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やさしさ

今日は某所で「やさしい日本語」について考えるイベントが開催される予定だったんですが、残念ながら台風の影響で中止になってしまいました。

その台風情報を「やさしい日本語」で発信したNHKのツイッター投稿について、いろんなコメントが寄せられいて興味深いですね。

せっかくなので、この機会に考えてみました。

その話題のツイートがこちら。

「やさしい日本語」とは書いてないけど、このあとも何度か【がいこくじん の みなさんへ】と、全文ひらがなで投稿されています。

これに対して、

そもそも、外国人は平仮名が読めるのか?
ローマ字のほうがいいんじゃないか?
英語のほうがいいんじゃないか?
中国人には漢字のままのほうがいいんじゃないか?
NHK WORLD でやればいいんじゃないか?
英語か通常の日本語から機械翻訳したほうが正確に訳される。

といったコメントがついています。

>そもそも、外国人は平仮名が読めるのか?

読める人もたくさんいますよね。読めない人もたくさんいるでしょうけど。


>ローマ字のほうがいいんじゃないか?

ローマ字のほうがいいという人、たくさんいるでしょうね。


>英語のほうがいいんじゃないか?

英語のほうがいいという人、たくさんいるでしょうね。


>中国人には漢字のままのほうがいいんじゃないか?

きっと、そうでしょうね。


>NHK WORLD でやればいいんじゃないか?

やってますね。すごい!


>英語か通常の日本語から機械翻訳したほうが正確に訳される。

なるほど。試しにGoogle翻訳してみました。どうでしょう?

ホントですね。全文ひらがなより、漢字かな交じりのほうが(たぶん)正確に訳されてるんじゃないでしょうか。英語→中国語は...わかりません(謝)

ただ、

いずれにしても、どれも「やさしい日本語」で情報発信しなくていいとか、しちゃダメってことにはならないですよね。

いろんな発信がある中で、その一つに「やさしい日本語」での発信があってもいいと思います。


一方で、「やさしい日本語」推し(?)の方々のコメントには

英語がわからない人もいる。
すべての言語には対応できない。
在日外国人には英語より日本語のほうが理解度が高いという研究結果がある。

というのが多いようです。


>英語がわからない人もいる。

そうですよね。在日外国人を国籍別で見てみると、英語ネイティブ(と思われる人)は5%もいなさそう(法務省 報道発表「平成30年末現在における在留外国人数について」)。

でも、英語から自分がわかる言語に機械翻訳したほうが「全文ひらがな」より正確に訳されるのなら、英語のほうが助かるかもしれませんね。機械翻訳の精度から言うと、

やさしい日本語 < 英語 < やさしい英語

かもしれませんね。


>すべての言語には対応できない。

たしかに。

でも、「やさしい日本語」でも難しい(=やさしくない)という人もたくさんいるでしょうから、できるだけ多言語化されたほうがいいと思います。

「多言語化+やさしい日本語」というか、「多言語」の中に「やさしい日本語」も含む、というか。

僕も韓国に行った時、ハングルが一文字も読めなくて困りました。仮にだれかがそれを「やさしい韓国語」にしてくれたところで、絶対わかりません(悲)

スマホでもキーボードでハングル打てなかったので、Google翻訳にかけることもできなくてとにかく英語表記を探してました(すごく少なくて困りました)。

韓国語 < やさしい韓国語 < 英語 < やさしい英語 < 日本語

の順に助かります。


>在日外国人には英語より日本語のほうが理解度が高いという研究結果がある。

これは、国立国語研究所(2009)の「生活のための日本語」に関する調査研究のことですね。

これ、ウェブ上だと研究結果が<速報版>しか公開されてないようなので、これを引用した岩田一成(2010)「言語サービスにおける英語志向」を参考に考えてみます。

下の表がその「証拠」にあたるのかな?

いちばん下の全国平均を見ると、確かに 英語<日本語 ということになるんでしょうけど、地域によってかなりバラつきがありますねぇ(この地域差のほうが興味深いですw)。

岩田さんも、

主に地域日本語教室でデ ータを取っていることも結果に影響を与えている可能性がある。よって本報告では扱う数字を高めの数字であると考えて慎重に扱いたい

と書かれてますから、これだけを「英語より、やさしい日本語」ということの証拠として扱うのは慎重になったほうがいいかなと思います。

日本語教室で勉強している人に「(母語以外で)日常生活に困らない程度にできる言語は?」と聞いたら、多くの人が「日本語」と答えますよね(苦笑)


というわけで、今回のNHKさんのツイートがよかったのかどうかってのは、「どちらとも言えないけど、少なくとも悪かったってことはない」んじゃないかなと思います。

というのも、上記のコメントのほとんどは、NHKさんが対象とした【がいこくじん の みなさん】からのものではないようですし(苦笑)


少しですが、海外ルーツらしき方からのコメントもありました。


こういう反応を見ると、NHKさんグッジョブ!👍✨

と思います。

自分が役に立ちたいなと思った相手の中に、少しでも「ありがとう」「助かったよ」と言ってくれる人がいたのなら、それで他の人を大きく傷つけたりしてないのなら、みんなハッピーってことでいいんじゃないでしょうか。


「人」を「憂う(=心配する、心を痛める)」と書いて「」。

単に、言葉の難「」度の問題じゃないですよね。


あなたのことを心配してるよ、

あなたの大変な様子に心を痛めてるよ、


そう思ってやったことがどうだったかなんて、

その相手以外に決められないんじゃないかなと。


何を「やさしい」と感じるかは、人それぞれですからね。

仮にその言葉が難しくても、「わかりやすくしようと思った、あなたのその優しさがうれしい」ということもありますよね。

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