FOREVER DOCTOR HEAD'S WORLD TOWER outtakes~30回目の10月29日~ トオルa.k.a.スケル

本日は30回目の10月29日です。ファンの方ならご存知の通り『ヘッド博士の世界塔』30周年はフリッパーズ・ギター解散30周忌でもあります。

フリッパーズ・ギターが1990年4月から1年半の間、FM横浜で毎週火曜日の19時30分から30分ほどパーソナリティーをつとめていたラジオ番組「マーシャンズ・ゴー・ホーム」。1991年10月29日の同番組の放送が結果的にフリッパーズ・ギター解散の公式発表の場となりましたが、実際には最終回までの5回分には小山田圭吾氏、小沢健二氏は出演していませんでした。

マーシャンズ・ゴー・ホーム最終回

『クイック・ジャパンvol. 38』(2001年8月28日号)で当時番組のディレクターであった鈴木一男氏に元「FAKE」の大塚幸代ちゃんがインタビュした記事の一部を紹介します。

 

~以下、インタビューから一部引用~

 

大塚 「マーシャンズ」は、結果的にフリッパーズ解散の公式発表の場になってしまったわけですが…。

 

鈴木 これがね、最終回のテープがここにあるんですけど。10月29日。…彼らは、具体的には9月いっぱいで活動停止しているんですよ。それが決まったのが9月の末なんですよ。…決まったというか、そうなっちゃうっていうのは。僕は小山田のほうから「二人での収録は出来なくなる」って連絡をもらって。でも番組は続けなきゃいけないから、小山田、小沢個別でいいから録音をとろうと。じゃあってことで小沢に連絡をとったんだけど、彼はそれは嫌だと。…それで、オンエアまで日にちが無くなったんですよ。で、今までに録ったナレーションっていうのがあったんですが、それをつないでですね、話になるように。

 

大塚 え? 会話を切り貼りして?

 

鈴木 うん。それが最終回までの5回分。

 

大塚 …ぜんぜんわかんなかったです。

 

鈴木 そりゃわかんないようにやりますよ(笑)

 

大塚 じゃ、こぼれた選曲から拾ってっていう形で?

 

鈴木 今までのプレイリストを見ながら、かけられなかった曲を。それも割とテーマっぽく仕立てて。10月22日はルイ・フィリップ特集とか、してましたね。喋りも、その曲を紹介してるところなんかを、編集して集めて。こんなテープ作ったんですよ。「あいづち集」。彼らのあいづちが、これ一本まるごとはいっているんですよ。あいづちだけ(笑)

 

大塚 あいづち集…。

 

鈴木 その五回分の間は、一ヶ月、ほとんど徹夜してそれを編集していて。事務所やレコード会社が、フリッパーズを継続させるために彼らと交渉してる間ですね。ウチも好きなバンドだったので続けて欲しかったし。こんなに徹夜してんだからオマエラ番組に戻ってこいよ!って思ってましたけどね。

 

大塚 活動休止を撤回したら、番組再開できるようにと。

 

鈴木 うん…。彼らがもう一緒にやらないっていうのは、その時点では誰もしらないですから。スポンサーに対しても状況を説明できなくて。別に死んだわけじゃなかったし。もうどうしようもないので、最終回にしましょう、解散発表しましょうってなった時は…最終回はやっぱりピリオド打たなきゃいけないんで、そういう曲は残って無かったんですよ。こぼれた曲で作っても最終回は彩れないんで。瀧見くんと話をして、マーシャンズを総括する曲を選曲してもらったんです。で、オンエアの数時間前です、テープが完成したのは。

 

大塚 二人が瀧見さんを連れてきて選曲してもらって、小山田さんが「これでマーシャンズ・ゴー・ホームは終了です」しめて終わってるみたいなに、聞こえたんですけど。

 

鈴木 前に「マーシャンズ・ゴー・ホームはこれにて終了です」って小山田が洒落で言っていたような気がする、って思い出して。テープとして残っているかも定かじゃなかったんだけど、テープをリアルタイム一ヶ月ずうっと聴聞いて。そしたら見つかって…。見つかった時はもう涙出そうになって…。

 

大塚 …。

 

鈴木 しかも、泣いてる風に、言葉をつまらせてる風に、たまたま喋っていたんですね。「これは絶妙の出来だ!」って思いましたけどね。二回くらい放送前に聞きなおして、不自然はないかなーとチェックして。オンエアのあと、小山田から「最終回聞いて感激しました」って言われてバカヤロー!って思いましたけどね(笑)。「すごーい」って。

 

大塚 でも、それ狂ってますよ…。

 

~引用、終了~

ファンジン『FOREVER DOCTOR HEAD'S WORLD TOWER』の「VIVA DEATH FAKE 1991年の夏から秋にかけての話」では解散を知った経緯については触れましたが、彼らがなぜ解散したのかという話題はあえて避けました。2人の口からはもちろん、周りの関係者すらいまだに理由を明確に語らない以上、文章にしてもそれは憶測に過ぎず「記憶の記録」ではないと考えたためです。『ヘッド博士の世界塔』が再発されない理由について触れなかったのも同じ理由からです。

いつか『ヘッド博士の世界塔』が再発され、ライナーノーツで2人が「あの時はね…」と昔話をしてくれたら…。叶わぬ願いでしょうが、その日が来るまではこれからも7月10日と10月29日がくる度にそれぞれがそれぞれの言葉で「記憶の記録」を語り継いでほしいというのが私の願いです。

世界塔よ永遠にー。

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