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社労士試験 予備校では教えないポイント解説 vol.075

雇用保険法(3)

失業給付、求職者給付Ⅰ-1(基本手当等、受給資格)

今回と次回は、一般に『失業保険』といわれている給付の説明です。
多くの方が一度は関わるものですので、試験対策というより、実務という感覚で理解を深めてください。
ちなみに、後の記事で説明する一般教育訓練給付は、予備校で社労士講座を受講されている方は、支給対象になっている可能性がありますのでよく理解をしてください。ちなみに、私はしっかりと3万円ほど頂きました(笑)。
また、お手持ちのテキストには、今回の記事の部分が文章ではイメージとして判りづらいからか、たぶん、図解が載っていると思いますので、そちらも参照願います。

①失業等給付の種類

失業等給付は、『求職者給付』『就職促進給付』『教育訓練給付』及び『雇用継続給付』の4種類から構成されています。
【求職者給付】(今回の記事で説明する給付)
求職者が求職活動をする間の生活の安定を目的として給付されるものです。したがって、離職していても求職活動をしていない場合には支給されません。『失業保険もらいながらゆっくり世界旅行しながら骨休み』はダメってことです。
一般被保険者が失業した場合に支給されるものとし、
・基本手当
・技能習得手当
・寄宿手当
・傷病手当
の4種類があります。
今回の記事では、多くの方が関わる基本手当について説明します。
以下の記事では、各給付の大項目→中項目→小項目という構成を必ず押さえながら読んでください。試験問題として作りやすいので、このつながり(項目の個数)を出題される可能性があります。
【就職促進給付】
・就業促進給付
・移転費
・求職活動支援費
の3種類があります、就業促進給付は、さらに、
・就業手当
・再就職手当
・就業促進定着手当
・常用就業支度手当
の4種類があります。
【教育訓練給付】
・教育訓練給付金
・教育訓練支援給付金
の2種類があります。
【雇用継続給付】
・高年齢雇用継続給付
・介護休業給付
の2種類があります。
高年齢雇用継続給付は、さらに、
・高年齢雇用継続基本給付金
・高年齢再就職給付金
の2種類があります。この給付のために、59歳以上の離職者に対しての離職証明書(※離職時までの賃金額が記載されている)の省略はできないという規定になっています。
以前は、育児休業給付は、一番下の分類に入っていましたが、近年、単独の中項目に格上げされました。(後の記事で説明します。)

1)求職者給付の種類

各被保険者の区分によって以下のように別れます。
【一般被保険者】
・基本手当
・技能習得手当…(受講手当、通所手当)
・寄宿手当
・傷病手当
【高年齢被保険者】
・高年齢求職者給付金
【短期雇用特例被保険者】
・特例一時金
【日雇労働被保険者】
・日雇労働求職者給付金
つまり、技能習得手当、寄宿手当及び傷病手当は、一般被保険者しか支給対象ではないということです。

2)就職への努力

『求職者給付の支給を受ける者は、必要に応じ職業能力の開発及び向上を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行うことにより、職業に就くように努めなければならない。』
求職活動をしなくてもよい者にまで雇用保険としては面倒を見ないということですが、求職活動しない理由が、専門学校に行くなど将来の就職に寄与することであれば、この限りではないということです。

②受給資格

基本手当の支給を受けることができる資格を『受給資格』、受給資格がある人のことを『受給資格者』といいます。

1)受給要件

1.受給要件の原則

基本手当は、離職による一般被保険者の資格の喪失の確認を受けた者が失業している場合において、原則として、離職の日以前2年間(『算定対象期間』といいます。)に、被保険者期間が通算して12箇月以上であったときに支給されます。
『通算して』なので、2年間の算定対象期間内に被保険者期間が複数ある場合、それが連続していなくても、これらの被保険者期間をすべて合算して12箇月以上となれば受給要件を満たすことになります。

2.受給要件の特例

離職の理由が、離職した労働者の保護に値するような場合には、原則の2分の1の期間と要件であっても、受給要件を満たすこととした特例です。
次の①又は②のいずれかに該当する者(詳細は後述)については、離職の日以前1年間(算定対象期間)に被保険者期間が通算して6箇月以上ある場合にも、基本手当が支給されます。
所定給付日数(求職者給付がもらえる最大日数のことです。)が増える場合と、単に被保険者期間が直近1年間で6箇月しかなくても受給権者となれるというだけの場合(特定理由離職者Ⅱ)があります。
①倒産・解雇等により離職した者(以下、記事において『倒産・解雇等離職者』といいます。)
②特定理由離職者(希望に反して契約更新がなかったことにより離職した者(以下、記事内において『特定理由離職者Ⅰ』といいます。)又は正当な理由(※後述)のある自己都合により離職した者(以下、記事内において『特定理由離職者Ⅱ』といいます。))

3.受給要件の緩和

原則の算定対象期間を貫くと、疾病や負傷等で賃金の支給を受けない場合は、その間、雇用保険料を納付しないこととなり被保険者期間から除外されてしまい、受給要件を満たし得ないこともありえます。そこで、算定対象期間(離職の日の以前2年間、上記特例が適用される場合は1年間)に疾病、負傷等により引き続き30日以上賃金の支払を受けることができなかった被保険者については、当該理由により賃金の支払を受けることができなかった日数を算定対象期間に加算した期間(ただし、その加算後の期間が4年を超えるときは、4年間)を算定対象期間とします。
つまり、最大2年間(特例が認められる場合は3年間)算定対象期間が加算されますので、これに該当すれば、3年以上前の被保険者期間も対象となる場合もあるということですが、加算後の期間を超えての以前(最大4年前以前)の被保険者期間は対象とはならないということです。ここで気を付けないといけないのは、算定対象期間が加算延長されるという効果しかないということです。
【疾病、負傷等】
①疾病、負傷
②事業所の休業
③出産
④事業主の命による外国における勤務
※雇用保険料を日本に納付していないため
⑤国と民間企業との人事交流に関する法律第2条4項2号に該当する交流採用(国の機関が行う民間企業の従業員の交流採用であって、民間企業の当該従業員の雇用関係を継続したまま行うもの)
⑥その他管轄公共職業安定所の長がやむを得ないと認めるもの
※争議行動、親族の看護、3歳未満の子の育児等

2)被保険者期間

1.被保険者期間の算定

被保険者期間は、原則として、次のように算定します。
①被保険者として雇用された期間を、資格喪失の日の前日からさかのぼって1箇月毎に区切っていき、このように区切られた1箇月の期間に賃金の支払の基礎となった日数(以下『賃金支払基礎日数』という)が11日以上ある場合に、その1箇月の期間を被保険者期間の1箇月として計算する
※例えば、7月11日に資格喪失した場合は、『6月11日~7月10日』、『5月11日~6月10日』。。。と区切っていくということです。大抵の企業には賃金計算の締日がありますが、それは関係ありません。ですから、社労士さんの本音としては『賃金締日で辞めてくれ~』だそうです(笑)。
②このように区切ることにより1箇月未満の期間が生じることがあるが、その1箇月未満の日数が15日以上あり、かつ、その期間内に賃金支払基礎日数が11日以上あるときに、その期間を被保険者期間の『2分の1箇月』として計算する
※この端数の2分の1箇月だけでは意味をなしませんが、離職が2回以上あったときに足せば1箇月となる場合に意味をなします。
【(24時をまたぐ)深夜労働の賃金支払基礎日数】
深夜労働に従事して翌日にわたり、かつ、全体の労働時間(つまり、拘束時間から休憩時間を除いた時間)が8時間を超える場合には、原則として2日として計算します。
【月給者の賃金支払基礎日数】
月間全部を拘束する意味の月給制であれば、暦日(28日、29日、30日又は31日のことです。)、いわゆる『日給月給』のような、1月中のうち日曜日、休日等を除いた期間に対する給与であればその期間の日数となります。つまり、日給月給の場合は、上記の区切りの1箇月の中で11日以上労働していない月は、『被保険者期間1箇月』とカウントされないということです。また、日給月給者が欠勤して給与を差し引かれた場合(つまり年次有給休暇に該当しない場合など)は、その控除後の賃金に対応する日数が賃金支払基礎日数となります。
【日給者の賃金支払基礎日数】
一般的には、現実に労働した日数をいいます。ただし、休業手当支払の対象となった日及び有給休暇の取得日は、現実に労働していなくても、賃金支払基礎日数に算入します。

2.被保険者であった期間から除外する期間

被保険者期間を計算する場合において、次の期間は、被保険者であった期間に含めません。
①最後に被保険者となった日前に、当該被保険者が受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を取得したことがある場合には当該受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前における被保険者であった期間
※失業給付を受ける手続きをした段階で、被保険者期間がリセットされるということです。また、①の規定からは日雇労働被保険者は除外されています。つまり、双方の受給資格があれば、日雇労働被保険者としての受給資格には影響がないということです。
②被保険者となったことの確認があった日の2年前の日前における被保険者であった期間
※意味が分かりにくいですが、『被保険者であった期間について雇用保険料が未納』ということです。2年間というのは時効消滅によって、雇用保険料をさかのぼって納付することができなくなる期間です。
【②の特例】
次の要件のいずれにも該当する者(ⅰ.に規定する事実を知っていた者を除く。以下、『特例対象者』ともいいます。)にあっては、被保険者の負担すべき労働保険料の額がその者に支払われた賃金から控除されていたことが明らかである時期のうち最も古い時期として厚生労働省令で定める時期
※要は、事業主が被保険者資格取得等の届出を行わなかったことにより、雇用保険の未加入となっていたというケースです。それが事業主の故意か過失かは問われません。
ⅰ.その者に係る被保険者資格取得等の届出がなされていなかったこと(労働者がこの事実を知っていたらこの特例は適用されないということです。)
ⅱ.厚生労働省令で定める書類(賃金台帳、源泉徴収票等)に基づき、被保険者となったことの確認があった日の2年前の日より前に被保険者の負担すべき労働保険料の額に相当する額がその者の支払われた賃金から控除されていたことが明らかである時期があること。
※時効にかかる2年よりも前の期間に賃金から雇用保険料に相当する額が控除されていた場合が賃金台帳などから明らかである場合は、それが事業主の故意、過失にかかわらず、その控除されていたことが確認できる一番古い時期から雇用保険の被保険者であったとみなしますということです。
この特例は、算定対象期間内に30日以上賃金の支払を受けることができなかった期間がある場合には算定対象期間が2年間より延長されるので、その場合に効力があります。

3)倒産・解雇等離職者及び特定理由離職者

倒産・解雇等離職者及び特定理由離職者の要件とともに、後述する、その『効果』も併せて押さえてください。
また、この要件に該当すれば、給付日数が増えたり短い要件でも受給資格者となれますので、後述のような要件該当の目安となる例が挙げられています。
試験にも事例問題として要件に該当するかどうかを問う問題が出題されます。内容としては『当然、該当するでしょ?』という当たり前のことが多いのですが、試験問題としては『数字引っ掛け』や『休暇日数が増える事例か、単に算定対象期間の特例が受けられるだけか』という意図で出題されるかと思いますので、出てくる数字や事例はきちんと押さえてください。

1.倒産・解雇等離職者

『倒産・解雇等離職者(倒産・解雇等により離職した者)』とは、次のいずれかに該当する者をいいます。
①その者を雇用していた事業主の事業について発生した倒産又は当該事業主の適用事業の縮小若しくは廃止に伴い離職した者
②解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)等により離職した者
【倒産】
・破産手続開始
・再生手続開始
・更正手続開始
・特別清算開始の申し立て
等の事態をいいます。
【倒産・解雇等離職者とされる離職の例(則35、36)】
1.倒産等による離職の例(原則)
①倒産に伴い離職
②事業所において、労働施策総合推進法27条1項の規定に係る大量の雇用変動の届出がされたため離職/当該事業主に雇用される被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く)の数を3で除した数を超える被保険者が退職したため離職
※高年齢被保険者は除外されていないことに注意。
※『3割を超える』というのが典型的な引っ掛けワードです。
③事業所の廃止(当該事業所の事業活動が停止し、再開するって見込みがない場合を含み、事業の期間が予定されている事業において当該期間が終了したことによるものを除く)に伴い離職
※有期事業に従事する労働者は、労働契約締結時から、定められた時期に事業が終了することを承知しているはずなので、その有期事業終了という理由を保護の対象とはしないということです。当然、要件を満たす限り一般的な受給資格者にはなれます。
④事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職
※③とは違い、事業所の移転は労働契約締結時に承知することは難しいためです。また『通勤することが困難』とは、通常の方法(通常交通機関を利用し、又は自動車、自転車を用いる等)により通勤するための往復所要時間(乗り継ぎ時間を含む)が概ね4時間以上であるとき、又は通勤に交通機関を利用すべきこととなる時間帯の便が悪く、通勤に著しい障害を与えるときをいいます。『通常交通機関』ですので、新幹線や飛行機などを通勤の手段とすることで2時間以内(往復4時間以内)に通勤できるというのは認められません。
2.解雇等による離職の例
⑤解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)により離職
⑥労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職
⑦賃金(退職手当を除く)の額を3で除して得た額を上回る(✕3割を上回る)額が支払期日までに支払れなかったことにより離職
※以下⑦⑧⑨は、かなり客観的に倒産を予見できるケースといえます。
⑧予期し得ず、離職の日の属する月以降6月のうちいずれかの月に支払われる賃金(毎月決まって固定的に支払われるものをいい、臨時の賃金、割増賃金、歩合によって支払われる賃金など支払額が変動するものは含まない。以下、⑧⑨において同じ)の額が当該月の前6月のうちいずれかの月の賃金の額に100分の85を乗じて得た額を下回ると見込まれることとなったことにより離職
※簡単にいえば、『15%を超える賃金カットを言われた場合』ということです。その比較計算の元が、過去6箇月の賃金で、賃金カットが『離職の日以降6箇月以内の指定された月から』といわれたということです。
⑨予期し得ず、離職の日の属する月の6月前から離職の日の属する月までのいずれかの月の賃金の額が当該月の前6月のうちいずれかの月の賃金の額に100分の85を乗じて得た額を下回ったことにより離職
※⑧は将来の賃金カットのケースで、⑨は、過去すでに賃金カット又は賃金未払があったケースです。
⑩離職の日の属する月の前6月間に次のいずれかに該当することとなったことにより離職
・離職の日の属する前6月のうちいずれか『連続した3箇月以上』の期間において労働基準法36条の限度時間に相当する時間数等を超えて、時間外労働及び休日労働が行われたこと。
※三六協定(時間外労働の上限月45時間)には休日労働は対象とはなりませんが、ここでは休日労働が入ることに注意
・離職の日の属する月の前6月のうちいずれかの月において1月当たり100時間以上、時間外労働及び休日労働が行われたこと
・離職の日の属する月の前6月のうちいずれか『連続した2箇月以上』の期間の時間外労働時間及び休日労働時間を平均し1月当たり80時間を超えて、時間外労働及び休日労働が行われたこと
※判りやすくいえば『過労死認定基準を上回る時間外労働及び休日労働があった』ということです。
⑪事業主が危険又は健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険又は健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったことにより離職
⑫事業主が法令に違反し、妊娠中若しくは出産後の労働者又は子の養育若しくは家族の介護を行う労働者を就業させ、若しくはそれらの者の雇用の継続等を図るための制度の利用を不当に制限したこと又は妊娠したこと、出産したこと若しくはそれらの制度を利用の申出をし、若しくは利用したこと等を理由として不利益な取扱いをしたことにより離職
⑬事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないことにより離職
※事業主が、辞めてほしい労働者に対して、『嫌なら辞めてもらってもいいよ。』という配置転換を意図的に行うケースがあるためです。
⑭期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職
※有期契約であっても、それが3年継続された場合には、労働者側は『当然、次も更新されるだろう。』と期待するのは当然だろうと考えられるからです。また、5年を超えると無期転換権が発生するので、その前に有期雇用契約を解除しようとすることもあるかと思います。
⑮期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職
※次の『特定理由離職者ⅰ』との違いに注意して下さい。この⑮は、『労働契約の更新が明示』されていたケースです。特定理由離職者ⅰは『労働契約を更新する場合がある』+『労働者が更新を希望』というケースです。
⑯事業主又は当該事業主に雇用される労働者から就業環境が著しく害されるような言動を受けたことにより離職
※いわゆるパワハラ、セクハラ等のことです。
⑰事業主から退職するように勧奨を受けたことにより離職
⑱事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3箇月以上になったことにより離職
※③④⑤に該当しない(賃金の支払はなされている)場合ということですが、当然、倒産は予期できるだろうということです。
⑲事業所の業務が法令に違反したことにより離職
※法令違反により業務が停止されて、再開はできないだろうと推測される場合ということです。

2.特定理由離職者Ⅰ

『特定理由離職者Ⅰ(希望に反して契約更新がなかったことにより離職した者)』とは、倒産・解雇等離職者以外の者であって、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働者契約の更新がないこと(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限ります。)により離職した者をいいます。
具体的にいいますと、期間の定めのある労働契約について、当該労働契約の更新又は延長があることは明示されているが、更新又は延長することの確約まではない場合(契約更新条項が『契約を更新する場合がある』とされている場合など)であって、かつ、労働者本人が契約期間満了日までに当該契約の更新又は延長を申し出たにもかかわらず、当該労働契約が更新又は延長されなかったために離職した場合がこれに該当します。したがって、当初から契約の更新がないことが明示されている場合には、(たとえ労働者が更新又は延長を希望したとしても)原則として特定理由離職者Ⅰには該当しないこととなります。

3.特定理由離職者Ⅱ

特定理由離職者Ⅱは、特定理由離職者Ⅰとは違い、所定給付日数は増えませんが、受給要件を満たすための算定対象期間の特例(離職前の1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上であればいい)の対象者になれるという効果があります。が、この取扱いの違いがややこしいので、しっかりと押さえてください。
自己都合退職とはいえ、情状酌量の余地のある理由による離職者について、せめて、受給要件の緩和だけでも認めようというイメージです。
『特例理由離職者Ⅱ(正当な理由のある自己都合により退職した者)』とは、倒産・解雇等離職者以外の者であって、離職理由による給付制限の対象とされない正当な理由があると認められる自己都合により退職した者をいいます。
【特定理由離職者Ⅱとされる離職の例】
①体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職
②妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法20条1項(就労不能の特例)の受給期間延長措置を90日以上受けた者
③家庭の事情が急変したことにより離職(父若しくは母の死亡、疾病、負傷のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合等)
④配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職
⑤次の理由により通勤不可能又は困難となったことにより離職
・結婚に伴う住所の変更
・育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
・事業所の通勤困難な地への移転(倒産・解雇等離職者の事例④に該当する場合を除く。つまり、通勤に係る時間が往復時間が4時間未満の場合です。)
・自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
・鉄道、軌道(路面電車のこと)、バス等の運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
・事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
・配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
⑥直接若しくは間接に退職することを勧奨されたことにより、又は希望退職者の募集に応じて離職(倒産・解雇等離職者の事例⑰に該当する場合を除く)


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