住宅の構造と耐震等級その②

その①では、木造住宅の構造面でのお話の入り口部分、着目ポイントをいくつかご紹介しましたが、ここではもう少し掘り下げていきます。

■耐震等級と建築基準法

耐震等級という言葉はマイホームをお考えの方なら目にしたことはあると思いますが、耐震等級とは品確法の中で定められた構造強度の基準で、現在1~3まで設定があって、3が一番強いです。
耐震等級1は建築基準法レベル、耐震等級3はその1.5倍となっており、長期優良認定や性能表示の評価を受けるのにわざわざ等級1は狙わないし、等級2にするぐらいなら3にするしで、現実的には等級無し(評価は受けない、いわゆる建築基準法)か等級3かがほとんどじゃないかなと思います。長期優良住宅の認定を受けてる住宅は最低が等級2なので、ほとんど耐震等級3じゃないかなと思います。

ここで、長期優良住宅や住宅性能表示で耐震等級の評価を受けていない建物、建築基準法の制約しか受けていない中でどのような設計がなされているのか、これは専門家以外の方にはよくわからない部分だと思います。

まず初めに、耐震等級を取っていないからダメということではありません、耐震等級はとっていなくても、耐震等級3の家よりも強い家はいくらでも普通に存在します。耐震等級は品確法の基準であり、認定制度がありますよというだけのものなので、大事なのは同等以上の構造になっているかどうかです。

建築基準法レベルというのは、建築基準法の最低基準以上の建物という意味で、どれだけ強くするかは設計者の判断なのです。法律が定める最低限のレベルが低すぎるとわたしは考えており、設計者のさじ加減にゆだねられる以上は、もう少し最低のレベルの底上げが必要だと思います。無知な設計者は基準法をクリアしてればいいと思ってますから。

熊本地震では住宅も多く被害を受けましたが、耐震等級3の建物は無被害~軽微な損傷しかなかったのに対し、建築基準法レベルの建物は2.3%が倒壊、4%が大破しており、足して6.3%は命にも関わるしもう住めなくなっているのです。これは平成12年以降の建物のデータで、新耐震制度下の築30年やそこら未満の建物で、建築基準法をクリアしていても倒壊している事実があります。建築基準法の最低レベルは「大地震でも倒壊しない」を前提に設定されてはおりますが、現実は大破もすれば倒壊もすることが確認できる出来事でした。

構造のことなんて全くわかりません!みたいな設計施工の工務店の方なども見てるかもしれませんので言いますが、わからないし構造計算や等級の判定もしたくないなら、建築基準法の2倍(充足率2倍)ぐらい壁入れときましょう!!だいたい等級3ぐらいにはなるんで。よほどガラス張りの家とかじゃない限りは入れられると思うんですよ、入れられるのに入れないで基準法ギリギリみたいなのはやめませんか。あと、入れられないような計画は何かがおかしいと思います、木造なんで・・・。

木造住宅は在来軸組工法か枠組み壁工法がほとんどだと思いますが、壁で揺れに対抗する構造なので、壁が無いともちません。

構造は主に基礎、壁、梁の検討が主な部分になるかと思いますが、ここまでは壁量についての話でした。

施主としては「構造の検討は基準法ですか?耐震等級ですか?」でいいと思います。耐震等級3だと、基礎や梁の検討もしてるって話になってきますが、「耐震等級3程度」の場合、壁量だけ計算してみました程度の場合もありそうなので、何をどう検討してるのか聞いてみるといいですよ~。

次に、基礎。恐らくベタ基礎が主流かと思いますが、基準法通すだけなら根入れ120mm、10mm鉄筋の300mmピッチ、土間150mm厚、立上り(基礎梁)幅120mm高さ300mmで主筋D13組んどけば通ります。仕様規定というやつです。

しかし、計算するとだいたいアウトになります。これは建物形状や基礎の計画によりますが、普通の住宅ならまぁアウトでしょう。広いLDKで、間に基礎梁、立上りが無い計画などはスラブが怪しいです。また、人通口、床下を通って点検できるように基礎が切れてる部分があると思いますが、本来は補強すべきところです。基礎は本来、立上りが全て繋がっていて、それぞれが閉じた区画になるべきなのです。しかしそうもいきませんから、基礎を切る代わりに補強をすることになっています。が、基準法には明確な記述が無いため、仕様規定でやってるところは補強無しでやっているところも多いのではないでしょうか。

構造計算でやっても、そこまでコストは上がらないし、仕様規定では安全性を確認できないと思ってます。スパン表だと結構コスト上がりますかね、配筋が結構エグいんで。計算で安全性が確認できればそこまでやんなくていいじゃんと思います。

それと、見落としがちというか、素人にはまったくわからなくて、設計者や施工者側でもけっこういい加減なのが梁です。建築基準法の仕様規定にも大きさの基準が無いので、構造計算していない=勘です。

で、経験のある大工の勘はそこそこアテになるものですが、逆に大きくなりすぎる面もあります。構造計算すると梁が思ったより小さくなることが多いです。しかし、設計も施工も経験のない設計新人君とか、適当にしかやったことのない欠落設計者の場合、勘もおかしいし誰が考えてもヤバいだろみたいな梁の掛け方とサイズだったり平気でやる勢がいます。それがまかり通ってしまうのが4号建築物(主に木造住宅等)ってやつなのです。法的にもアウトにならないんですよ。そもそも第3者がチェックする機会すら無いのです。命にすらかかわる欠陥住宅だと思うような住宅も普通に建っていたりして胸が痛いです_(:3 」∠)_

結局、施主がすべきことは、信頼できる設計者を探すこと、信頼できるかわかりにくいと思うので、構造的にはどのような検討をしているのかを聞くしかないですね。それなりに名の通ったところでも適当にやってる場合があります、残念ながら。質問したら言葉に詰まるようなところはやめた方がいいです。「建築基準法クリアしてるから大丈夫です!」のパワーワードが出てくるところも、建築確認取ってるだけで特に検討してませんの裏返しです(笑)

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