わっしょいぶいあ〜る! 第三回公演 VRC 2024.4.22 22:00

ネタバレあり







VR空間上での演劇。。VR世界、VRc上の常識やルールを下地とした芝居が良く観られる演劇グループ『わっしょいぶいあ〜る!』。二篇のコントを上演。約30分

全体として過去よりも勢いがある芝居であるのだが、この勢いの質感が前半の『雌雄を決する』と後半の『祟りじゃ!』では異なっている。また「言葉」に対しての向き方がVR空間の特性を生かしたモノ、そして現実に近いモノと対照的に描かれる。

『雌雄を決する』

少し性的な内容含む。言葉として出てくる程度。

会話をしている二人から始まり、他愛のない話をしている。どこか間延びというか、抜けているような会話で脱力的な内容と思わせるモノかと当初は思った。が、舞台が進行するにつれて、意味が取れなくなっていき、段々と不条理的な様相を帯びてくる。

興味深いのは概念と称した「言葉」が登場することである。これは人の形をしておらず、本来的な意味での言葉、そこには「盛れ!」「まな板!」と書かれている性的な意味を含んだ人格のある「視覚的な言葉」が現れる。これらは膨張し、拡大し、大声で騒ぐ。
「言葉」が視覚的に現れるが、その言葉が発する「音としての言葉」はラストにかけて勢いよく意味を喪失していく。

この不均衡ゆえに認識に齟齬が生じ、恐怖や笑いが生まれる所であろう。ただ、この概念は発する言葉自体は動機・意味が不明であるものの、何かしらに主張をし、何かを張り合って、何かを喧嘩して騒いでいる。
これはまったくわからない外国語で話しかけられて、そもそもがわからないというものではなく、日本語で喋っている。つまり、意味を取ろうとしてしまい混乱が生じる。

意味そのものが進行して溶けゆく最中でも、生き物の形はないのに、何をしているかはわかってしまう不思議な体験。言葉というものの意味が揺れる中でも、勢いや声の演技で芝居は進む。と同時に、視覚的な単語は残り続ける気味の悪さ。主張の内容が性的なモノと捉えられるため一層に気味の悪さに拍車がかかる。そして騒いでいた言葉が最後は消え、無が訪れる。

視覚的にも音としても、拡大、膨張して溢れ出る「言葉」。それはあたかも暴力的にも視えて。あるシーンで当初からいた二人の人物が一本の傘を開き、膨張し騒ぐ言葉に縮こまりながら迷惑そうに抗議をする様は、昨今のSNS上で見られる言葉を主とした交流に対する炎上騒ぎの揶揄のようにも視えた。

『祟りじゃ!』

VR空間・世界にあっての、「エラー」について二人の人物が変わった噂の会話している。その前に胡散臭い人物が出現する。彼はPCスペックの改善や設定項目のような世界の外側・システムから解決するのではなく内側から、VR世界内にて祟りだと主張する迷信のような言説で解決できると騒ぐ内容。

こちらは前の話とは異なり、VR的な演出は多くなく、現実的な描写が多い。また、「言葉」も胡散臭い部分はあるものの、意味を崩すようなモノではない。むしろ、人の形をして多彩な身体表現を用いて、怪しい言説の説得力・意味付けを補強している部分が観られる部分が対照的だ。勢いが有ることには変わりはないのだが、これは意味付けのためのモノであり、理屈は無茶苦茶ではあるのだが、それを訴える強引な部分にに滑稽さを感じる


数多くの惹きつけるようなヘンテコで、しかして妙に説得力を持たせる大きな動きと、抑揚・緩急を付けた巧みでおかしなスピーチをする胡散臭い人物。そしてそれを突っ込みながらも、時に揺れ動きながらも聞く二人。一人は取り込まれてしまうのだが。
彼らもまた舞台を観る観客のようであり、ツッコミや飲まれそうになる展開は実に観客の代弁者や近さとして、滑稽さを強めて、舞台に引き込むモノであった。

スクリーンを写して、ある胡散臭い昔見たような広告画像が出現するのだが、ここにはある言葉が書かれている。見ていた一人の登場人物がその言葉を読み上げるのだが、この読み上げの際に。読む言葉と音としての言葉の差異がよりよく感じられて。

言葉の性質とは、となんだか難しい事を考えてしまうのだけれども。
全体として、勢いが印象として強く残り。観ている最中は意味わからないな〜とケラケラ笑ってはいたのだけど、スッキリとした感覚が残った第三回公演でござんした。

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