急性期NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)の特徴・適応疾患・注意点
NPPV:Noninvasive Positive Pressure Ventilation は,日本語でいうと,非侵襲的陽圧換気,です.
気管挿管や気管切開などが必要となるIPPV:Invasive Positive Pressure Ventilation侵襲的陽圧換気と対比されますが,NPPVはマスクを介して行うので,”非侵襲的"という表現がされます.
そんなNPPVの特徴や適応,注意点を解説します.
(在宅NPPVは,少し目的が変わってくるため,基本的には急性期NPPVに関する解説だと思ってください.)
NPPVの特徴
NPPVの特徴を語る上では,IPPV,すなわち気管挿管管理との比較がわかりやすいでしょう.
➀NPPVの短所(IPPVに劣る点)
まず,NPPVの弱点としては,マスクを介して行う換気なので,気道確保,すなわちAir wayの確保としては不十分です.
これは最大のデメリットであり,極端な例でいえば,急性喉頭蓋炎や気道熱傷では,適応となりません.
また,喀痰などの気道分泌のケアが困難になります.
気管挿管や気管切開であれば,チューブ内の吸引をすればいいですが,NPPVでは気道内にある分泌物の吸引が不十分となり,喀痰などを肺内に押し込んで,無気肺を起こすリスクもあります.
また,完全な強制換気は不可能なので,意識がなかったり,自発呼吸がない症例では,適応となりません.
➀NPPVの長所(IPPVに勝る点)
気管挿管や気管切開などの侵襲的な処置が不要です.
”NPPV”という呼び方のゆえんでもありますよね.
転じて,気管チューブの苦痛がなく,鎮静が不要ないし,少量で済みます.
これは管理上,大きなメリットです.
また,VAP(人工呼吸器関連肺炎)がないことも大きな利点とされます.
気管チューブがないことは,会話によるコミュニケーションも可能にしています.
➂見方を変えて:IPPVじゃなくてNPPVでも可能なこと
「別にIPPVじゃなくてもNPPVでよくね?」
ということ.
具体的には
・PEEPによる酸素化補助
・PS(プレッシャーサポート)による換気補助
です.
ただし,IPPVと違い,マスクと口の隙間から圧が逃げるので,PEEPにしろPSにしろ,IPPVに比して不完全であることに注意してください.
(例:「PEEP 8」の設定だが,実際には,(圧漏れで)PEEP 6くらいしかかかっていなかった)
特に,高圧設定では,NPPVとIPPVでは実際のサポート力に差が出てきます.
「重症呼吸不全にはNPPVでは歯が立たない」
という印象でとらえておきましょう.
NPPVの適応疾患
➀NPPVのいい適応
・48-72時間以内に呼吸状態の改善が期待できる
重症呼吸不全や,病態の全貌がつかめていないような状況では,NPPVは得策ではないです.
・意識清明,協力的
上述しましたが,完全な強制換気は不可能なので,意識があって協力的であることが使用の条件と言えます.
・気道分泌物が、コントロール可能
上述しましたが,気道分泌のケアが困難なので,肺炎には適しません.
・NPPVに同調できる
とはいうものの,やってみなければわからないので,事前に察知することは困難.
ここに関しては「NPPVを開始→同調しないからIPPVに変更」という対応でいいと思います.
【具体的な適応疾患と推奨度エビデンス】
・COPDの急性増悪(ⅠA)
・心原性肺水腫(ⅠA)
PEEP]は,酸素化を改善させるだけでなく,静脈還流量を減らすことで心臓前負荷も軽減します.
・肥満性低換気(ⅠA)
・免疫不全を伴う急性呼吸不全(ⅡA)
(IPPVに比し)VAPリスクが低いことから推奨されています.
・人工呼吸器離脱における支援方法(ⅡB)
・喘息(ⅡC)
マスクによる呼吸困難感が,かえって病態を悪化させることがあるので,積極的には推奨されません.
COPDとは推奨度が違うことに注意.
➁NPPVが適さない状況
これまでの話でも,関連する内容はいろいろ出てきましたが,ざっとリストにすると
・心停止,呼吸停止
・血行動態が不安定
・非協力的
・不穏
・顔面外傷・顔面の手術施行直後,顔面熱傷
・気道が開通していない
・誤嚥の可能性が高い(喀痰のコントロールがつくのならok)
・重度の低酸素血
NPPVの注意点
➀気管挿管を遅れさせてはならない
これは最も大事で,要は
「NPPVで粘るくらいなら,挿管しろ(IPPVにしろ)」
です.
実際に,NPPVに固執して気管挿管のタイミングが遅れることが,アウトカムを悪くすることはデータ的にも報告されています.
➁血液ガスを早めにfollow
上述とも関連しますが,「NPPVでしのげそうにない」と思ったら,気管挿管をためらってはいけません.
そのために,NPPV開始後の状態悪化を早く察知できるように,開始1-2時間は血液ガスはこまめに追いましょう.(30分-1時間おき)
また,認容性的に,24時間以上とかむやみに続けるものでもないので,開始4-6時間での血液ガスをとり,治療が軌道に乗りそうかどうかをチェック.
自信がなければIPPVにしましょう.
➂45°以上の頭部挙上
これ以下の角度での管理は困難です.
辛いですし,痰を誤嚥します.
本日は以上です.
お疲れ様でした.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?