奇妙な丼
仕事で車を走らせているとカーラジオから古いジャズ・ボーカルが流れてきた。声の主はビリー・ホリディ。とても哀しい歌「奇妙な果実」。
これでもかというほど深く哀しく歌い上げている。
この歌をきくと思い出す「丼」がある。
それが、ブラックバス丼。
琵琶湖博物館のなかにあるレストランで食いました。
見た目はブラックバス丼とかいてなければ、何の天丼なのか分かりません。
味?……ですか?
まずくないです。でも、特に美味くもありません。
白身で淡白です。歯ごたえがありません。
でも、ブラックバスのせいじゃありません。
もう一度食べたいとは思いません。
お勧めはしませんが、バサー(バスフィッシャー)の人は一度は食べるべきです。
なぜ食べるべきと思うのかが、定かではないのですが……でもやはり食べるべきです。
食った後、非常に胸焼けをしました。
でも、ブラックバスのせいかどうかは分かりません。
食い終わると、裡なる器官からブラックバスの哀歌が聞こえてきた気がします。
ある日とつぜん、異国に地に連れて来られて、しかたなくこの国で繁栄をした。
ところが、自分たちはこの国の一部の娯楽者にしか受け入れられない、招かざる異邦魚だった。
生きるためそこにいた魚を食った。食うしかなかった。
地のものを食う図々しい邪魔な者といわれた。
自分たちの意志でなく強制連行で見も知らない異国にいる。
好きでいるわけじゃない。でも、殺され、排除される。
排除する奴らもさすがに悪いと思ったのかもしれない。殺す理由を考えた。
それが、「丼」。……ブラック
しかも美味くない、もう要らない、と言われた。
ブラックを消化する胃の中で「奇妙な果実」が響いてた。
ビリー・ホリディの深く哀しい声で・・
「奇妙な丼」sigh。
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