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後悔してること

 私には妹がいる。幼い頃からピアノを習い、我家でも母の指導の下、オルガンで練習していた。だが、その教育は過激だった。妹がミスをすると母は激しく怒り、怒鳴り散らし、暴力を振るった。何度も手を叩かれ、妹は泣きじゃくっていた。母の剣幕に私は何もできず、自室に逃げ込むしかなかった。妹に何もできなかったことを今でも悔いている。
 
 我家には犬がいた。私と母が家にいた時に死んだ。私はそばにいなかった。犬はその日、朝から体調が悪く、横になったきりで、次第に呼吸が荒くなった。哀れに思った私は、しばらくその体をさすっていたが、30分ほどしてから、飽きたというか、回復すると見込んだというか、とにかくその場を離れて自室に帰り、ゲームをして遊び始めた。
 犬が死んだのは、そのすぐ後である。私が離れた後も看病を続けていた母に呼ばれて、私は死んだ犬の処理を行った。犬の顔を見ると、歯で舌を噛んでいた。それほど苦しかったのだろう。臨終の際に傍にいてやれなかったことを今でも悔いている。
 
 後悔していることを思いつく限り書き出してみようとしたが、思ったより少なかった。後悔の念は、書き出しても消えない。これからも残り続けるだろう。私の無能と薄情の証として。

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