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いいものさえ作れば売れるという思い込み、という話

日本の会社は特に製造業の領域で強いことが知られています。

また、日本の製造業は『全社一丸』『チームの力』という言葉で表現されるほど、設計や製造だけでなくその他の組織や社外のサプライヤーなどが『同じ釜の飯を食う』ように、ともに製品を生み出すために協力していきます。所謂『ケイレツ』と呼ばれる体制です。

この強力な連携体制を背景に、日本の製造業は新規の商品開発に強い力を持っており、例えばテレビやゲームに使われている液晶ディスプレイ分野の創生初期については、液晶メーカーや各部材のサプライヤーが一丸となり、日本が得意とする『すり合わせ』の力で製品化を成し遂げました。

新規製品の創成期には関係する各部材の仕様も固まっていない状態のため、仕様を確定させながらの製品化が必要になります。その中では各部材の担当者間での調整が重要になるため、日本が得意とする『すり合わせ力』が強みを発揮します。

逆に上意下達、持ち場を外れた行動が許されない欧米など海外メーカーはここが苦手なため、製品の創成期は日本が一番得意とする場面と言えます。

しかしながら、製品というのは一度見てしまえば100%と言えないまでも、コピーすることは可能。特に装置産業である商品の場合は製品メーカ〜だけでなく装置メーカーにも一定の製造ノウハウが貯まるため、装置メーカールートからコピーが可能となるケースがあり、日本が得意とした液晶ディスプレイ分野がまさにそれにあたったそう。

結局のところ、創成期を過ぎた製品は各部材がモジュール化されてしまい、誰でもモジュールを買えば製品ができてしまう世界となってしまうのです。

この現実を日本メーカーはなかなか認めることができない傾向があります(認めてしまうと、自身の否定にもつながるため)。

結果的に『同じ製品でもより高度に、より高品質に作れば差別化は可能』と思い込み、機能は同じでもより高品質な製品開発に没頭してしまうのです。

ただ、例えば液晶テレビについての品質である『高精細』『大画面』などを追い求めたとして、果たしてユーザーがそれに価値を認めるか、というのは全く違う話。

例えば日本の住宅事情で『60インチのテレビ』が必要かといえばほとんどの家庭で「NO」と答えるでしょうし、高精細なモニターが必要となるコンテンツが無い中で高精細モニターが必要かといえば「いらない」となるでしょう。

結局、技術以上に「必要十分な機能を満たす」ことがなければ、その技術は『なんの役にもたたない』と言わざるを得ないんですわね。

日本のメーカーは、その点を履き違えてしまっているケースが非常に多いんですわ。

まとめ

  • 日本のメーカーは高いすり合わせ技術を有しており、製品創成期には強さを発揮できる

  • どんな工業製品も、いずれはモジュール化され、コモディティ化(当たり前化)していく

  • コモディティ化した製品で技術を突き詰めても『オーバースペック』になりがち、日本メーカーはこれをやりがち

  • 結局、ニーズが無いのに技術開発しても、それが新規ニーズを生み出すことは殆ど無く、必要十分なものを安く作った中韓に負けてしまった

ベースとなった情報はこちらの書籍出典です


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