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コンサル探偵 VS 恐怖のカルト教団

■指令
今年の冬は近年稀に見る寒さであったが、そんな寒空の中で背筋の凍るような体験をしてしまったコンサル探偵。どうして報告がこんなに遅くなったかと言うと、お仕事に追われていたのと、今だ消えぬ恐怖に取り付かれているから・・・

2月某日、土曜日、約1年前に中古住宅を購入しているものの、屋根が飛んだり、ナメクジが発生したり、ボーナスが下がったりと、なにかと収支バランスが悪いコンサル探偵家では、今だに空調設備が整っていない。しかし今年の冬は寒かった。さすがに1年は耐え忍んだものの、寒がりのカミさんからはついに「ホットカーペット購入」の指令が出される。

■自宅にて
指令の内容は、「日本で一番安くてよいホットカーペットを購入すること。。。」
カミさんは通販雑誌でチェックしてある2種類のホットカーペットを私に示し、これと同等のものか同じものをこの雑誌に紹介されているよりも安く探して来いと言う。
(性能発注か仕様発注どっちかに統一して欲しいものだ.。o○)と思いながら、通販雑誌のカタログをめくるコンサル探偵、どうやら一方はS■NYOの製品らしいことがわかる。もう一方はよくわからないが、どうやらセンサーで温度が調整されたりする通販マニアご推薦の一品らしい。雑誌をつぶさに分析していると横からカミさんが色々と口を出してくる。

カミさん:「こんなセンサーなんて必要ないわよねぇ、うちは貧しいからホットカーペット付けてる時はエアコン消すし・・・」(なんちゅう惨めな会話)
私:「そうねぇ、大体機能するわけ?そんなもん・・・でも通販マニアが奨めるとなると・・・」
カミさん:「相変わらずそう言うのに弱いわねぇ、関係ないわよ。」(って、お前がコレを指定したんだろうが・・・)
私:「こっちはSA■YOだが、ブランド的にちょっとなぁ~、値段はこっちの方が断然お値打ちだが・・・」
カミさん:「ダメよ、ここに出てる値段で買っちゃ。通販雑誌って安く無いのよ、早く調べてよ!」

結局製品名のわかった■ANYO製品の情報を収集する。と言っても安直なコンサル探偵的にはインターネットの「価格.com」のHPを調べるだけ。が、パソコン関係に疎い(って言うか世間に疎い?)カミさんには、
「ここに載っている情報が日本で一番安い!」
などと嘯いてあり、意外とすんなり納得されているので電気街をしらみつぶしにあたるなんて徒労からは開放されている(ハズだった)。

しかし、どうやらホットカーペットをネット購入する人なんてあんまり存在していないらしく、ほとんど情報が載っていない。がまぁ、目指すべき製品については、それなりの情報をゲット。早速情報の分析にかかる。・・・うーん、なんと、岡山の電気屋で売られているブツが一番安いらしい。

私:「今から岡山まで行かねばならん・・・」

キョトンとしているカミさんに、
「いや、だからね、岡山で売っているのが一番安いみたいなんだけど、送ってもらうのに送料とかが掛かって、結局この外神田で売られているのとほとんど同じ値段になっちゃう訳、300円ぐらいの違いだけど、外神田なら会社の定期で御茶ノ水から歩いていけるから、いいでしょ?自分で持って帰れば送料も掛からないし・・・」

しばらく悩むカミさん。
一体何を悩んでいるのか?まさか300円を惜しんでいるわけではあるまい?おもむろに口を開く。時計は3時半を回っている。

カミさん:「今から行ってくれる?」
私:「あー、まぁ、いいけど、もって帰れるかなぁ、ホットカーペット・・・」
カミさん:「いいわね、自分だけ外出出来て・・・」

昨日から娘が風邪で寝込んでおり、連続3週で土日の足止めを食らっているカミさんは、外出できぬ欲求不満から理不尽な物言いを突きつけてくる。
(ほな、どないせいちゅーねん・・・)
とは思いながら、慣れっこになっているコンサル探偵的には自分だけ外出できることに気分を良くし、早速ホームページに載っていた電話番号に商品の在庫の問い合わせを行い、電車で持って帰れるサイズかどうかを確認する。

■店への電話
ピポパ。。。

電話の人:「・・・はい・・・」(妙にくぐもって)
コンサル探偵:「?(「はい」って、愛想無いな~)あの、○×△さんですよねぇ?」
電話の人:「はい・・・」
コンサル探偵:「あ、あの、ホームページで見たんですが、SANY■のホットカーペットまだ在庫ありますか?2畳用の型番~のヤツなんですけど・・・」
電話の人:「・・・はい、、、まだあります。」
コンサル探偵:「えっと、あの、お店まで行って買って持って帰りたいんですけど、電車とかで持って帰られる大きさですか?」
電話の人:「え、ええ、、、」
コンサル探偵:「(な、なんだ?ダメなのか???)」
電話の人:「ああ、あの、もって帰る人多いですよ。」
コンサル探偵:「(ハァ~?なんなんだ一体・・・)あ、ああ、そうですか、じゃあ、今からお店に伺いますけど、今日はまだやってますよねぇ?外神田の○×ビルでいいんですよね?」
電話の人:「あ、ええ、あの、お店で買われるのであれば、一度事務所の方に来て注文してから1階の窓口で引き渡しになりますので。」
コンサル探偵:「ああ、そうですか、わかりました。」

その時は、やっぱり格安ショップはちょっと普通と違うのかなぁ?などと思っただけだったが、店の名前や店員の不思議な態度、今思い返せば既にその時に気が付くべきだったのかもしれない。

■秋葉原にて
寒いのに秋葉原は混み合っている。ちょうど新型パソコンが販売受付開始をした日らしく、大型店の店先には判で押したようにデモンストレーション用モニターが並べてある。
私の目指す店は、駅を出て直線で道を一本越えたあたりにあるはずだ。ついたら事務所で注文をして品物を受け取る。至極簡単な仕事のはずだった。

が、無い。。。

(おい、ないよ~。)住所が示す場所には事務所ビルのような建物が建っており、その隣の電気屋は私の目指す店とは別の看板を掲げ、店先では携帯電話かなんかを売っている。人に尋ねたりするのが億劫な質のコンサル探偵的には、周りをうろちょろして電気屋のニイちゃんにヘンな目で見られる。
(どうして無いかなぁ~?)3度目の往路、事務所ビルと電気屋の間に細い路地のようなものがあるのを発見する。一瞬立ち止まり、電気屋の前まで行って、復路、やおらその路地に足を踏

わぁお!そこはもう別世界・・・

細い路地の奥はなんと入り口に似つかぬほど奥行きの広い構造になっていた。路地の両側にはなにやら見たことも無いようなパーツを扱う店、なぜか宝石店、ラジオ専門店、天井からは鰐の剥製等々、目くるめくようなアキバワールドが広がっていた。店先に立つは、怪しいインド人風情、いつの時代の人だか足元に説明書きを探したくなるような古びたシャツを来た痩せ過ぎの男・・・
かなりディープな世界に入り込んでしまったようだ。。。もうすぐ突き当たり、あそこまで行って何もなかったら帰ろうと思い、ふと前方を見ると、郵便受けが設置されている。どうやら目的のビルはアキバワールドの懐奥深くに存在していたようだ・・・
大丈夫かなぁ?こんなとこ入ってきちゃったけど・・・全く未経験のゾーンに突入したコンサル探偵的には、あたかもよく来る客かのように振舞いながら、あざとくその郵便受けに探している店の名を見つけ、すかさずその隣に設置されているものすごくぼろいエレベーターのボタンを押す。目指すは6F、○×△。

■事務所前にて
エレベータは見かけよりも普通に自分の仕事をこなし、私を6Fに降ろすと、後ろでその扉を閉めた。エレベータを降り立つと、左手側には古ぼけた非常階段のようなものがあり、その先にアパートのような扉がいくつも並んでいる。すごく不思議な建物だ。大体このエレベータもこのビルのエレベータなのかよくわからないような状態のところに設置されている。っていうか、ここは別のビルのしかも外なのでは???建築学的に全く訳のわからないその建物の中で、目指すべき店は一番手前の扉ですぐに見つかった。ちょっとあっけなさを感じたものの、そのドアの前に立つと、ドアノブには、ダンボール紙に、店の名前が書いてあり、それが白いビニールのヒモで吊るされている。店の名前の上には、

「ただいま不在中ですので上のインターホンを押して下さい。」

とのコメント。
不在なのにインターホンを押せとは意に介せぬな・・・と思いながらも、ここまでたどり着けたことで少々気の緩んでいるコンサル探偵は、何の躊躇も無くインターホンのボタンを押す。カメラ付きのやつだ。。。などとのんきにインターホン写りを気にしようとした時、ものすごい文字が目の中に飛び込んできた!
そのダンボール紙、店の名前の下には、ボールペンで殴りかかれたような文字があった!その文字を頭で理解しようとする私の周りでは、ストップモーションで時が進みだす。

「オ・ウ・ム」

うげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇツ~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

なにぃ~?

既にインターホンには応答が出ている。

「もしもーし」
「もしもーし」
「もしもーし」
「もしもーし」

その落書きを裏付けるような覇気のない不気味で機械的な問い掛けがインターホンからは流れ続ける。。。

インターホンのカメラとダンボール紙に書かれたその落書きのような文字を交互に見ながら、一歩一歩後ずさりするコンサル探偵。
頭の中では、「。。。えーっと、えーっと、あ、あの、い、イタズラかなぁ?た、た、質の悪いイタズラするよなぁ・・・でも、昨日今日書かれた文字でもなさそう・・・大体そんなの書かれたら今日中にだって消すよねぇ・・・消さないってことは。。。えー、と、そのーあのーあうー」

急にストップモーションの世界が終わり、アドレナリンがどばっと分泌されたように体が動かせるようになる。きびすを返し、エレベーターのボタンを押すと、すぐに開いたエレベータに乗り込み遁走開始のコンサル探偵。不気味なことに、エレベータに乗る時もインターホンからは・・・「もしもーし」「もしもーし」「もしもーし」の問い掛けが一定の間隔で発せられている。

■待ち伏せ?
エレベータの中ではこの先どう逃げるのかを考えるものの、頭が全くパニック状態なコンサル探偵、とにかく外に出よう、それだけを考えエレベータから一歩踏み出すと、、、
ちょうどエレベータから出た時に死角になる右斜め前側から声が掛かる。

「ああ・・・6階にいらっしゃった方ですよねぇ・・・なんでしたっけ・・・?」
(おい!!!待ち伏せかよ!!!)
その男は私の目の前にやってきた。
なんとなーくどんよりとした空気がその男を包んでいる。

「・・・何をお探しでした・・・?」

一瞬無視して走り出そうかと思ったコンサル探偵だが・・・
(でも、まぁ、安ければいいか?住所とかウソ書けばいいかも・・・)なんて、せこい根性が顔を出す。それに、退路も無いこんな場所ではその男に従い店に案内されるしか他に手は無いようだとも思われた。
開き直ると結構質の悪いコンサル探偵的には、でもちょっとビビリながらその男と向き合う決心をする。
店の男はどこか焦点の定まらない目つきで人を見ると、「ステレオでしたか?」等と一応商売をする気はあるようだ。案外ノンビリした変わり者の電気商か?などとの思いも頭をよぎる。

■謎の店にて
謎の男:「ステレオですか?」
コンサル探偵:「いや、サ■ヨーの・・・ほら、えーっと」(なんとショックで自分が何を買いに来たのかすぐに思い出せない)
謎の男:「サン■ー・・・ああ、MDコンポですか・・・?」
この男は私にステレオ関係を売りつけたいのだろうか?私は何を買いに来たか思い出しながら、その男について店の中心部に入っていく。中にはもう一人同じような雰囲気の若い男が居る。2対1か・・・少し形勢が不利になる。。。

コンサル探偵:「えっと、あの、ほら、、、、(ほら?、「ほ」・「ら」、そうそう、)ホ、ホットカーペット!」
謎の男:「SANYOのホットカーペットですか、ええ、、、少々お待ち下さい・・・ああ、これ、コレですね、じゃあ、これでいいですか?」

ずいぶん早い売り付けに、思わず
「じゃあ、コレ下さい・・・」と言いかけたコンサル探偵だが、家族の顔が頭をよりぎる。
(やはりここで買ってはいけない!)何か本能的なものを感じるコンサル探偵。
言い訳をするのは仕事柄も性格的にもばっちり自信のあるコンサル探偵、カーペットの箱を見ると、言い訳対象を発見!

コンサル探偵:「あの、ものはこれでいいんですが、柄は?フローリング調のがいいんだけど。」

すると店の男は壁に立てかけてある在庫を見ながら、机の上のノートを確認し、もう一方の若い男性に、「SANYOのフローリングタイプの・・・」と告げる。
どうやらフローリング調の品は置いていないようだ。(よし、これで店を出られる。)
「あ、少々お待ち下さい」と言われたところに、
「フローリング調がいいんですよねー」と追い討ちをかける。
謎の男はノートと在庫、パソコンを見比べ、
「今は置いてないみたいですねー」
(よっしゃー、後は逃げるだけ!)
「じゃ、じゃあ、すみません、フローリング調がよかったんで・・・」
何度も「フローリング調」を魔よけのまじないのように発しながら、店の出口に向かって歩んでいく。入り口付近の机では、先ほどの若い男がなにやらカチカチやっている。出口に足早に向かう私にうつろな目で訴えかけるように、おもむろにディスプレイを指差し示す。どうやら私の求めているのはコレだと言っているようだがなぜか口をきかない。。。
一応、その男にも失礼しますと一声かけ、一路下界へと、あのアキバワールドを抜けていく。

■アキバワールドを抜け
私は何とか拉致されずに外界に出ることが出来た。先ほどまで寒いと感じていた外の空気が今は生きていることの素晴らしさを教えてくれる。
しかし、油断はならない。奴らはあとをつけて私の家族ごとカルトの渦に飲み込もうとしているのかもしれない!こんな時こそ慎重に運ばねばならない!仕事では見せたこと無い慎重さで人ごみに向かっていく。
そう、追っ手をまくのだ!!!
探偵小説には欠かせない「まき」の技術。実はそんなスキルは全く持ち合わせていないコンサル探偵だが、とにかくごちゃごちゃしたところをぐるぐる回る事にする。その前に妻に連絡だ。コンサル探偵は携帯電話を持っていないのでやっとのことで見つけた公衆電話に駆け込み、家に電話をかける。7回ぐらいのコールが一時間のようにも感じる。この間に後ろから襲われたらどうしようと言う不安が頭をよぎり、振り返ってみる。ひょっとしたら家への電話のプッシュを盗み見られたかもしれない。ものすごい後悔が襲ってくる。
やっと妻が電話口に出ると、事のあらましを告げ、これが最後の電話かもしれないことを告げる。
妻は・・・

「じゃあ、どっかで安いの見つけてきてよ!」

全然心配していない!

(こいつ全然わかってねーよ!)、私が今いかに危険な状況にあるのかを・・・こんなことなら子供たちともっと遊んでおくんだった・・・妻にももっと優しくすればよかった・・・私の頬にはあついものが流れていた・・・(うそ)

「さよなら・・・」

そういって電話を切ると、一番近くにあるサトー無線に入り、意味も無くフロアを歩きまわる。先ほど入った入り口ではない別の出口から出ると、今度はオノデン、次はラオックス、またまたオノデン(でも2号館・・・)てな具合に電気屋を渡り歩き、でもしっかりホットカーペット売り場をチェックしながら見えない追っ手からオロオロ逃げ惑う哀れなコンサル探偵。
もうまけただろうか?かなり足が疲れてきた。でも、この石丸電気の最後にもう一店・・・私は少しみすぼらしげなその店に入った。どうやら平場の店だったらしく、出入口も一箇所しかない。こんな店に入ったのは失敗だった。敵の思うつぼだ。。。私は自分の愚かさを呪い、振り返って店を出ようとしたとの時、
「!!!」
な、なんと!そこには今までの店で売っていたどのホットカーペット売り場よりも豊富な品揃えが!!!
もちろん私の目指していたものも、存在している!
しかも魔よけの「フローリング調」だ!

追われていることも忘れ、値段をチェックするコンサル探偵。よし、値段もOK!目標値よりも500円ほど高いだけだ!!!
これでいいのではないか!?命を危険にさらしてまで探し出したホットカーペット!500円ぐらいの予算オーバーは大目に見てもらおう!!!
が、小心なコンサル探偵は先ほどの電話ボックスに戻り、カミさんに値段を告げ、購入の是非を問うのであった。

こ、こんな姿は是非とも敵に見られたくない・・・


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