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【想い出の納豆巻き】

私が小学校の時、家の事業経営が難しくなり、
父の出勤時間を短縮するために
東京浅草へ家族そろって
出てきました。

まだ作業服の事業を始めていなかったので
父は「ぬき」の仕事をして日銭を稼ぎ、
母は余った皮革をもらってきてバックを作りました。

素人の作ったバックなんて、
売れるはずもないのですが、
四つ木の秋田さんの奥さんが
いつもできた分だけ
全部買い取ってくださったので
私や弟はご飯を食べたり
習い事に行ったりすることが
できました。

一生懸命父と母は働いていましたが
事業は自転車操業なので
夏休みに旅行一つにも
なかなかいけませんでした。

数少ない家族の楽しみは買い物です。
私の家族は週末、
東京の三ノ輪にあるイトーヨーカドーに
買い出しに行くのです。

生活必需品をバーゲンで買いに行くので
無駄なものは買えません。

そそくさと入っていく両親と
一緒にヨーカドーの入り口に入ると

ショーウインドに並んでいるのは
色とりどりのお寿司。

いつもおいしそうに並んでいますが、
値段が高いので買えません。
「おいしそうだねお兄ちゃん」
と進がいつも言うんですよね。
私も鉄火巻きが食べたいなあと
思っているのですが。
毎日夜遅くまで働いている
両親のことを考えると
マグロを食べたいとは
ちょっと言えません。
「ねえねえ。納豆巻き食べたいんだけど」
というと、母はかってくれないのですが
父は必ず弟と私に一本ずつ
納豆巻きを買ってくれました。

納豆巻きが買ってもらえると
父と母が買い物が終わるまで
入り口のベンチで
ちびちび食べながら待つのが
とても楽しかったんですよね。
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今ならなんだって注文できます。
「大トロは脂っこいから中トロにしよう。」
「最高級のお寿司?食べろ食べろ」
「イクラもってこい!」
「好きなもの食べな!」
と子供たちに言うこともできます。
お寿司屋さんは何でも美味しいです。

でも、今でも
昔を思い出して
つい納豆巻きを
私は買ってしまいます。

全然お金なかったけど、
家族で一生懸命生きてたなって。

父と母が懸命に働いてくれたから
私も進も大きくなれて
今も元気に働き続けることが
できるのです。

満州から帰ってきた
キクばあちゃんのことばかり
いつも
ありがたいありがたいと
書いていますが、
「教育は誰にも盗まれない」
という信念のもと
学校に行かせてくれた
両親の想いを
ヤオコーで納豆巻きを買うと
ちょっと想像してしまうんですよね~。
美味しいな納豆巻き。

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