ホテルニューオータニで一人5000円で宴会できる？その2～参加者にホテルの領収書が出ている、とは～
前回は、ホテルニューオータニで一人5000円で宴会できるけど、メシがショボくなるから一般人はやめておいた方がいいよ、という結論でした。
普通に考えるとあれで終わりだったのですが、ところが、首相本人の口から変な話が出てきました。
「会食の費用についてはホテル側が（領収書を）発行して事務所の者が渡している。（安倍事務所は）領収書の発行も行っていないし、受け取りもない」という首相の回答です。
一般的に、ホテルの宴会場を貸しきってパーティをする場合、企画団体が参加者から参加費を集めて、まとめてホテル側に支払い、ホテルから領収書を受け取ります。
たとえば、政治資金パーティは、実際にパーティに参加しない人からも参加費を取り、参加費と比較して明らかに原価が安い食事を用意して、その差額を政治団体の利益にするものです。
つまり、実際にパーティに参加する人数が100人くらいだとしても、500人くらいにパーティ券を売りつけ、一人2万円の料金を取ります。そして、パーティ当日は原価5000円のショボいメシを100人分出すのです。そうするとパーティ券販売収入1000万円に対し、50万円の出費ですから、950万円が政治団体の利益になります。
この場合、当たり前の話ですが、ホテルは政治団体から50万円しかもらっていないので、政治団体に50万円の領収書を出します。一方でパーティ券を買った側の人には政治団体が2万円の領収書を出します。パーティ券を買った側の人にホテルの領収書は出ません、というか出せません。当たり前の話ですが。
ただ、今回は政治資金パーティではなく後援会の旅行ですので、お金を集めるのが目的ではありません。ていうか、そんなことしたら後援会の人はぼったくりだと怒ると思います。なので、5000円の参加費をもらい、5000円に近い原価で夕食会を開催したはずです（それでもショボいメシになってしまうのは前回考察したとおりです）。
この場合、首相事務所が参加費5000円×参加者数を収入として政治資金収支報告書に計上し、ホテルに支払った金額を支出として同様に政治資金収支報告書に計上します。そして、ホテルに支払った支出金額が参加者から集めた収入金額を上回った場合、有権者を買収したことになりますが、逆に収入の方が多かった場合は何の問題もありません。
まあ、通常の宴会会計も赤字にならないようにするのが普通ですし、そんな不思議な話ではないと思います。
さて、ここで領収書に話を元に戻すと、先述の通りホテルの宴会場を貸し切ってパーティをする場合、参加者にホテルの領収書が出ることはありません。企画者が参加費を取りまとめてホテルに払うからです。参加者に出るのは企画者名義の領収書です。
今回の場合、企画者は安倍首相の事務所ですから、首相事務所名義の領収書が参加者に出るはずです。
では先ほどの記事にもう一度戻ってみましょう。
－－夕食会の明細書を示し、会費が５千円だということを示すべきでは
「今申し上げたように参加者が直接、宿泊費や旅費を払い込み、また会食の費用についてはホテル側が（領収書を）発行して事務所の者が渡している。（安倍事務所は）領収書の発行も行っていないし、受け取りもない」
－－総額を示した明細書は
「事務所に確認をしたが、そういったものはないということだ」
この質疑応答を素直に受け取ると、首相の事務所は夕食会の金銭的なやりとりに対し全く関係しておらず、ホテルと参加者が直接やりとりしてます、ということになります。なので、当然明細書もありませんし、事務所の政治資金収支報告書に記載する必要もないということのようです。
先ほども書きましたが、一般的な宴会でこういう処理はしません。というか、ホテル側がしてくれません。
なぜなら、参加者数に増減があった場合などのリスクを全部ホテル側が負う形になるからです。
具体的には、事務所側が想定参加者数と単価をホテル側に伝え、ホテル側が参加者から直接参加費を徴収する形になりますが、実際の参加者数が想定参加者数を下回った場合や参加費を取り損ねた際の損失は全てホテル側が負うことになります。
逆に、想定参加者数を上回った場合はホテルの利益になるでしょうが、前回も書いたとおり、参加者の満足度と金銭的な収支のギリギリを考えるのが宴会担当者の仕事です。ホテルが利益を重視した場合、原価を極端に落とした食事を出すことになるでしょうが、そうなると顧客満足度が下がるジレンマに陥ります。ホテルはそういったリスクを負担してくれません。
仮に、ホテルがそういう処理を首相事務所だけOKとしていた場合は、首相に対する便宜供与になる可能性があります。
とはいうものの、今の情報だけでは、具体的にどういう会計処理がなされたのかよくわからないというのが正直なところです。続報に期待して、月曜日から夜更かしはやめましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？