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5限目:ODAとJICAとJBIC(国際協力編)

お疲れ様です、桐島です。

前回の4限目で最後に残した問いを再掲します。
国際協力機構(JICA)のODAの③有償資金協力と、国際協力銀行(JBIC)の資金協力って、何が違うのでしょうか?

これは非常に悩ましい問いです。正解は「ほとんど同じ」です。

まずは、そもそも、JICAとJBICって何?という点から解説します。
2つとも、独立行政法人です。よく独法(ドッポー)と呼ばれます。

中央省庁から独立した法人組織であって、かつ行政の事務・実務をこなすのが独法です。中央官庁は政策を作って、予算を財務省に要求して付けてもらって、実際に実務をするのは、独法や民間企業になります。

JICAは外務省が作った独法、JBICは財務省が作った独法です。
独法と特徴を理解する一番手っ取り早い方法は、設置法を見ることです。
外務省はJICA法を所管していて、財務省がJBIC法を所管しています。

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JICA法、JBIC法を見てみると(目的)という記載があり、ここに記載ある内容を実施するための機関であることが分かります。
重要な違いを赤字にしていますが、
JICAのODA=①技術協力(技術あげる)+②無償資金協力(お金あげる)+③有償資金協力(お金貸す)、の3本柱の実施という記載がありますね。
これらは「国際協力の特進、我が国・国際経済社会の健全な発展に資する」という目的のために実施されます。

JBICは、民業補完をベースに、海外資源の確保、産業競争力強化、地球環境保全、国際金融安定のために必要な金融を行う、という記載があります。
これらは、「我が国・国際経済社会の健全な発展に寄与する」という目的のために実施されます。

分かったような分からないような印象を受けると思いますが、独法は組織法に業務内容が記載されているため、独法を簡潔に理解するには、法律に当たるのが一番早いです。

今回これだけではイマイチ分からないので、以下図で全体像を解説します。

スライド1

まずは、経済協力のパッケージの下に、
政府開発援助=ODA(Official Development Assistance)があります。
その他政府資金による協力という項目にJBICが該当することが分かります。

ODAには、二国間援助と多国間援助があり、二国間援助の下に3本柱がありますね。

最大のポイントは、ODAの定義と書かれたボックスの中です。
以下の3つの要件が成立するものを、世界的にODAと定義しています。

①政府ないし政府の実施機関によって供与
②開発途上国の経済開発や福祉の向上に寄与することが主たる目的
③供与条件が開発途上国にとって重い負担にならないようになっている
(=グラント・エレメント(GE)が25%以上である)

①は、JICAもJBICも政府の実施機関(独法)、②は、JBICもJBIC法の記載の通り「国際経済社会の健全な発展に寄与する」とあるため、開発途上国の経済開発も扱える。
ということで、JICAとJBICの違いは、③から生じることになります。

供与条件=グラント・エレメント(GE)の設定がODAとそれ以外を分けているのです。つまり、GE25%~100%のものはJICAが担うODA有償資金協力GE0%~25%のものはJBICが担うその他政府資金による協力に当たります。

それでは、JICAとJBICを分けるGEとは何でしょうか?
以下が正確なGEの計算式になりますが、難しすぎます( ゚Д゚)

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簡単に言えば、GEは援助条件の緩やかさを表わす指標です。
商業条件の借款をGE=0%とし、贈与はGE=100%条件が緩和されるに従ってGEの割合(%)が高くなり贈与=無償資金協力(お金あげる)に近づきます

金利10%で返済期間が数年ならGE=0%。金利2%で返済期間25年、据置期間10年ならGE=56%になります(金利1%ならGE=63%)
金利2%で返済期間9年(据置期間無し)ならGE=23.4%になります。

このGEの算出には、世界銀行に算出ツールがあるので、お試し下さい。

このGE次第で、JICAのODAか、JBICの資金協力か分かれるわけです。

それでは、4限目ではJBICから見た図を紹介しましたが、今回はJICAから見た新しい図を紹介します。

【JBICから見た組織改編(4限目の再掲)】

スライド9

【JICAから見た組織改編】

JICA勉強会

これを見ると、GE25%~100%のものはJICAが担うODA有償資金協力と、GE0%~25%のものはJBICが担う国際金融業務は、過去には海外経済協力基金と日本輸出入銀行という別々の機関が担っていましたが、一時期、JBICが両方担っていたことに気づきます。

GEの違いで分けるのも面倒なので、JBICという1つの組織が有償資金協力も、国際金融業務も両方担当すれば、効率が良い気がしないでしょうか?

それでは、そういった状態は長く続かなかった理由は、次回6限で見ていきたいと思います。

See you soon.




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