【心不全は禁忌だけど,心臓にいい薬??】チアゾリジン:ピオグリタゾン(アクトス®)【作用機序や特徴】

今回は,インスリン抵抗改善薬,チアゾリジンのまとめです.

■チアゾリジンの作用機序・特徴

チアゾリジンはインスリン抵抗性改善薬です.

1.インスリン抵抗性の形成

エネルギー過剰状態,脂肪組織に貯蔵できない分の余った脂肪
→肝臓や骨格筋など,異所性に蓄積
インスリン抵抗性の原因になります.

また,脂肪が蓄積して肥大化した脂肪細胞は,アディポネクチンの分泌が低下し,インスリン抵抗性因子のTNF-αなどの過剰産生を起こして,インスリン抵抗性が増大します.

 

2.チアゾリジンの作用

脂肪細胞の分化を制御するPPARγ活性化します.

【余談】
一時,ARBの一部にも「PPARγ活性化作用があるのでは?」と話題になりました.
しかし,「PPARγ作用は軽微で,チアゾリジンと同様の効果を得るには,最大投与量の10倍以上の用量が必要」ということが分かったので,臨床的には”意味なし”となりました.(ONTARGET試験)
現状では,チアゾリジンが唯一のPPARγ活性薬です.
ARBについての解説はこの記事でしてます

PPARγが活性化すると

➀脂肪組織への脂肪蓄積促進し,異所性脂肪の減少(☞NAFLD・NASHの改善)

肥大した脂肪細胞のアポトーシスによってインスリン抵抗性改善

➂(肥大していない)小型脂肪細胞の分化を促し,アディポネクチンの増加

が起き,結果としてインスリン抵抗性が改善します.

 

3.チアゾリジンの特徴

【利点】
低血糖が少ない
・HbA1c低下効果は比較的大きい
・比較的安価:SU薬やビグアナイドに並ぶ安さ
心血管疾患リスクや脳卒中リスクを低下させる可能性
NAFLD・NASH改善効果:異所性の脂肪蓄積を抑制するので.エビデンスあり.

低血糖が少ないのに,比較的効果が大きく,安価.

かなり良さそうな響きですよね.

しかも,心血管疾患リスクや脳卒中リスクを低下させる可能性があるんです.(【PROactive試験】Lancet. 2005 Oct 8;366(9493):1279-89. など)

これは,使わない手はなくないか??

と思いつつ,落とし穴があります.

【欠点】
・体重増加:皮下脂肪増加食欲亢進 による
・浮腫・心不全:腎臓へのPPARγ作用がナトリウム再吸収を亢進させる
・骨折リスク上昇:閉経後の女性に多い
・膀胱がんリスク??:確定的なコンセンサスは得られていない.

ナトリウム再吸収の抑制は良くない

利尿薬の逆ですよ,これ.

明らかな心不全増悪因子なので,心不全への使用は(既往も含め)禁忌となってしまっています.

糖尿病患者の心不全発症率は12-30%で,非糖尿病患者の10倍近い確率です.(≫糖尿病患者のと心不全の関係についてはこの記事で解説してます.)

これが,(いい薬だと思うのに)チアゾリジンの使用頻度が上がらない理由ではないかな,と思っています.

膀胱がんのリスクに関しては,米国のKPNC研究(2011 Apr;34(4):916-22.)やフランスのCNAMTS(2012 Jul;55(7):1953-62. )で指摘されて注目されましたが,KPNCの長期間(10年間)解析や,その他の長期間検討では,関連性なし,となっており,確定的なコンセンサスはない状態です.

投与に際して,膀胱がんリスクの説明と,定期的な尿のスクリーニングだけしておきましょう.

 

■チアゾリジンの実用にあたって:いい適応は?

チアゾリジンの良い適応は,当然,インスリン抵抗性を疑う症例です.

肥満内臓脂肪メタボリックシンドロームの診断基準がいい目安になります.

【メタボリックシンドロームの診断基準】
➀必須項目:
ウエスト周囲径 男性≧85cm,女性 ≧90cm  or 内臓脂肪面積 ≧100cm2
➁選択項目(3つ中2つ以上)
i) TG ≧150 or HDL<40
ii) 収縮期血圧 ≧130 or 拡張期血圧≧85
iii) 空腹時血糖 ≧110

空腹時高血糖は奏功しますが,食後高血糖はいい適応ではありません

血糖降下薬の立ち位置 改

ちなみに,肥満のない症例での効果も確認されてはいます.(Diabetes Res Clin Pract. 2007 May;76(2):229-35. )

 

しかし,なにより重要なのは

心不全の既往がないか

でしょう.

これさえ外さなければ,低血糖も少ないし,(チアゾリジンを処方して)大けがをすることはあまりありません.

また,使用前には,尿潜血などで膀胱がんのスクリーニングをしておくのが丁寧です.

 

良い適応だと判断した場合は,チアゾリジンの最大効果発現には,数カ月を要するとされているので,投与開始後効果が少ないからとすぐに諦めず,根気強く継続してください.

PPARγ活性作用は,遺伝子多型の影響を受けるとされ,効果に個人差があります.

効く人にはかなり効く薬剤なので,禁忌でなければ使用してみて半年ほど効果判定してみてもいいと思いますよ.

 

■まとめ

・チアゾリジンは,ユニークなインスリン抵抗性改善作用の薬剤.

・低血糖が少なく,安価で,比較的HbA1cも良く下がり,大血管合併症予防効果にも期待がかかる.しかし,(既往も含め)心不全には使用禁忌なので注意する.

膀胱がんのリスクの指摘があるが,関連に関しては賛否あり,コンセンサスは得られていない尿潜血のスクリーニングと定期的フォローを念のためしておく.

肥満症例など,インスリン抵抗性が高そうな症例がいい適応だが,非肥満症例で効果がないわけではない食後高血糖への効果は期待できない

・最大効果発現には6ヵ月を要するので,そこまでは諦めずに継続してみることがオススメ.

 

こんな感じです.

インスリン抵抗性は,私の専門領域である心不全と大きく関りがあります.
インスリン抵抗性を絡めた,糖尿病と心不全関係について

残念ながら,心不全既往には使用禁なので諦めますが,心不全合併の一次予防としては,これ以上ない薬剤だと思いますので,是非皆さんも隙あらばチアゾリジンを使ってみましょう!

(ちなみに,大きな声では言えませんが,「チアゾリジン使用によって,えげつなく(致死的に)増悪した心不全」というのは,報告も含め見たことがないので,そこまでビビる必要はないと思います...)

 

今回の話は以上です.

本日もお疲れ様でした.


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