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コンサル探偵番外編 ~コンサル探偵大いに食らうの巻~

優秀な探偵になるための資格試験を翌日に控えたコンサル探偵、試験のことが気にかかり、この数日落ち着きがない。そんなコンサル探偵だが、今日は中国地方の要人に面会するため、朝から新幹線のぞみ号に乗っている。目的地までは現地時間で4時間程かかる・・・この間を利用して明日の口頭試験の訓練をしない手はない。コンサル探偵はカバンに忍ばせた資料一式を取り出し、早速それに目を通す。しかし、気が付くとページは1ページも進んでいないのに、時間は妙に進んでいる。1時間も何をしていたのか?アナウンスは熱海だとか言っている・・・何か腹黒い第三者の謀略を感じながらも、再度資料に目を通す。。。ハッ、ま、またしても、、、いつのまにか我が故郷、名古屋まであと5分程度だとアナウンスが告げている・・・、一体何がどうしたというのか?しかし冷静なコンサル探偵、即座に自分の置かれた状況を判断し、無駄な抵抗はやめにしてリクライニングを倒し、本格的に睡眠をとることにする。

少し寝違えたような心地の悪さを感じながら、窓の外は岡山。日本地図を理解していないコンサル探偵は、一瞬行きすぎてしまったのではと思い、一人オロオロする。が、時計と切符の到着時間を確認し、目的地広島は岡山よりも西にあることを理解し、またしてもまどろみ始める。まわりの騒がしさに体が反応する訓練され尽くしたコンサル探偵。コートを忘れそうになりながら慌てて無事広島の地に降り立つ。

駅の改札口ではエージェントが私を待っていた。彼らを遠くから確認すると、足早に彼らに近づくコンサル探偵、張り詰めた空気が私を包む。そして息を軽く吸うと・・・

「どうもぉ~、お疲れさまです、今日は寒いですねぇ、いや~琴電つぶれちゃいましたねぇ~」

とご挨拶を申し上げる。

「いやー、ホント、四国は明るいニュース無いですわー」

「ところで、資料、今朝読ませてもらいました、いや、だいぶ固まってきましたねぇ。。。」

自分の資料の受けが悪くは無く、瞬間ホットするコンサル探偵。

その後タクシーにて移動し、中国地方の要人に面談、終了後、同じ組織のメンバー(コードナンバー:545)に依頼されていた重要書類を受け取りに、川を超える。途中被爆地であるこの地にいくつも存在するモニュメントに添えられた真新しい千羽鶴を目にし、少し目頭が熱くなる最近もっぱら涙もろいコンサル探偵。目的地では優秀なメンバーの段取りにより、この川越の任務も無事終了。タクシーに乗り駅まで向かう。ハードボイルドなコンサル探偵はタクシー乗車中も無言だが、ふと以前別のメンバー(コードナンバー:571)が行っていたのを真似て、ドライバー(通称:タクシーの運ちゃん)にある質問を問うた・・・

「よくありませんなぁ、忘年会シーズンですけども今なんか、よく行って2次会でっしゃろぉ、それも終電やバスのある時間には帰っちゃうでしょ~、私らもママさんとかに言うとんですわ、ちゃんと引止めといてんか、って」

とのこと。何処も景気は悪いようだ。

だがこの街はやけに混んでいる。こんなに混んでるんなら路面電車に乗るんだったと反省するコンサル探偵の横を、広島名物グリーンライナーが軽快に通りすぎる。さすがLRT(ライトレールトランジット:軽快鉄道)とはよく言ったものだと、改めて公共交通を主体とした街づくり(TOD)の必要性を痛感する。

さて、帰路東京へ向かうコンサル探偵だが、まだ昼食をしていないのに気が付く。そこで発見したのは切符売場の横のみやげ物売場。さすが中国地方の中心都市だけあり実に充実している。その一角に目ざとくある店舗を発見する。学生時代アメリカ旅行をして知合いになった広島の女の子を訪ねた際、教えてもらった思いでの店の姉妹店だ。少々ハードボイルドには反するが、今まで自分のやって来たことが全然ハードボイルドしていないことを知っているコンサル探偵はためらわずその店に入る。客の入りは少ないが、鉄板からは食欲をそそるジュージュー言う音が聞こえて来る。メニューを見渡し、目的の物を発見すると、コンサル探偵の口はこう動いた。

「スペシャルのそば入り下さい」

広島に来たならやはり食べておかなくてはなるまい、広島風お好み焼き。店の名前はミッチャンだ。

アツアツのお好み焼きを食べ終え、口の中を少々火傷したコンサル探偵は、もう1つの名物、もみじ饅頭を買い求める。店の名前はニシキ堂。これらの店はコンサルの常識であろう。

ふと、「出張ばかりしていないで、そろそろプロジェクト・フォー・インポシブル(通称:PFI)を手掛けないとまずいのでは?」という同僚の声が耳に蘇ってくるが、ご都合主義のコンサル探偵は聞こえなかったことにする。

目的の物を買い求め、無事東京へのチケットも手にしたコンサル探偵は、ふと切符売場の先にあるものを発見する。頭より体が先に反応するコンサル探偵。気が付くと店のお姉さん(広島はおたふく顔の女性多し)からおつりと品物を受け取っている。ハッと我に返るコンサル探偵の手には、広島名物の駅弁、しゃもじ牡蠣飯が入った袋が握られている。一体これをどうするつもりなのかコンサル探偵!!!しかし、これだけでは済まなかった。新幹線の乗り口に向かう途中、先ほどの店で気になっていたことが1つあった。そう、もう1つの名物駅弁、アナゴ寿司だ!電車発車まであと数分、時間との闘いを強いられるコンサル探偵は、1つの賭けにでる。行列の出来た駅ホーム下の駅弁売り場で、アナゴ寿司を持ち、行列へと参加する。するとその行列の一団が、飲み物を買いにその列から外れ、パァっとコンサル探偵の目の前にはレジが現れる。さながらモーゼの十戒といったところだろうか、アナゴ寿司を求めたのは駅の2階にあたる部分ではあったが・・・

あっという間に広島名物を数点買い求めてしまったコンサル探偵。新幹線に乗りこむと3人掛けの席には九州方面からの乗客であろう、既に2席が埋まっていた。恐らく夫婦者と思われる。先ほどのお好み焼きでおなかがいっぱいのコンサル探偵は、苦しそうに席に座ると、おもむろにしゃもじ牡蠣飯を開き始めた。もう食べられないでしょうとの思いとは裏腹に体が勝手に反応する。牡蠣では辛い思いをしているコンサル探偵、ふと明日の試験のことが頭をよぎる。が、経験豊富なコンサル探偵は、牡蠣を食べてもあたるのは明後日だと知っている。口元に不敵な笑みを浮かべながらしゃもじ型の蓋を空ける。おお!なんという牡蠣づくし!!!しかも季節柄、プリプリした見事な牡蠣がご飯の上に、おかずにとその存在感たるや筆舌に尽くし難い!!!

振るえる手でまずはご飯を頬張るコンサル探偵。う、美味い!、さて、次は牡蠣だ、これはご飯とともに炊きこんであるようだ。丸ごと口に放りこむ。おお、口中に広がる牡蠣独特の香と味わい。なんと、これほどまでとは、さすがのコンサル探偵も脱帽。さて、お次はおかずの牡蠣フライ・・・と思ったが、なんだこれは?このお約束のような真赤なサクランボウは許すとして、そんなに薄く切るなよとその技術力を他のところに向けたらもっと世の中はよくなるはずと思えるレモンスライスも許容範囲だとして、この、不気味な物体はなんだ?グロテスクだ。しかも汁を携えている・・・

「お、おのれぇぇぇ、このコンサル探偵を試そうと言うのか!!!」

と少し、美味しんぼの海原雄山を気取っていみるものの、その物体は全く動じていない。恐る恐る箸で突ついてみる。隣では、真中の席に座ったご婦人が私の行為を怪訝に見守り、見てみぬ振りをしているのが伝わってくる。この広島に来て(いや既に東広島あたりだが・・・)最大のピンチ到来!箸で突ついたぐらいでは謎の物体の正体は依然として分からない。常日頃「考えるより食う」をモットウとしているコンサル探偵は、箸で物体を摘み、一かじりしてみる。 ・・・うっ、

美味い!!!

これも牡蠣?。なんともまったりとして、奥深い味わい。チーズのようなコクのある食感。粕漬けでしょうか?沖縄の豆腐ようにも似ている。なんだ、これが一番美味いじゃん。どおりでちょっとしか入って無い訳だ。その後の牡蠣フライはたいしたことは無かったものの、牡蠣飯は最後まで大変美味しく頂いたコンサル探偵。少々トンネル通過が多く、駅弁を食べる環境には適していなかったものの、あっという間にしゃもじ型の容器を空にしてしまい、ふとそのプラスチックだと思っていた容器を見ると、なんと、紙と同じように燃やせると書いてあるではないか。環境にまで配慮したしゃもじ牡蠣飯、侮り難し!

そんなこんなでお腹がいっぱいになったコンサル探偵は帰りの電車でも試験勉強はできず、苦しそうに座席に座っているのがやっとの状態。東京に降りたっても消化は完全ではなく、組織の近くの通り道では同僚がウジャウジャ歩いているのにもあまり反応できず、夜のオフィスへと姿を消したのであった。ちなみに、賞味期限が8時までのアナゴ寿司は、帰宅後10時頃、妻と半分こするコンサル探偵であった。

さて、翌日、今年度最大のプロジェクトへ向け新宿へと向かうコンサル探偵の活躍は。。。

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