NY 2-3日目 | 薬

3日目 / 朝

蕁麻疹がめちゃくちゃ出た。「鎧着てるの?」と言われるくらい蕁麻疹が出た。写真を載せたいけどグロテスクすぎる。白黒にしたら、ちょっとカッコ良くなった。

月面写真のようにも見える

この写真が上半身全部。という状態になった。めちゃくちゃ痒かった。脳の80%が「かゆい」の処理で占められている。痒さのことしか考えられない。

脳の残りの10%は「ちょっと気持ち悪い」の処理に使われていて、残りの5%がルームメイトとコミュニケーションに当てられている。

残りの5%の脳を振り絞って、原因について思いを巡らせる。

こういうはいつも小学校の時に理科の実験で習った「対照実験」のことを思い出す。「デンプンの液に唾液を混ぜたもの = A」と、「デンプンの液に水を混ぜたもの = B」を比較する実験で、Bにわざわざ水を入れるのは、比較したいもの以外の条件を全て同じにするためだ。

こういうやつ

これはコードを書く時によくやっていることで、エラーが発生したら、成功時と失敗時の違いを一つずつ潰していく。違いを絞って対照実験を繰り返していくことで、エラーを発見することができる。

何が言いたいかというと、僕は対照実験が得意だ。

でも、今回に関しては違いが多すぎて対照実験ができなかった。ボディソープ・ベッド・食物・日中の時間・・・生活環境が全てが変わった。全部が原因のような気もするし、そうでない気もする。対照実験の状態を作り出せないので手がかりがとても少ない。

結局、

・発症の直前に何かを食べたわけではないこと
・到着の3日目にして発症したこと

から、

・食物は関係なさそう
・ボディソープも関係なさそう
・シーツのダニなども関係なさそう

という洞察を得、

・ストレス

が原因であるとの診断が下された(頭の中で)。個人的にストレスは全く感じていなかったが、ストレス以外に考えられない。

一応Googleでも検索する。「蕁麻疹 原因」

調べながら、WELQ事件のことを思い出し、医療のことをネットで調べるのって、良くないことだよな….でもそれしか方法がないからしょうがないかなどと考えながら調べていると、めちゃくそれっぽい記事に遭遇した。

皮膚以外には身体の異常が見つからない場合には、自分では気づかない過度のストレスに対する身体からの信号と受け止め、精神のありようや仕事の内容を振り返る機会とするのも良いでしょう。

皮膚科Q&A
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa9/q09.html

精神のありようや仕事の内容を振り返ってみましょう…。

でも、3週間の共同生活の最初の3日目で、ルームメイトが精神のありようや仕事の内容を振り返り始めていたら、すごく不吉な旅の始まりな感じがする。心配はさせたくないし、実際に痒いだけで、つらくはない。

とにかく過度に心配してほしくない。自分のことが見えていないけど、僕は今全身がぶつぶつ状態で、外から見れば相当病気っぽい見た目になっているはずだ。

取り敢えずその日は、痒みを我慢しながら寝ることになった。

翌日。起きてすぐは鎧が少し引いていたが、起き上がるとまた全身鎧状態になる。脳の80%が痒いで占められながら、20%で薬を手に入れるために動き出す。

そんな中「Zyrtec」がすごいらしいと聞き。

健太さんがZyrtecと言う薬を買ってきてくれた。(買ってきてくれたのになぜか申し訳なさそうにしていたし、謝られた。)

アメリカ最凶の抗ヒスタミン剤

このZytecがめちゃくちゃ強力で、飲んでから30分後に完全に蕁麻疹がひいいたので、メイさんととしかさんが開いてくれたWelcome Dinnerに参加できることになった。

そこで、漢方薬の力を信じるメイさんに会った。僕はとてもインスパイアを受けた。2人は僕に蕁麻疹が出たことをとても心配してくれていて、それだけで愛のある人たちだ…と思っていた。

「漢方薬めっちゃ効くよ」

そう言って、夕食会場の近く、チャイナタウンの中にある漢方のお店で、迷いなく謎の塗り薬を購入するメイさん。

動きに迷いがない

メイさんは僕と違って、全ての行動に迷いがない。お店のおばさんに「蕁麻疹が出ちゃったんですけど、何か良い薬ありますか?」と聞いて、最初に渡された、なんて書いてあるのか読めない薬を即購入し、無駄のない動きで僕にくれた。

「目に入れてはいけない」ということだけしか伝えられなかった。

僕は、人に薬を買ったことがないと思った。東京で友人が病気になれば、半ば僕にできることは何もないよなと心の中で思いながら、心配しているような(実際に心配しているけど)メッセージを送って、病気のTipsが箇条書きになったTwitterかネット記事をLINEで送る。ただそれだけ。

薬代も高いのにそれを奢ってくれる気前の良さと、心配して、そして実際に行動する。こんな僕の人生にも食い込んできてくれる。周りに影響している。ポジティブに。メイさんはどんな風に考えて(もしくは考えずして身体に染み付いているのかもしれない)行動してくれたのかわからないけど、僕はすごく嬉しかった。


どうでもいいが、アメリカは処方箋なしでゲットできる薬が多い気がする。国民皆保険ではなく医療費が高いと言うのはよく聞く話だが、医者にかからずに自分で直すという精神が強いのかもしれない。

何1つ読めない。メイさんも読めてない。

その後、帰って、薬を塗った。

アメリカのZyrtecと中国の塗り薬。世界のGDPが1位と2位の大国が総出で僕の皮膚病を治しにかかっている状態。

結果、めちゃくちゃ治った。

実はこの時の僕は、人生で一番皮膚に問題を抱えていた。両耳が荒れに荒れていて、なぜか両耳からリンパ液が止まらなくなっていた。すごく不快だ。

鎖骨のあたりには赤い瘡蓋があった。

全部に塗った。

3日後、それが全部治った。

アメリカと中国の薬は、めちゃくすごい。

2 - 3日目 | おわり



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