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アイドル・三浦みう、覚醒。

2023年7月9日、名古屋 LIVE HOUSE CIRCUS にて『DIANNAプロジェクト定期公演 vol.32 1st 三浦みう Birthday(以下DP定期)』が、その1週間後の16日には、東京恵比寿 CreAto にて『idrip presents HEN AI SUMNER PARTY 東京公演 みもたん Birthday Live』が開催された。結論から言えば、どちらも私の中の三浦みう像がアップデートされた、とても素晴らしい公演だった。

本題に入る前に簡単に三浦みうについて紹介する。生年月日は2008年7月8日生まれの現在15歳(中学3年生)。『DIANNAプロジェクト』のアイドルグループ『RABBIT HUTCH(以下ラビハチ)』と『idrip』を掛け持ちしており、容姿端麗、スタイリッシュなダンスが得意な芸歴3年超のアイドルである。

2020年3月に『DIANNAプロジェクト』に参加。同年7月にラビハチにスピード加入してから丸3年を数える。2022年5月17日には同じグループの天野里音とユニット『miurion』を結成、9月には正規ユニット『idrip』に昇格され現在に至る。

さて、タイトルにある『覚醒』の瞬間はいつを指すか。私は上記DP定期でのソロステージとしたい。このソロステージで彼女は Hondy Works の『誇り高きアイドル』を歌ったのである。彼女自身のプライベートなアイドルとしての覚醒や自覚の時期は定かではないが、表面的・対外的に定義するならば確かにこのソロステージであると強く思うのである。

そのDP定期はラビハチのステージで幕を開ける。オープニングの『Overture』では三浦みうを皮切りに1人ずつ登場、後の4人は彼女に抱きつく。その光景ですでに涙腺が緩んできた。彼女が本当にメンバーから好かれていることがとてもよく伝わり、暖かい気持ちで1曲目の『スパライ!』へと繋げられた。

この公演は『produced by MIU』と付されてるように、選曲も彼女がしている。1曲目に『スパライ!』を持ってきたのは意外ではあったが、その次は『The Dreamer』、その次はPREDIANNAの『TRAP』、そして新曲の『LIELIELIFE』と辛めのダンサブルなナンバーが続く。なるほど2歳からダンスを始め、人生の半分以上をダンスを捧げてきた彼女らしいセットリストというわけだ。

そして私の好きな『ZOMBIEM』もやってくれた。前日の特典会で三浦みう本人から「期待しててね」と言われていたのはこの事だったのかな、と勝手に推察してにんまり。そこからは DIANNA☆SWEETの『VIP』や PREDIANNAの『LOVELY BODY』などDIANNAプロジェクトのクラシックナンバーを展開、『JAMMIN』で締め括った。

『The Dreamer』もPREDIANNAの正規カバーなのでそのほとんどがラビハチ楽曲以外のナンバーで構成されていることに、DIANNAプロジェクトの歴史へのリスペクトが窺える。次々とその懐かしいイントロに呼応する古参のファンたちの反応も印象的であったし、私もリアルタイムに体験はしていないが、特にPREDIANNAのナンバーは、全てCDを揃えたほどに好きである。とにかく終演後にその賛否が軽く話題になり楽しませてくれたほどに、良い裏切りが印象に残る素晴らしいセットリストであった。

ラビハチのステージが終わり、MERUCHUの松井悠里、天野夏希、練習生の七海、はむ!STAR(中西みみさ、和奏、めい)による混合ステージが始まった。『初恋レボリューション』『SHIROKUMA NIGHT 』と、これまたクラシックナンバーを披露、祝辞を述べて三浦みうのバースデーに花を添えた後、ついに三浦みうが1人で出てきた。

『誇り高きアイドル』のイントロがかかる。個人的にはこの楽曲を初めて聴いたのでわからなかったが、その歌詞の内容もとてもよく聴き取れ、曲が進むにつれ、この歌を自らのバースデーのソロ曲に選んだ彼女に対し畏敬の念を抱くようになっていった。アイドルへ降りかかるステレオタイプな批評を強い言葉で跳ね返し、ファンやスタッフへの恋慕にも似た熱い想い、そしてアイドルへの愛と自分がその立場にいることへの感謝を歌ったこの歌は、今、三浦みうが歌ってこそ、その説得力が増すということに、一瞬でも気づけなかった自分を恥じ入るまであった。

1番が終わった後のホッとした表情や『スタッフさんの愛があって』の箇所でステージ袖を向いたのが更に私の胸を締め付けた。とにかく彼女の紡ぐ歌の一節一節に、心を揺さぶる胞子が宿っていたのである。タイトルと矛盾するが、彼女はアイドルとして覚醒したのではない。コロナ禍でのデビューから長い期間を経て、いつの間にか高き誇りを持ったアイドルになっていたのだ。

また歌唱中は一切踊らず、マイクをしっかり握り、歌だけに徹した彼女を見たのはほとんど初めてと言っても良いのではないだろうか。ラビハチでのダンサブルなステージと全くの対照をなすセットリストも完壁なまでの美しい時間の構築物であった。これほどまでの構成美をDP定期で観た事があっただろうか、と今でも思いを巡らしている。

ソロステージが終わり、エンディングに出てきた出演メンバーからケーキが運ばれてきた。ローソクを吹き消し、ラビハチメンバーから各自メッセージが伝えられ、それぞれ気持ちのこもったコメントに良い雰囲気が増幅された。idrip で活動を共にする時間の多い天野里音のメッセージからは「(『誇り高きアイドル』は)一緒にカラオケへ行った時からこの曲歌いたいと言って練習していた」とのエピソードも。こうして終始笑顔の溢れる幸せな空気で包まれたステージは幕を閉じた。

この公演を期に、私の彼女への想いにも確実な変化がもたらされただろう。それは蠢きから徐々に大きく弧を描き、波長は短く、振幅は高くなりそうである。真のアイドルとしての覚悟を宿した三浦みうの変化のスピードに乗り遅れては、夢に振り落とされるだけである。

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