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毒のメカニズム

毒とは自己否定的イメージである、という話をこれまでしてきました。
今回は、毒親が発する毒がどのようなメカニズムで子供に悪影響を及ぼしているのか?について説明します。

1.毒の作用は3つ

親による子供への否定的な言葉・態度によって引き起こされる悪影響のことを毒の作用と呼んでいます。
大きく3つの作用がありますので、時系列に沿って説明していきます。

毒の作用①

まず1つめは親から否定されたその瞬間にもたらされます。
親からの否定的メッセージを受け取ることで、顕在意識に自己否定的イメージを持ってしまうことが1つめの毒の作用です。
(顕在意識とは自分で認知できる意識のことです。)

信頼しきっている親の言葉や態度は、そのままストレートに子供の心に侵入します。
親が否定するのは自分に原因があるからだ」と子供は信じているのです。

それにより、子供は自分に対する自己否定的イメージを(一時的に)受け入れてしまいます。これが毒による最初の悪影響となります。

例)
親「おまえはダメな子だ」
→ 子供「自分はダメな子」(顕在意識)

親「おまえは可愛くない」
→ 子供「自分は可愛くない」(顕在意識)

親「(無視)」
→ 子供「自分のせいだ」(顕在意識)

毒の作用①

毒の作用②

2つめの毒の作用は、毒親によって繰り返し否定させることでもたらされます。

何度も何度も親から否定的なメッセージを受け取ることで、自己否定的イメージは顕在意識から潜在意識へと浸透していきます。
一時的に持っていただけの自己否定的イメージが、常に頭の片隅に存在するようになるのです。

要するに、潜在意識に自己否定的イメージを植え付けられることが、2つめの毒の作用です。

毒の作用②

毒の作用③

自己否定的イメージが潜在意識に植え付けられることによって発動するのが、3つめの毒の作用です。
潜在意識に自己否定的イメージがあることで、無意識的に自己否定的な言動・思考をするようになります

この無意識的な自己否定の厄介なところは、親から新たに否定的メッセージを与えられなくても発動する点です。
いつでもどこでも無意識で、自己否定的な言動・思考をしてしまうのです。

例)
潜在意識「自分はダメな子」
→ 「常にいい子でないといけない」

潜在意識「自分は可愛くない」
→ 「おしゃれしても無駄だ…」

潜在意識「親が不機嫌なのは自分のせいだ」
→ 「人を怒らせないように振る舞わなければならない」

毒の作用③

よって3つめの毒の作用とは、潜在意識にある自己否定的イメージによって常に自己否定的な言動・思考になることです。
(潜在意識とは自分で認知できない意識のことです。)

2.毒の発生源

これらの3つの作用からわかるとおり、毒親育ちにとって毒の発生源は2か所あります。

①    外的な毒の発生源:毒親本人
②    内的な毒の発生源:子供の潜在意識

まず当然ですが、毒は毒親本人から発生しています。
毒親からの否定を受けることは、毒親が発する毒を体内に取り込んでいるということになります。
自分の外側に毒の発生源がありますので、毒親本人は外的な毒の発生源と定義します。

もうひとつの毒の発生源は、子供の潜在意識です。
毒の作用③のように、潜在意識に刷り込まれた自己否定的イメージからは、常に毒が発生しています。要するに、何もしていなくても体内で発生した毒が循環しているということになります。
自分の内側に毒の発生源がありますので、潜在意識を内的な毒の発生源と定義します。

毒の発生源

より厄介なのは、内的な毒の発生源です。
外的な毒の発生源である毒親本人については、離れてしまえばその効力は及びません。物理的に毒をシャットアウトすることが可能です。
陰でいくら罵倒されようが、子供の耳に(間接的にも直接的にも)入らなければ悪影響はほとんどないです。

しかしながら、子供の潜在意識に根付いた毒は、毒親のもとを離れたとしても子供をずっと否定し続けるのです。これほど恐ろしいものはありません。

毒親はいずれ先に死にますが、自分の潜在意識は一生自分についてきます。
毒親が死んでもなお、子供は毒の影響に苦しめられるということが大いにあり得るのです。

これこそが、毒親が毒親と呼ばれる所以です。
“毒親”と名付けたスーザン・フォワードは、毒親育ちの置かれた状態を本当によく理解していると感心します。

まさに毒物と同じです。一度体内に入ってしまうと、解毒しない限りずっと悪影響を及ぼし続けるのです。

内的な毒の発生源について、ピンと来ていない方もいると思うのでもう少し補足します。

あなたの心の中に小さな毒親が住んでいるところを想像してください。あなたが何かをするたびに、
「どうせあんたにはできっこない」
「ブスが何したって無駄」
「全部おまえのせいだ!」
と、小さな毒親が話しかけてくるのと同じことが起こっているのです。

実際に毒親の声は聞こえませんが、
「どうせ自分にはできない」
「どうせブスだし」
「全部自分が悪いのかもしれない…」
と、無意識的に毒親の否定パターンを真似してしまうのです。

無意識的な自己否定に身に覚えはないですか?
それは最初からあなたの潜在意識にある声ではないはずです。もともとは誰のセリフだったか、思い出してみてください。

このように子供の心の中に住む毒親を「インナーマザー」と呼びます。
マザーと名付けられているのはおそらく毒親が母親である場合が多いからだと思いますが、実際にはインナーファザーの場合もインナーグランドマザーの場合もあります。

3.  毒のメカニズムから考える解毒法

毒のメカニズムを理解したことで、外的な発生源に対する解毒法と、内的な発生源に対する解毒法の2つが必要となることがわかるかと思います。

外的な毒発生源に対する解毒法は、『発生源から離れる』一択です。
親の否定的メッセージが届かないところに避難するのが最も手っ取り早いです。毒の発生源から離れることで新たな自己否定的イメージを与えられなくなります。
『母親から離れたら楽になった』といった書籍が多い理由は、このためと思われます。

もし本気で解毒したいのであれば、毒親の言動を見聞きできない場所まで離れるというのは必須のプロセスであると考えています。

どんなに内的な毒発生源へ解毒のアプローチをしていても、毎日のように外的な毒発生源から毒を浴びていては意味がありません。シャワーを浴びながらドライヤーをかけているようなもので、永遠に終わりがないです。

しかしながら、毒親から離れれば万事解決ではないことも忘れないでください。外的な毒発生源から離れていても、内的な毒は発生し続けています。
両方を解毒して初めて、『解毒された』と言えるのです。

内的な毒発生源に対する解毒法は、『自己肯定的イメージを潜在意識に植え付ける』です。
自己否定的イメージを植え付けられているのであれば、その逆を行えばよいという考えです。

これはなかなか一筋縄ではいきません。
毒親本人から離れることと比べると、解毒の難易度はこちらのほうが圧倒的に高いです。
(実は毒親から離れることもそう簡単ではないのですが、それは別の記事でお話しします)

毒親によって刷り込まれた『自己否定的イメージ』を消し去り、『自己肯定的イメージ』に塗り変えるためには、『自己肯定的イメージ』を繰り返し顕在意識に与え続けるしかありません。
これがいわゆる『自己肯定感』であると私は考えています。

無垢だった子供の頃とは違い、大人がこれを得るのは膨大な時間と根気が要ります。しかし、決して不可能ではないということをお伝えしておきます。

毒のメカニズムから考える解毒法

4.  まとめ

今回は毒のメカニズムについて説明しました。
かなり単純化して説明していますので実際はもっと複雑ですが、毒の及ぼす影響について大筋を捉えられたのではないかと思います。

“毒”は本当に厄介な存在です。
子供に対する“呪詛”であるとさえ、思っています。
そして、こんな酷い呪いをかけたのが『実親である』ということに深い悲しみを覚えます。

しかしながら、親は神様ではありません。
身も蓋もない言い方かもしれませんが、親もまた未熟な一人の人間でしかないです。
親に否定されたことを、もう鵜呑みにする必要はないのです。

誰しもが幸せになる権利を(当然)持っています。
そして、それと同時に自分にかけられた呪いを解く力も持っています。

1人で悩んでいる方にもどうか届きますように。
そんな想いでいつも記事を書いています。
最後までお読みいただきありがとうございました。

少しでも人生を前向きに生きるきっかけになれたら嬉しいです。いつも応援ありがとうございます!