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【名言】バルザック 〜 三十女

私たちは偶然にしか真実に出会わない

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どの女も衣装の優雅さや完璧さは
それを身につける着こなしで決まるとは思いたがらず
その衣装を裁つ腕前で決まると信じたがるからである

・・・

社会が存続しうるのは
ひとえに法律が個人の犠牲を要求するからだ

その社会から利益を受け取ることは
社会を存続させる諸条件をなんとか維持しようすることではないだろうか

・・・

邪な考えこそが
我々の運命の栄華と同時に災難を示している

・・・

彼女は社会に対し絶望の叫びを上げながら
彼女の生きる助けとなった愛と引き換えに
彼女が失ってしまったその愛と引き換えに
社会が自分に何を返してくれるのか尋ねていた

あれほど純潔で、あれほど純粋な消え失せた恋において
行為よりも思考の方が、いっそう罪深かったのではないか?

・・・

彼女は役どころに、しくじった女優のように不満だった

・・・

子供とは、神父さま、二人の人間の似姿ではないでしょうか
自由に一体となった二つの感情の賜物ではないでしょうか?

もし、その子が心の一切の愛情にも身体の線維にも関係ないとしたら
もしその子が甘い恋を思い出させないとしたら
二人の人間が幸せだった時や場所を思い出させないとしたら
人間的な音楽でいっぱいの二人の言葉やその心地よい思想を思い出させないとしたら
その創造は出来損ないですわ

そうです、二人にとって、子供は
その密かな二重の生の詩がふたたび見出される素晴らしいミニチュアでなければいけません
豊かな感動の源を二人にもたらさなければなりません

かわいそうに、わたしの娘のエレーヌは、その父親だけの子なのです
偶然と義務の子なのです

・・・

わたしは負けてはいけないと
思いがけない恋とも戦いました

でも、肉体の誠実は保てても
この心を保持していたのでしょうか?

・・・

真心のこもった表情で娘に接吻した
まるで借金を返そうというか
良心の呵責を消そうとするかのようだった

・・・

女から恋をとったら、何ものでもなくなりますわ
美しさから歓びを除いたら、何ものでもなくなります

・・・

娘を手渡した男がその眼鏡にかなった夫であることを
娘に保証してやるどんな方法を母親たちは持っているのでしょうか?

行きずりの男に、いくらかの金で身を売る
あわれな女たちを、あなた方は悪く言いますが
飢えと貧困が、このかりそめの結合を許します

その一方で、純真な若い娘と
その娘がぶっ通して3ヶ月も会えないような
男との、すぐさまの結婚を、それはまさに別の意味で恐ろしいことですが
社会は容認し奨励さえします
娘は一生涯にわたり売られるのです

たしかにその代価は高いのです
その苦痛に対するいかなる埋め合わせも許されないからといって
娘をあなた方は尊敬するとでも?
いいえ、世間はわたしたちのなかでも最も貞節な女を謗るのです

以上が、秘密でない売春と恥辱、秘密の売春と不幸という
二つの局面から見た私たちの運命なのです

・・・

いつでも義務ばかりですわ!
彼女は一種の苛立たしさをのぞかせて叫んだ

でも義務を果たす力をこちらにくれる感情は
この私の場合、一体どこにあるのでしょう?

・・・

葉を芽吹かせる樹液がないのに
木々がその葉を繁らせるとでもお思いでしょうか?
魂にも樹液があるのですわ!

わたしのなかでは、その樹液が源ごと枯れてしまったのです

・・・

わたしたちは二心(欺瞞)を強いられていますの
世間は絶えず見せかけの表情を要求し、それに違反すれば恥辱を加えて
こちらを自分たちの習慣に従うよう命令するのです

以上

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