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療法食 ~皮膚病の予防と栄養素の役割~

今回は、「手作りご飯」に限らず、療法食全般の一般論をお話します。

もちろんそれぞれの栄養素の特徴を理解して、
手作りご飯に応用することもできる内容ですので、フードの方も手作りご飯の方もチェックしてみてください。



動物病院で処方される療法食は、「尿石系」「腎臓」「心臓」「関節」「皮膚」「糖尿病」「減量系」「皮膚系」「肝臓」「消化器」「クリティカル(重症期)」などに分類できます。



本日は、「皮膚系」について掘り下げてみたいと思います。




以前もどこかで投稿しましたし、どの分野もそうですが、
特に免疫学というのは現在もどんどん新しいことが分かってくる分野で、アレルギーの発症機序や病態については今分かっている常識が、来年は間違いになっているかもしれない分野でもあります。


今回はそれも踏まえてあえて簡略化して解説します。



みなさん、ワンちゃんネコちゃんの「皮膚系療法食」と聞くと、「食物アレルギー」の子用の療法食を思い浮かべませんか?



もちろん、食物アレルギーの子用のフードが製品数も多く(アレルギーを回避できるよう、選択肢は多い方がいいため、多いのはいいことなんです。)有名です。


でも実はもうひとつあります。


それは「アトピー性皮膚炎」用のご飯です。



アトピーもアレルギーではないか、と言われそうですが、
このアトピー性皮膚炎の療法食に関しては、


実は「食物アレルギー」に配慮しているわけではありません。



「皮膚のバリア機能を強化し、環境中のアレルゲンから守る」という設計がされた療法食です。



簡単に言うと、環境中のアレルゲンが体表に触れてもアレルギー反応がなるべく起こらないよう、皮膚のバリアを強化する目的で、皮膚に良い栄養がふんだんに入っているフードといったところでしょうか。



そして環境中アレルゲンはゼロにできません。

「ダニのアレルギーがあるからダニを世界から絶滅させる」とかは不可能なので、一定量のアレルゲンへの反応は起こってしまうものとして、少しでも痒みがでないような工夫を各社施しています。

EPA/DHAで少しでも抗炎症効果を期待したり、ヒスタミンを抑える配合などです。

具体的な製品名で言うと、
RCなら犬のスキンケアやスキンサポート、猫のスキン&コート、
Hill'sなら犬のダームディフェンスがこれに当たります。



ところで、
皮膚疾患の原因は、

・感染症(ノミ、ダニ、細菌、真菌)
・内分泌疾患による皮膚疾患
・アレルギー性皮膚疾患
・栄養性皮膚疾患(添加物・酸化脂質によるものもここに)

に大別されます。

この複数がからんでいたり、これ以外の病気もありますが、基本的には通常この中のどれかが主な原因であることが多いです。

以前、「総合栄養食を食べていたら、栄養性皮膚疾患になることはない」と言う発信を見たことがありますが、


経験上そんなことは全くなく、総合栄養食を食べていても栄養性の皮膚疾患になる事はよくあります。



特に、酸化脂質や添加物による症状が出ている子はすごく多いです。



一般的に「皮膚疾患」というと、「アレルギー」と思う方が多いですが、
実は真にアレルギーの子はそれほど多いわけではありません。



感染症のコントロールを適切にして、栄養性の問題を解決すれば治せる子はたくさんいます。



そして、感染症等の要因を除外して、最終的にアレルギーと診断された子で、除去食試験を行い、食物アレルギーなのか、環境中のアレルゲンに対するアレルギーなのかを見極めます。
(食物アレルギー、食物有害反応、食物不耐症の定義などはここでは割愛)



食物アレルギーと診断された子は、「食物アレルギー用の療法食」が処方されますが、環境中アレルゲンによる症状の子は「バリア機能を強化する療法食」が処方されます。



ちなみに、食物アレルギー・環境中のアレルゲンの両方にアレルギーがある子は、食物アレルギー用の療法食が適応になります。


食事中のアレルゲンは避ける術がある、環境中のアレルゲンはゼロにはできない、「避けられるものは最大限避けよう」の考え方です。


前置きが長くなってしまいましたが、


今回詳しく解説したいのは、
「バリア機能を強化する療法食」についてです。


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