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「さみしい夜にはペンを持て」/古賀史健

「さみしい夜にはペンを持て」/古賀史健

尊敬している同僚が絶賛していたので、読んでみました。

苛められっ子のタコジローの姿に、身につまされるものがありました。自分も、中学生の頃は、片田舎の進学校で、人間関係に思い悩み、また、学園生活というのには、逃げ場のない閉塞感があって、タコジロー同様、鬱屈とした日々を過ごしていたのを思い出しました。

そういった、(多分)中〜高校生独特の閉塞感、苦手な人物とも、日々関わることを要求され、うまくやることを期待される状態、そしてそこでうまくやれてない事、そこから逃げ出す事が、(両親とか)身近な大切な人に、非常な心労をかけてしまいかねない、という状況は、人生における、最初(かどうかわかりませんが)の難局ではないか…という思いを新たにしました。年老いた今、そういった感覚は忘れがちで、仮に、自分の子供が中高生になって、そういう状況に陥っても、今ひとつ、どういう気持ちなんだか分からなくて、無理解な父、的なポジションにおさまってしまいそうな危機感を感じていたので、目の覚めるような思いがしました。

中学生時代に、自分が非常に助けにしていた、森絵都さんの『カラフル』に似た手触りがあるように感じました。細かい内容は思い出せませんが、何度も何度も読み、そこから、生きる気力を得ていた覚えがあります。そういった、若年者の心を導くようなジュブナイル小説というのは、(『わたしのグランパ』を読んでいる時も思ったのですが)人間の成長過程において、非常に重要な役割を果たしているのではないか…と思わされます。

高校生くらいになった時に、クラスメートが、村上春樹の『スプートニクの恋人』で、主人公(小学校教師)が、にんじん(登場人物)の盗んだ「保管庫の鍵」を、一緒に川に捨てるシーンに深い感銘を受けて、俺はこんな大人になりたい、と言っていたのを思い出しました。確かに、そういった、若年者にとって象徴的な意味合いのある行為を、世間的な良識を度外視して(なんかよくわからんけど、大事な鍵なんじゃないの!?的な)遂行することで、若年者の魂を救うことが出来る…というのには、非常にロマンを感じますが、まぁ、なんか、難易度が高そうだなぁ…と当時思った覚えがあります。

なので、もし、自分の娘が、中学生になって、どうも鬱屈している様子であった場合、ヤドカリのおじさんばりに、とりあえず、10日間、日記を書いてみないか?とか言って、より、プラクティカルな形で解決策を呈示出来る可能性を感じました。



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