大阪編 ①


古くからヤマトの言い伝えで
雨男・雨女には龍神様が宿ると
まことしやかに囁かれている

サポートでドラムを叩いている
田中圭さん(以下たなけさんと呼ばしてもらう)

彼にも龍は巻き付いている

はっきりと 鮮明に
長くまっしろな龍が

マラボー(ジュリアナ東京で踊る女性方が巻き付けるアレ)のように巻き付いている

龍は彼の巨躯を住処にしていた

その日もつんざくような雨が
朝から降り続いていた

10月 某日

15時に新宿 西口ロータリーにて!

運転手を頼んだ大学の先輩を
含めて集まったヒトリヨブランコチーム
精鋭7名は
この激しい雷雨の中
関西No. 1の呼び声高い
有名サーキットイベント
『MINAMI WHEEL』へと向かおうと
していた

なのに このザマだ
雨々しい 忌々しい

朝起きてすぐに
ネイビー色のカーテンを開けると
予想通りの曇天と土砂降りが
窓の外でてんやわんやと広がっていた

むしろ清々しいくらいだった

たなけさんは歩く天気予報

彼がライブを行う日は
必ず傘は必須
密かに僕はそう思い行動している

そらじろー と裏で呼ぶのも捨てがたい

木原さんでも良い

ここまで百発百中だと見事だ

なので清々しい気持ちが複雑であるが
僕の中に存在している

15時に新宿駅 小田急改札近くの
西口ロータリーに到着すると

メンバーのムラカミカエデ

サポートメンバーの
たなけさん あんじー ハラコちゃん
が既に待機していた

Keyせっちゃんのキーボードが
どっしり掲示板の映る柱に寄りかかっていた
姿は見えないが彼女も着いているのだろう

数分後
運転手のHさんが到着
安価で借りた
レンタカーは既に横殴りの雨にやられて
疲れ切った顔をしていた

せっちゃんが姿を見せると
すぐに出発の準備を開始

機材をテトリスのように器用に詰め込み
最初の任務は完了

全員がわらわらと車に乗り込む、
絵面はサザエさんのEDのようだった

安い金額で拝借した車は
お世辞にも住みやすいとは言えず、
このご時世に肩と肩 肘と肘が触れ合う
絶妙な距離感

小池百合子都知事がこの環境を
ご覧になったら
「ソーシャル!!」と注意されてしまうであろう

それほどゼロ距離のワンルームである

ちなみに僕は三半規管が幼少時代から
死んでいるため
車に乗ると十中八九ゲロゲロに酔う
メンバーの気遣いもあり
車移動は必ず助手席を頂戴する

役得だ

しかし
そうも言ってはいられない

自分の大切なギターを
後ろに乗せようとしたが
まさかの定員オーバー

泣く泣く助手席で相席する羽目に

車が走り出してすぐに
僕は自分のギターを足で挟む形のスタイルを
確立した

意外と座りやすいぞ
コレは楽しくなりそうだ

ランランと降り注ぐ 
雨の非日常感と相まって生まれた
それなりの高揚を保ち
僕らは関西へと向かった

この時僕らは知るはずもなかった

事故渋滞

工事渋滞

と言う双璧が僕らを邪魔することにより

15時出発の我々が
深夜2時に大阪に着くなんて

相席のギターを
コアラのように抱きしめて

約11時間が経つとは

到底知るはずもなかった

つづく


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