投球フォームのタイプ①
当然ですが、人によって投球フォームは異なります。パフォーマンスを上達させたいのであれば、自分がどういったタイプなのかを理解しておいた方が良いです。指導者は、対象者がどういうタイプなのかを理解しておかなければなりません。タイプに合わない動作や感覚を追い求めてもマイナスになるだけです。小学生や中学生にここを理解しろというのは難しい話ですし、理解させる必要はないと思いますが、彼らを指導する指導者や、ある程度経験値を積んだ高校生以上のプレイヤーは、タイプについて理解しておくべきだと思います。
投球フォームは人によって様々です。それをタイプ分けする分類の仕方はいくつもあります。
今回はその中の1つである、「力の出し方によるタイプ分け」について話していきます。
私はこれまで多くの選手の投球フォームを見てきました。その中で、力の発揮の仕方を2つに分けられることに気付きます。
それは...
①一瞬でパワーをMaxにする投げ方
②徐々に力をMaxに持っていく投げ方
別の表現をすると...
①並進運動が速い投げ方
②並進運動がゆっくりな投げ方
です。
もっと簡単に言うと、
①脚上げてからリリースまでの時間が早い
②脚上げてからリリースまでの時間が遅い
です。
一言で言えばこうです。
①フォームが速い
②フォームが遅い
何となくイメージ掴めましたでしょうか?
かなり感覚的な表現ですが、
自分はこの2つのタイプに分けられると考えました。
①上半身主体型
②下半身主体型
です。
上半身主体=手投げという印象がありますが、そういうわけではありません。その辺りは後ほど説明します。
まずは、
①上半身主体型
②下半身主体型
この2つのそれぞれの特徴を上げてきます。
①上半身主体型
・足上げながら並進運動
・テイクバック小さい
・インステップ
・軸足がプレートから離れる
・リリースポイントは後ろ
・リリースの一瞬に力を爆発させる
・フォロースルー短い
・踏み込み脚の膝関節進展
・軸足が一塁側で着地(右投手想定)
・スリークォーター
・クイック得意
・牽制得意
②下半身主体型
・軸足にしっかり乗せてから並進運動
・テイクバック大きい
・インステップ厳禁
・ステップ幅広い
・リリースポイントは前
・リリースまで徐々に力を入れていく
・フォロースルー長い
・踏み込み脚の膝関節屈曲
・軸足は三塁側に着地(右投手想定)
・オーバースロー
・クイック苦手
・牽制遅い
タイプ分けの特徴の全てに当てはまるとは限りません。あくまで分類の目安となります。
この2つは力の発揮の仕方に違いがあります。
感覚でいえば、
①上半身主体型は意識して腕を強く「振る」
②下半身主体型は下半身や体幹に腕が「振られる」
という感覚になります。
それぞれのタイプの代表例を上げましょう。
①上半身主体型
バウアー投手、バーランダー投手、シャーザー投手、チャップマン投手などなど
②下半身主体型
ダルビッシュ投手、カーショー投手、デグロム投手、大谷投手などなど
正直、どっちのタイプなのか分かりづらい投手もいます。
この話はメカニクス的な面も絡んできますが、感覚に基づいた分類になるので注意が必要です。
ですが、こういった部分を知っているだけでも、投球フォームに対するアプローチ方法にポジティブな影響を与えるはずです。
では、後で説明すると言っていた、上半身主体型が手投げではないのか?という疑問について解明していきます。
結論を先にいうと決して手投げではありません。
APAという現象が起きます。この現象は「瞬時に身体のある部分の力を発揮しようとするとき、その前に他の部分の筋活動が行われている」という現象です。そして、この先行動作は無意識に行われます。つまり、上半身主体型は、意識としては、上半身のパワーを一気に発揮するという意識があるのですが、上半身力が発揮される前に下半身の筋活動があるということです。そういった意味では、下半身主体になります。
APAという現象は初動負荷トレーニングにも用いられており、上半身のトレーニングで下半身の筋活動を促す、下半身のトレーニングで上半身の筋活動を促すといったものに該当します。
ちなみに、下半身主体型は瞬時に力を発揮するわけではないので、APAは起きず、上半身の先行運動が行われることはありません。
1つ注意して頂きたいのが、上半身主体型で下半身が使えていなければ、ただの手投げになりますし、下半身主体のつもりでも下半身が使えてなければ同じ手投げになりますね。「上半身主体だから下半身はどうでもいい」というわけではありません。
要するに感覚的には上半身主体だったり下半身主体だったりしますが、メカニクス的にはどちらも下半身も上半身もしっかり使うことが、高いパフォーマンスを発揮する上でのそもそもの大前提となります。
また、別の記事で、違ったタイプの分け方も紹介できればと思います。
少しでも参考になれれば幸いです。
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