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「MOTTO3」大切にしている3つのこと #1 臨床研修センター長 下田和孝先生 

「MOTTO3」とは

各診療科の先生方、主任教授の先生方が大切にしている3つのMOTTOを紹介いただくというコーナーです。紹介いただいた3つのMOTTOをインタビュアーが深堀り質問していきます。普段なかなか聞けない、先生方の思いや価値感に触れる企画となっています。

インタビュー受ける人

精神神経医学講座 主任教授 
獨協医科大学病院 臨床研修センター長
下田和孝先生

インタビューする人

総合診療医学講座・総合診療科 主任教授  
獨協医科大学病院 副センター長
志水太郎先生 

MOTTO1 シュタイセイ(主体性)


志水先生:
――
 記念すべき第1弾は下田先生です。僭越ながら、インタビュアーは副センター長の志水が務めさせていただきます。それでは早速ですが、下田先生の一つ目のMOTTOは何でしょうか

下田先生:
個人として、主体性というのは極めて重要だろうと思います。当たり前ですが何をするにしても課題にぶつかりますよね。診療もそうですし、研究もそうですし、教育もそうです。要するに人生全て課題の連続なわけですよね。課題が重なると大きなストレスになりますよね。そのストレス対処法の基本は主体的に課題に当たるっていうことですよね。

志水先生:
―― 一つ目からすごい深いですね。「主体的に課題に当たる」とはどういう意味でしょうか。

下田先生:
「させられる」って言葉をよく使うじゃないですか。この時点で、表現が受身になってるわけですよね。課題を受動的に捉えていて、課題が降りかかってくるというイメージになるわけです。この捉え方(やらされている感)は、ストレスが逆に大きくなりますよね。なので、課題の捉え方自体を変えていかないといけないですよね。あくまで、課題の主体は自分にあるという。課題に対して、「よくきたな」と逆にマウンティングするような感じです(笑)

 志水先生:
―― 非常に難しい問題ですが、今主体性を持っていない人たちに、主体性を持ってもらうにはどういうことが必要でしょうか。

下田先生:
主体的に取り組まなかった時に、自分で考え、振り返りをさせる必要性がありますよね。何がデメリットになるか。今起きている問題は、「あなたが主体的に取り組んでいないから起きた問題かもしれないよ」と問いかけてあげて、自分の課題として捉える訓練をしていくことですかね。

志水先生:
―― 確かに。結局、多少遠回りでもその方が成長に繋がりますよね。最後は自分だということですね。ありがとうございます。それでは、二つ目のMOTTOをお願いします。

MOTTO2 タノシミナサイ(楽しみなさい)

下田先生:
先ほどのものともリンクしますが、主体性を持つためには、楽しくやらないといけないってことですね。楽しくやっていると、主体性を持つようになるんですよ。うちの医局がすごい大変だったときに宴会からやるしかないって思って始めたこともありますよ。

志水先生:
―― 辛い時や課題があった時に下を向いていても、何も始まらないですものね。

下田先生:
例えば、臨床研修センターで初期研修医数を増やせって言われても、多くの人はすごいプレッシャーだと思いますよ。でも、広報する人が楽しそうにしていないと、そもそも誰も来ないじゃないですか。私が臨床研修センター長を引き継いだ当初、課題だらけでしたけど、逆にこの状況を楽しもうと思いましたね。「色々変えていいですか?」と上の人に聞いたら、「どんどんやってください」って言われたので、自分で好きなようにやるようになりましたね。しんどいことももちろんあるけど、主体的に取り組んでいくと、楽しくなっていくと思うんですよね。

志水先生:
―― 確かに。その感覚すごく大事ですね。 

下田先生:
何でもいいんですよ。研究でも、仕事でも、遊びでも。どうしたもんだろうって苦しんでいても、何も変わらないじゃないですか。でも、多くの人は課題を受け身に捉えてしまう。精神分析の理論で言うと、基底的想定集団って言われるものです。

志水先生:
―― 「基底的想定集団」とは何でしょうか?

下田先生:
簡単に言うと、課題を受け身に捉えるグループを基底的想定集団と言います。これは集団心理として普通に想定されることなんですよ。逆に、主体的に動く集団を課題集団といいます。管理者としては、できれば基底的想定集団を課題集団の方に引っ張っていきたいわけですよね。ただ、それは正論を伝えてもできないんですよね。

志水先生:
―― なるほど。それは感覚としてよくわかります。

下田先生:
基底的想定集団の人達に受けいられるような課題に落とし込むことが重要なんですよ。その中にはやっぱり楽しさが必要なんですよね。コロナでなかなか難しいですが、遊びに行く計画を作ってもらうとか、宴会の幹事を任せてみるとか。医療ではなくて、違う要素を持ってくる。そのことを通して、主体的に動くことに慣れてもらうってことですよね。「好きにやっていいよ」と言われたら、裁量権が出るので、やらされ感もなくなっていきますよね。

志水先生:
―― 好きにやっていいって言われたらみんなちょっと心が軽くなりますね。それが課題を主体的に捉えることに繋がるのかもしれませんね。あと、個人的に思うこととして、課題を自分一人で解決しないといけないと思い込んでいる人が多いように思います。 

下田先生:
自分たちで全部何とかしようって思うと、億劫になりますよね。だからもっと人を頼った方がいい。色んなプロ性を持った人がいますから。シンプルに言えば、嫌なことはやりたくないっていうそれだけのことなんですけどね(笑)。自分がやりたいと思えることを主体的に取り組めば、ポジティブな結果になって返ってくる。結果が出ると、それはやっぱりもっと楽しくなって、更に主体性を持つことに繋がっていくんですよね。

 志水先生:
―― 「シュタイセイ」と「タノシミナサイ」は非常に関連してるということですね。ありがとうございます。それでは最後のMOTTOをお願いします

MOTTO3 ズル、ダメ、ゼッタイ

下田先生:
やっぱり最後はこれですね。不正や嘘は絶対ばれますよ。どんないいことをやっていても絶対だめですよね。もちろん勘違い、ミスっていう場合もあるから、しょうがいないケースもあります。ただ、意図的に不正をするのは、絶対ダメです。

志水先生:
―― 具体的にはどのようなケースでしょうか。

下田先生:
小さなことで言うとレポート課題とかですよね。他の人のレポートをちょっとお薬の名前を変えて出すとか。繰り返しますが、絶対ばれますからね。ずるしたことがばれて徹底的に叩かれるよりも、成績が悪くて怒られる方が遥かにましですよね。

志水先生:
―― 確かに。めちゃくちゃありそうなケースですね。 

下田先生:
不合格は不合格で仕方ないし、それは悪質ではないですよね。もう一回やり直せばいいだけの話なんですよ。ただ、不正は絶対、誰の得にならないってことですね。

志水先生:
―― 誰かには見られていると思います。改めて、「シュタイセイ」、「タノシミナサイ」、「ズル、ゼッタイ、ダメ」。強烈なメッセージですね。私自身とても勉強になりました。本日はこちらで終了としたいと思います

下田先生ありがとうございました。

 

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