睨む月


『けえくんは陽キャだ!』

指を刺されて飛び出た発言に対して
妙な違和感を抱いたまま御開きになった
飲み会の帰り

なぜ、こんなにも心に残るのだ

それは嬉しさ反面
悲しみも滲むリバーシブルな気持ち

深く考えずとも分かる
僕は明確に明るい

前髪が長かったり、目つきが鋭い等
歪な容姿がたたり
冷たい人だとか物静かな人だと
直感で疑られてしまった事もあるであろう

大学の友人には先日
『けえはサークルの新入生歓迎会で
睨む様に人を物色しており、仲良くは
なれないと思っていた』と笑われた

とほほ と項垂れる
この事象も目つきの悪さが一因だと思う

単純に沖縄から意気揚々と生きようと
お上りした田舎者が
都会の子達と仲良くなりたいけど
一歩踏み出せずビクビクしていた
のがアンサーなのだから、
可愛げすら感じる 

僕は明るい人になりたかった

クラスに1人いたら物語が進む
夜中に小説を読むためにそばにいる
間接照明のような
そんな頼られる人間としての地位を確立したかった

運動ができない

勉強ができない 

数字が覚えられない

表情が読めない

人には向き不向きがあり
地位の確立の為に踏む土台として
こんな僕はうってつけだったらしい。
望ましい集団生活を送ることはできず
理想の人物像は埃を被る

思えば
その時代のコンプレックスが
きっといまだに痣のように
身体、もしくは精神に残っているのだろう

『人と話すの苦手なんだよね』

『社会不適合だから働けないんだ』

いいじゃあないか

気持ちは痛いくらい分かる

人混みに立ち入ると瞬間的な吐き気が催されるし、電車に乗ると確実に腹痛に襲われる。
4人以上の飲み会は苦手
できれば都会に集まりたく無い。
けれども中心地はだいたいが都心部なので
仕方がなくまたお腹を痛めて電車に乗る。

そんな自分が嫌いだ
なぜ普通のことができないのだろうか

僕とは仲良くなれないと
笑ってくれたサークルの友人は
いつもスマートでバイト先も一緒だったが
卒なく難なく仕事をこなしていた

対してサイド傘原
全てが演技くさくなるし、
2桁以上の数字が覚えられない為
計算関係は壊滅的
破滅的なミスは日常茶飯事
コミュニケーション能力は芥

みんなが出来ることができない
ないものねだりがお札のように
貼られている。
普通になりたくて
普通の人ぶっているのだろう

陽人と言われて
嬉しい気持ちがあったのは確かだ

しかしなぜその指摘が
悲しみとして反芻されたのか

きっと
努力を無視した発言だと感じたからだろう

過程の無い答えほど
確かじゃあないものはない

数学でかつて12点を叩き出した僕でも
それくらいは分かる

『人と話すのが苦手』

『社会不適合だから働けない』

いいじゃあないか

痛いくらい気持ちはわかる

でも、それは盾にも矛にもならないよ

僕は思う

いつか子供を育てる立場にもなりたい

音楽も続けたいし、歌詞で嘘はつきたくない

ちゃんと普通になりたいからこそ
胃を痛くしつつも、目を見て会話をして
自分が不良品じゃあないと証明している感覚

褒められたものでは無いが
泣きそうになりながら
社会に迎合しようとしてる
小さい自意識を指でピンっと
弾き飛ばされた

ちょっとだけ許せないと
思ってしまった

ちょっとだけね

集団生活 

三蔵法師御一行が目指す
目的地『天竺』のように
途方も無く幻影みたいな言葉

幾度夕焼けを見送るのか、と嘆くほど

バンドが生まれて
メンバーが集まって
そんなコンプレックスに絆創膏を貼ることができた

目を見て話すことができた

友達ができた

うまく笑えた

泣きそうになるくらい嬉しい

売れる売れまいの生存競争みたいな
世界なのかもしれない
だが、人間生活を唯一感じるのが
音楽活動なのだ
だから、やめる と言う選択肢は
毛頭無い

売れようが

売れまいが

思想を提供して

美味ければ食えばよろし
不味ければ食わねばよろし

そんな状況を楽しく過ごしたい

皆さんが思うような地位には
いけないかもしれないが

見守っていただけると幸い

生きていてよかった

あ、9/28 誕生日を迎えました
齢27 ここまで生き延びるなんて
思いもしなかった

よかった

ちなみに
僕が上京してから基本的に
9/28は満月です

まんまるくりくりぴかぴか
誇らしい満月


けれども
誰かを傷つけしまいそうに
危うく細い三日月も大好きです


目つきの悪い自分と
まるでおそろいのようで

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