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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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ATRIの幻影追ってる人のGINKAのレビュー&感想


皆様はタイトルに書かれた2023年10月26日発売のFrontWingの新作ADVゲーム「GINKA」をもうプレイされただろうか?
2020年発売のATRI-My Dear Moments-のスタッフが手掛けており、ATRIのファンである私も期待していた作品だ。

私も発売日当日にプレイしてその日のうちにクリアする気マンマン(あまりに無謀)だったのだが諸事情あり当日はプレイできず、後に4日に分けてプレイしてつい昨日ようやくクリアした。

本記事はATRIに脳を焼かれた私がプレイ時に考えていたことをまとめるついでにレビューと感想を垂れ流す記事である。ATRIが好きすぎて比較が多くなっちゃうからGINKA単品で好きな人、ATRI知らんけどって人からするとちょっと鬱陶しいかもしれない。前作で同じスタッフが作ってるから多少はね?
そういうの許容できる方だけお読みいただければ。

一応まだ発売から2週間経ってないので、プレイしてないけど買おうか迷っている人向けのネタバレなしレビュー、その後ネタバレ全開の感想の順で書いていこうと思う。
ちなみにネタバレなしレビューは公式ページの情報まではネタバレじゃないという前提で書くのでヨロシク。

GINKAってどんなゲーム?

幼なじみの少女・銀花は、夏祭りの夜、
“神隠し”にあって消えてしまった。

あれから5年。
高校生になった青羽流星は、フェリーに揺られ、ふらりとひめ島へ帰ってきた。
確かめたかった。銀花はあれから、どうなってしまったのか?
もしかしたら、何事もなかったように家へ帰っていて、島の高校に通いながら普通に暮らしているんじゃないか……。

そんな淡い期待は裏切られる。
あの夜からずっと、銀花は行方知れずのまま。

失意に沈み、再び島を離れようとする流星だったが、そこで不思議な再会をする。
目の前に現れたのは、あの頃の姿のままの少女――ギンカ。

「おかえりなさい」

自分の名前さえ忘れてしまったギンカ。
覚えているのは“リュウセイ”の名前と、彼を好きだという恋心だけ。

今までどこにいたのか?
なぜ、幼い姿のままなのか?

おだやかに時間の流れる小さな島で、
“神隠し”から帰ってきた幼なじみの少女と過ごす、
おとぎ話のような夏休み。

GINKA公式HP・STORYより引用

ATRI既プレイ勢から「また夏の離島が舞台じゃん」「今度は鳥居を沈めるのか」と声が上がった
前作ATRIと季節や舞台、キャラ、雰囲気を似せている一方で内容はSFから一転伝奇モノとなっている。神隠しとその島の神を中心として主人公とヒロインの恋愛模様を描いた作品だ。
プレイ時間はフルオートで約19時間程度、分岐は選択肢はあるけどほぼ一本道。選択肢の難易度はちゃんと読んでれば何となくどっちが正解か察せる程度。選択肢ミスるとすぐ終了するので全分岐網羅しても20時間かからないハズ。

ネタバレ無しレビュー

良いところその1 ヒロインたちがかわいい

ギンカ、謎の少女の愛くるしい表現は流石の一言。ゆさの先生のデザインも非常にGoodだしコミカルなシーン、切ないシーンどちらもよく描けている。SDキャラも可愛い。ヤー!

ヤー!

良いところその2 CG、背景が非常に美麗

ATRIでも非常に美しかったことからこの手の表現はもうお手の物といったところだろうか。海、夕焼け、月明かりに照らされるヒロイン(ATRIでめっちゃ見た。この表現好き)の美しさは相変わらず。

光の反射の表現が好きなんですよね

良いところその3 OP曲「StarTrail」が良い

最初聴いたときはATRIの光放て!ほどじゃないなぁ……って思ってたんですけど何回か聞いてるうちになんかめちゃくちゃハマりました。松本文紀先生はこういう透明感ある曲作るの上手いよね。
この記事を書いている今この瞬間も聴いてます。ゲームクリアするとFullバージョンも聴けるので是非。


さて、ここまで読まれた皆様はこの辺で察するのではないだろうか。
コイツ、ガワばっか褒めてて中身の話全然してないな……と。

つまりどういうことか? そういうことです


ダメなところその1 伝奇モノの異物感

伝奇モノ、というと超常的な存在や伝説などにまつわる文化とそれに振り回された人々、人間関係などが描かれるジャンル。恋愛モノとの相性はと言えば結構いい方。言い伝えや伝承を主人公とヒロインの関係とリンクさせることでのちの展開の暗示や悲劇の演出などがしやすいから。
ただ、GINKAという作品においては今一つ扱いきれていなかったように感じる。ネタバレになるので詳しくは書けないがなんか伝奇周りの話になると目が滑るのだ。伝奇要素は恋愛要素の邪魔してるし恋愛要素は伝奇要素のせいで描写が減っちゃってるし……。
おそらく伝奇要素と主人公、ヒロインの関係性があまりリンクしておらず、単なる障害として扱われているからだろう。プレイヤーからするとただの一障害なのに設定だけは伝奇モノらしく大量にあるので興味のないものの話を延々とされてしまう形になっている。ネット小説で第1話を占拠してる設定ページ読まされてる感じに近い(先生の名誉のために書くがクオリティは全然違うぞ!)
こんな足引っ張り合わせるくらいなら伝奇要素をもっと薄めて流星くんとギンカを素直に恋愛させればよかったのでは。

ダメなところその2 サブキャラクターの魅力が薄い

メインヒロインに全振りしちゃったのか?ってくらいあんまりサブキャラクターがあまり動いていないように感じた。このキャラどういう役割があるんだろう? と考えたときそんなに出てこないからかもしれない。
主人公以外の唯一の男キャラである草二くんに至ってはなんでお前いるの? とプレイ中に思わず何度かつぶやいてしまった。後半魅せ場あるにはあるけど別にこれ言うの草二くんじゃなくていいし。ATRIの竜司は魅力的だったんだけどなぁ……。
サブキャラクターは物語を盛り上げメインを引き立てる大事な脇役。
良い作品には必ずプレイヤー達が熱心に語り合うような強い魅力を持ったサブキャラクターがいるものだけど本作はプレイ後、そのようなキャラが見当たらなかった。残念。

ダメなところその3 戦闘描写、いる?

いらんでしょう、あれは
戦うことそのものは特に物語に関連していないため、極論戦闘シーン全スキップしても物語を理解するうえではなんら問題ない
結構力を入れて書いてるっぽいので申し訳ないのだが、とはいえGINKAやる人ってターゲット層的にはATRIのプレイヤー層を想定していると思われるが、多分その層は戦闘描写求めてない。

いったい誰のためにこの戦闘は……まさか謎の少女にポン刀持たせるためとかじゃないよね? 確かにセーラー服に日本刀は映える組み合わせだけど流石にそんなわけないよね?

ダメなところその4 主人公が行き当たりばったり

流星くん、君は何がしたいんだ~~~!
個人的に主人公の迷いや葛藤はあればあるほどいいと思っているけどそれはそれとして着地点はちゃんと示してくれ!
読者としては着地先が分からない話を読まされるとどんなに印象的なシーンを描かれてもこの出来事がどのような意味を持っているのかわからず、意味が分からないということはどういう感情を抱けばいいのかわからない。この衝撃受けるシーンかもしれんけどこの話どこ向かってんの?と気になってしまうのもよくない。
着地点が決まってない物語って結論を最初に言わない長話みたいなもんなので……私もよくやっちゃうけどね! でもアスタ先生はプロだしそもそもATRIではちゃんとできてたじゃないですか! どうして!

Q.GINKAは買いですか?

A. 銀髪美少女愛でたいなら買え
  ATRIを期待してるなら買うな

ATRI期待して買うとダメージでかい。めちゃくちゃ期待してただけに私はかなり落ち込んでるよ……
あ、ATRI -My Dear Moments- 2024年アニメ化決定してますんで皆さん見ましょう。

ゲーム未プレイの方はこれを機に是非プレイを。

ただ散々に書きはしたけど物語として破綻してるとかそういうレベルではないのでギンカのキャラやビジュアルに惹かれた方は買ってもよいのでは。
ギンカがかわいいのは間違いないので。

お値段も3000円ちょいだし。今でいえばソシャゲのガチャ10連分と大差ないぞ! プレイ時間? 知らんな!




ここからはネタバレ全開
既プレイかネタバレ許容できる人だけスクロールしてね














ネタバレ感想地帯

ラストの展開はよかった

いらない欠陥品として生まれたひるこ様を殺さず真の願いを叶えてやることで自己をも肯定するという展開はよくできてた。ひるこ様の回想からハナが来るまでの流れは綺麗でよかった。

テーマは迷子だった

でもじゃあそのラストの展開やるなら最初からその軸で話を進めてほしかった。
そのつもりで書かれていたのかもしれないが正直ノイズとなる展開が多すぎて最後の選択肢が出てようやくあ、その話の理解でよかったのかってなったもん。

主人公誰が好きなの問題

一回目のエンディング後、流星くんが「銀花は俺への想いを代償に俺を復活させてくれたけどその手放した思いが俺の好きなギンカだったんだ」とか言い出した時は椅子から転げ落ちそうになりましたよ。好きな人のために自分の思いをあきらめた、かつてお前が好きになった少女に対してその言い草あんまりじゃない!? 恩義があるから好きになれとは言わないけどせめて顔あわせてなんか一言いうくらいしなさいよ!

気持ちは分かるけどね

かと思えばちょっと優しくしてくれた銀花にコロっとやられて告白して即フラれてるし、そのすぐ後にまたギンカのほうにこだわりだすし。
そして終盤ギンカがぶった切られて以降はギンカのこと完全に忘れて銀花銀花銀花銀花……
ラストも特にギンカのことは思い出さず。そんでエンディング見終わったらタイトルで笑ってるのはギンカ。
いや確かにさ、ギンカは銀花の流星くんを好きって感情そのものだからその感情を取り戻した銀花の中にギンカはいるって言われたらその通りだけどさ。あれだけギンカと銀花を別人として扱っておいて特に言及せずそれはちょっと薄情では?
まぁ流星くん小5で死んで5年間ワープしてきたから精神年齢小6相当ってこと考えれば仕方ないところはあるかもしれん。いやでもそれにしたって好意がフラフラしすぎじゃない?

設定回りも問題多し

彼岸の境界ってなんだよ!使えたり使えなくなったりするけど別にそれなくてもどうとでもなるし。しかも終盤は上位版の彼岸の境界の向こう側とか出てくるし。というか彼岸の境界の向こう側ってそれただの彼岸じゃん。

実質こいつ?

あと呪いや神様関係の設定の後だしが多すぎる。
前振りもなく地の文で設定が追加されるのは日常茶飯事。追加された設定も特に納得感を増やしてくれるわけではなく、「なんか急に生えてきたな……まぁそういってるしそういうことなんだな」と捉えるしかないケースが多い。
私何回「そういう設定だったんだ…」って言ったか覚えてないよ!

そういう設定だったんだ…

こういうのってそれまでの描写で何となく察させたり法則性を見出させてから明言するもんじゃないの!?
というか急に神になった挙句「神の力について言語化するのは難しい」ってそれはズルだろ!

ぶっちゃけ話

というかですね、いろいろごちゃごちゃ書きましたけどもう白状します。
私はね、これが読みたかったんですよ。

ATRI既プレイ勢なら分かるハズ

ただ恋愛する話ではなく弱い主人公が挫折したり立ち上がったり迷ったり逃げたり立ち向かったりする物語が読みたかった……

いや分かってる。いくらスタッフが同じだからって同じような話を勝手に期待する私が悪いって。でもさ……

GINKAスタッフってさぁ!
この作品、絶対ATRI意識してるじゃん、って空気出してるくせにさぁ!
なんで……………なんでッ!!!
銀髪の女の子出して舞台も雰囲気も似せたり!
ATRIと同系統ですって感じで!
はいすぺTシャツとかだしたりさぁ!
勘違いしちゃうじゃんか!
くそう!! くそっ! くそっ!!!

総評

ATRIの出来が良くめちゃめちゃ面白かっただけにハードルが上がりまくっていたところもあるけれど、それを抜きにしてもちょっと物足りない出来だったという感じ。言葉を選ばないなら凡作かな……。
ギンカ、銀花のキャラクター、好きという感情を切り離されたヒロイン、ひるこ様の過去周りの設定等、光るところは要所要所にあったんだけどそれらを生かしきれてないという印象。
特に現世パートになってからのギンカ、というか流星くんのギンカへの想いは正直先生も扱い困ってたんじゃないかな。

紺野アスタ先生の作品についてはゲームのほうはATRI以前のシナリオを担当されたゲームはプレイしていないが、ライトノベルの尾木花詩希は褪せたセカイで心霊を視るは読ませてもらって、そちらも面白かっただけにATRIで奇跡起こしただけとかではないはず……!(だいぶ昔の作品だけど)

次の作品では手のひらクルクルさせてくれるの待ってますよ先生!


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