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Tarkovsky “ Nostalghia” 1983

 本作を思い出し、再見。ロシアからイタリアに研究に来たインテリ男と彼に同伴する女。温泉地であばら家で犬と住みながら、現代社会の偽善を見破る見神者に会う。彼に導かれるように、失われた何か(幼い日の故郷の思い出?)を回復しようと清らかな泉が流れる洞窟に入り、再生の儀式?をおこなう。一方、同伴した女は男が一向に自分に関心がないのをみてとり、「奇妙なインテリ男」と吐き捨てローマに戻ってしまう。ラストでは、見神者はローマに出て終末を説き焼身し、男は、温泉をろうそくを消さずにわたり終える儀式をおこなって息絶え、「ふるさと」が回想される。

 本作はキリスト教的な宗教ビジョンがストーリーの骨格をなす。しかし映画全編に通奏される水の雫の滴りや泉の流れの反響サウンド、鐘のチリンチリンという音、インダストリアルなノイズ音が差し挟まれ、とても東洋的かつSF的な雰囲気を醸し出している。サウンド・インスタレーション作品といってもいい音だ。日本の水琴窟にヒントを得ているのかもしれない。誰がサウンド・エフェクトを担当したか気になった。これはブライアン・イーノに匹敵する。

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