見出し画像

東北旅 三日目

大船渡3日目の朝は、早朝に目覚めた。
時間は4時半。

昨日はだいぶ疲れていたけれど、
スッキリ目が覚めた。
二度寝しようとしたけれど
目が冴えて眠れない。

外は、まだ暗くて
窓越しに外を見ると
点滅した信号だけが
街に動きを与えていた。

少し考えて、
外を散策してみることにした。

コートもしっかり着込んで、
ボアブーツの中に
カイロも仕込んだ。

外はかなり寒かった。
歩けば暖かくなる。
ホテルから見える
港方面に歩く。

あたりは広い道路で
舗装されていて歩きやすい。
夜の港を独り占めしている気分。

遠くに見える
市場を目印に歩いていくと
漁船が現れた。

どこかで見たことのある風景。

今日は休みだけれど、
漁に出る日は、きっと
活気溢れているに違いない。

真っ暗な真っ暗な海、
堤防まで歩いて行って
下を覗き込んでみた。

誰もいない海。
真っ暗な海。

人の営みの遺跡の中で
一人だけ。

孤独。

別にこのまま
海に落ちたとしても
誰も気づかないんじゃないかな。

私がいなくなったって
大したことない。

海に身を委ねてしまおうか。

真っ暗な海を見ていたら、
そんなよからぬ思いがふっと
湧いてきた。

そうして覗き込んだ海。
きっと冷たいだろう。

その時、私の視界に
真っ暗な水面に動くものが見えた。

魚だ。

2、3尾
港の灯りに照らされている。

魚、いるんだ。
そりゃそうだよ、海だもん。

そうしてるうちに、
海底から
キラキラとした魚群が
浮かび上がってきた。

ボラか、イワシか

魚群をはみるみる大きくなる、
同じ方向を向いていた魚たちが、
身体をくねらせて
キラキラと輝き出した。

そして、水面に1尾、2尾と
上がっては水面を波立たせる。

どんどんキラキラが増えていく。

淡い銀色、水色、、、
真っ暗な海底の色に映える色合いだ。

私は、しばらく
それを見ていた。

ただ見ていた。


海に身を委ねるなんて、

だって、
僕らの生きる場所なんだよ。
海は。

そう言われてる気がした。

本当、私は馬鹿だ。

海は、生きる場所。

例え、暗く見えて、
光がないように見えても
暗闇の中だから
光が見えていないだけ。

それは、海の中だって、
私が辛いと思ってる
現実も同じじゃないか。

暗かろうと、
辛かろうと、

動いてみれば
光になる。

動いてみなよ。

がむしゃらでもいいから。

だいぶ、説教くさいかも
しれない。
けど、そう感じた。

冗談じゃない。
馬鹿にするなと。

そう馬鹿にするな。
自分を馬鹿にするな。

自分で自分を必要ないと思ったら
一体、誰が、助けてくれる。

自分を救うのは自分しかいない。

奇跡だ。

真っ暗な海に
救われてしまった。

魚群は海の底に消えていった。
そしてまた、真っ暗な海に戻った。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?