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中3という壁、ファンダムという梯子

 2021年10月10日(日)に開催された『DIANNAプロジェクト定期公演 vol.8』の第3部公演で、MERUCHUの木下美結のDIANNAプロジェクトからの卒業が本人の口から発表されました。これにはその場に介した一同のほとんどが青天の霹靂という感じで呆然としてしまうほどの出来事でした。

 その中で彼女が「薬学の道をめざすこと」とりわけ、その道を選択した理由であろう「アレルギー持ちで、体質的にワクチンを打つことができない」という身の上の告白に、私はとても衝撃を受けました。

 若年層については新型コロナ罹患での死亡率こそ低いものの、油断するべきではないのは確かですし、そのことも多くの人と接するアイドル活動からは身を引かざるを得ない理由のひとつになったのではないかと窺えます。同じ声明での「なんとか生き抜いて」という節に、彼女の大変な危機感を感じざるを得ませんでした。

 とはいえ、その薬学の道に立ちはだかるのはやはり進学受験という壁。MERUCHU はかつてのメンバーも進学を控え卒業が相次ぎました。記憶に新しいところと言えば、本年6月20日(日)にゆりあ、田崎花綾の卒業(ともに現中3)、昨年2020年10月11日(日)にはゆうか(当時高校2年生)が卒業しました。さらに遡れば第3体制(『はじめての片思い』〜)オリジナル・メンバーの北出心愛さんも2018年12月23日(日)に開催された『GIRLS BOUQUET(ガールズ・ブーケ、当時DIANNAプロジェクト主催のライブの名称)vol.5 X’mas Special』で卒業、当時右も左もわからない私が初めて参加したその GIRLS BOUQUET が北出心愛さん卒業公演だったのを覚えてます。彼女の場合は受験というわけではなかったようですが、それも少しは含んでいたことと想像に難くありません。

 話しは少し変わりますが、役者・女優などの世界でも年間3,000人ほどの、いわゆる『子役』が中学受験や高校受験を機に普通の子に戻っていくそうで、それはアイドル界でも例外ではないようです。

 かつて私がメイン現場として通っていた『さくら学院』などは象徴的です。なぜなら小中学校の学校生活を再現したコンセプトで、中学卒業と同時にグループも強制的に卒業するというのが最大の特色となっており、箱推しであっても毎年定期的に訪れる別れを経験しなければならないものでした。これはアミューズの人材育成事業とも深く関わっているようで、キッズクラスは中3まで、その上のクラスに上がるには適正も含んだ審査もあるとの噂で、さくら学院の卒業は、まさに芸能活動人生の分かれ道であったのでした。

 さくら学院の卒業生は結果的に様々な進路をたどりました。大きく分ければ、順調に芸能活動を続けている者、続いてはいたが事務所を換えた者、そして芸能活動を辞めた者に分けられます。しかしそのどれもが持つ大きな利点、それがファンダムです。

 以前『アイドルは小学生のうちに始める方が良い理由』という記事を書きましたが、その中でファンがいることの利点を述べました。幼少〜少年期に芸能活動をし、一度ファンがついた場合、現代ではいい方向に作用する可能性が大いにあります。前述のさくら学院の卒業生、杉崎寧々は芸能界を引退すると同時に、看護師になる夢をファンの前で語り、数年経った今年、看護師国家試験に合格した旨報告されました。

父兄の皆様にご報告です!
https://ameblo.jp/sakuragakuin/entry-12678716335.html

 夢を堂々とファンに語り、自己実現を成し遂げる。そしてファンから祝福される。かつての芸能界での活躍ではありませんが、別分野で花を咲かせ、ファンを喜ばせる。これほど素敵な出来事はあるでしょうか。夢は人に宣言してこそ叶うということを証明した形になります。これまた拙作の記事『RABBIT HUTCH が国立競技場でライブをします』にも通じます。

 また同じくさくら学院卒業生の磯野莉音さんも舞台監督になるためアミューズにて勤務し、さくら学院の職員室としても活躍していたようで、今はおそらく同職で修行を重ねてると予想されます。

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 話しを戻しますが、木下美結は来月11月20日(土)に開催予定の『DIANNAプロジェクト定期公演 vol.9』にて卒業いたします。自分の身の上がきっかけで進路を定めることは往々にしてあることですが、新型コロナウィルスの世界的蔓延が彼女の人生に少なからず影響を与えたのもまた運命。同じ時代を生き、同じ空間で感動を共有したファンをもつ彼女が、どのようにファンダムに後押しされつつ薬学の道を全うするかどうか、私も遠くから見守りたいと思います。

 代表地点としての東京で感染者が激減した今、ワクチンを打たなかったことを誇り、「勝ち組だ」などと吹聴してる文系バカも割といるようです。ワクチンを打つことのメリットを冷静にかつ科学的に理解し、痛みと辛さと万が一の危険を顧みずアクションを起こした利他的な人間が大多数を占める中、このような文系バカの理屈は私には到底理解できません。またワクチンを打つ打たないでこれほどの分断が国内のみならず海外でも起こるとは、個人的に予想だにしなかったので大変驚いています。

 それに加え、冒頭にあるように「体質的にワクチンを打つことができない」という人たちもいるということがさらに衝撃的で、なおさら「勝ち組だ」とマウントを取っている側の人間たちを、私は激しく軽蔑することしかできないのであります。