“ドッグトレーニング”が必要な犬と、必要じゃない犬の違いは何ですか?
【質問】
私の愛犬は無駄吠えや噛みがひどく、トレーナーと共に訓練をしています。
街中で見る犬は良い子ばかりなので、皆ドッグトレーニングを頑張っていると感心していましたが、どうやら違うみたいです。
現に友達の実家で飼ってる犬は子犬の頃から普通に良い子で、「別に特段何かトレーニングしたわけでもないよ」と言っていました。
そうなると飼い主がマズルコントロールや、リードウォーク、その他のトレーニングをしなくても普通に吠えもなく育った犬もいると言うことになります。
この違いは一体何なんでしょう?
【回答】
私が専門学校でドッグトレーニングの授業を受けている時に、
警察犬訓練士の先生から「良い犬は誰がトレーニングしても良い犬だよ」と言われました。
※その後に「だから難しい犬をやんなきゃ、腕があがらないよ」と続きましたが。
実際に自分がドッグトレーニングを仕事にして、多くの犬とか関わりを持つようになると、確かに良い犬は吠えも咬みもせず、従順で物覚えも良いことが往々にしてありました。
逆に本気咬みや吠えなど、一般的に問題犬と呼ばれる犬も多く見てきました。
では、良い犬と問題犬の違いは何かというと、
それは“生まれ持った個性”としか言いようがありません。
同胎犬(母犬が1回のお産で生まれた子犬たち)でも性格は違うし、同じドッグトレーニングをしても成果の程は異なります。
〇犬の性格を形作るもの
もちろん犬の性格を形成する上で、犬の社会化期(生後3か月頃まで)の過ごし方や生まれ育つ環境はとても大切です。
また出回っている多くの犬のしつけ本や、ドッグトレーナーの動画などではことさら子犬の頃のしつけ方が大事だと強調しているので、犬の出自まで考えることは少ないように感じます。
まぁ、この事に関してはビジネス的な意味合いが強くて、飼い主さん側に希望を持たせるような書き方、言い方をしているのかと思います。
「吠え癖は必ず直る!」というトレーナーと、
「吠え癖は遺伝の部分が大きいので、ある程度しか直せません!」というトレーナーでは前者のほうが頼みたくなりますし(必ず直るかどうかは別としても)。
では改めて“生まれもった個性”というのを考えてみると、
犬に限らず動物は、血統による性格の影響を大きく受けます。
例えば母犬が神経質であれば子供もその遺伝を受け継ぎやすくなります。
さらに言うと、、
・妊娠中の母犬のストレス状態
→体内のストレスホルモンが胎児に影響を及ぼすというもの。犬ではないが、豚の観察ではストレス状態にある母豚の子ども(メス)は攻撃的になったと報告されています。
・同胎犬の影響
→母犬のお腹にいる時に、オスに挟まれているメスの性格がオスっぽくなる。性別が決まる時のテストステロンの影響を、間にいるメスも受けているという説です。
・生後56日までの過ごし方
→一般的には母犬や兄弟犬と同室で過ごします。しかしこの時の管理はブリーダーによるので、管理のしやすさから早期に母犬と引き離す可能性もゼロではありません。
また動物愛護法で56日を経過しない犬の販売は禁止されていますが、実際はブリーダーのモラルによります。
管理費用がかかるので、出生日を偽って早く売ることもあります。
※23年12月毎日新聞の取材で、犬の生年月日を偽って販売している実態があることがスクープされています。
早期に母犬や兄弟犬と離すことで、犬の健全な性格育成に問題が起こることは証明されています。
※この部分は“生まれ持った個性”の範囲ではありませんが、一般の飼い主が立ち入れない部分として、遺伝と同じくくりで記述しました。
〇まとめ
犬の性格というのは、色々な要素が複雑にからみあっているので、色々は側面から考える必要があるように思います。
また本来のブリーディングは良い血統を選択交配して、より良い犬を残していくことでもあります。
しかしこれがペットブームになると選択交配は行われず、産めよ増やせよの大号令のもと、売れるからジャンジャン交配させていきます。
少し古い話ですが、名犬ラッシーがブームとなった際にはアメリカでラフコリーが大変流行りました。
結果どうなったかというと問題のあるラフコリーで溢れかえり、本来聡明であるはずのラフコリーですが、著しくその評判を落としたそうです。
質問の趣旨とずれますが本来のドッグトレーニングは、問題行動を修正するためだけではなく、犬と人がより親密になる手段でもあります。
質問者の方が頑張って犬と向き合った分、それだけお互いの愛情は深くなることは間違いありません。
出来の悪い子ほど可愛いのたとえの通り、、、
一方で飼い主さんの愛情につけこんで、いい加減な繁殖をしている実態も知ってもらいたいです。
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