と安心と、心地よさを与えてくれて本当にありがとう。大好きです。そして、さようなら。
どうかゆっくり休んでください。

あなたの妹より

#20170909

#車 #ありがとう