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動態デザインに感動したヨコハマダンスコレクション

以前、Instagram広告を見てダンス系イベントのチケットを買って以来、ターゲティング広告にロックオンされたのか、同様の広告が多めに表示されるようになった私。またまんまと興味を引かれてしまいました。
でも期待以上!のパフォーマンスで、片道1時間以上掛けてでも観に行った甲斐がありました。


‘動態デザイン’ にピンときた

ヨコハマダンスコレクションなるイベントが開かれているのは今回初めて知ったのですが、どうやらコンテンポラリーダンスを主に取り扱ったイベントのようです。

今回興味を持ったのは広告動画ももちろんですが、プロフィールに書いてあった『動態デザイン』なるものに惹かれたからです。
以前観に行ったとあるパフォーマンスが舞台装置多めでやや期待外れだったこともあり、どちらかというと人間の生身の動きから放たれる身体表現を見たかった私にはピンときました。


「動態」の妙

2部構成の第1部は、4人のダンサーによる動態パフォーマンス『Moving State 1』。なんというか、人間という枠を超えた動作の表現をされていて、とてもおもしろかったです。きれいに見せるというよりは動作のおもしろさを追究するという感じで、「まい」とは対局のコンセプトとも言えるでしょうか。
そして、ダンサーの方たちの柔軟性がすごい。這いつくばるような動作など地面と接する頻度や時間が長く、‘地’ を上手く使った動作がたくさん見られました。
首や手足の先がビヨヨンとばねのように振動する動作も散りばめられていて、ユーモラスというか、動態を追究したからこそ見られる良さなのかなと感じました。

あと全体的な印象として、イソギンチャクのように見えたり、細胞や微生物などのミクロなものの動きにも見えたりしました。
こういう現存の自然物に重ねたがるのは人間の癖(バイアス)なのかもしれませんが、ただ一方で人間の生み出す(生み出せる)動きのほとんどは、おそらく自然界にすでに存在しているのではないかとも思えます。
仮にそうだとすると、表現した人に自然を模倣する気がこれっぽっちもなかったとしても、自然界のものとどこかしらシンパシーのある動きとなるのは実は宿命ではないかと考えることもできそうです。


鶏か卵か、この波動はどこから

第2部『assimilating』は、『Moving State 1』の動態デザインを手掛けた梅田さん自らが1人でステージに立ちます。
白い泡のような、魚の群れのような、細胞のようなグラフィックスを投影した中に立ち、自らが ‘動態’ となりグラフィックスとコラボするのです。時には海の波のようにも見えるし、時には何かの心身の波動にも見える。
最初ちょっと見ただけだと「グラフィックスではくをつけただけでしょ」と言えてしまうような雰囲気もなくはないのですが、続けて見ていると何か新しい境地を開いてる感じがしてきました。
いったいこのグラフィックスは彼の外側からアクセントをつけている外的環境なのか、それとも彼自身の心身の波動が外に漏れ出ているのか、分からなくなります。不思議な感覚でした。

そしてよく考えると、梅田さんは舞台の中央からほとんど動いていない・・。手塚ゾーンかよ、と思いました。すみません笑
でも、舞台を動き回っていないからといってエネルギーが低かったり、あるいは容易に実現できるというわけではない、ということくらいは私にも分かります。
内なるエネルギーやインスピレーションやクリエイティビティを、「人間ぽさ」や「人間的発想」に溢れた身体の動作・息づかいで表現するダンスも良いけれど、もっと違うアプローチの表現もあっていいのではないか。そういう意味で、このパフォーマンスは非常に興味深いものでした。


音にもこだわりあり?

『Moving State 1』『assimilating』ともに、流している音がやや独特でした。いわゆる通常の音楽ではなく、環境音やノイズのイメージに近く、ところどころ強烈なのもありました(人によっては耐えられないレベルの不快なグワングワンする音)。
あれは意図的に人が不快さを感じるような音を織り混ぜたのか、どういう心理効果や表現意図があったのか、少し気になりました。たとえば、人間的な情緒やストーリーといったものを極力排除することにより、より「動態」そのものに着目しやすい環境にしたかったとか。

サウンドデザインはすべて梅田さんが担当されたそうなので、スタジオ前でそのまま残っていたら聞くタイミングがあったのかな。
あと帰る際、長い通路で『Moving State 1』のダンサーさん* たちとすれ違ったのですがとっさに話しかけられず、感動の気持ちだけでも伝えられればよかったなと今さらながら思います。

* 中村優希さん、大塚郁美さん、鈴木夢生さん、中村友美さん


赤レンガ倉庫

話は変わりますが、ダンスコレクションの会場となった横浜赤レンガ倉庫の周りは、色んなイベントを同時並行的に仕掛けていて上手くプロデュースしてますねえ。
このパフォーマンスを観に訪れた際も、仮設スケートリンクがあったり屋外テラス席が並んでいたり観光クルーズ船が停泊していたり巨大な構造物でプロジェクションマッピングが行われていたり、ダンスコレクション以外にも様々な催し物が開かれていました。
駅から向かう途中の橋や歩道が混み合うのが玉に瑕ですが、老若男女/多国籍/家族連れ/わんこにゃんこなど、たくさんの人(動物)が週末のお出掛けを楽しんでいました。


'23/12/15 最終更新

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