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社労士試験 予備校では教えないポイント解説 vol.066

労働者災害補償保険法(6)

保険給付Ⅲ

今回は、被災労働者が不幸にして亡くなった場合の残された遺族の生活補償のための給付です。

①遺族(補償)等年金

1)受給資格者及び受給権者

もう一度、『受給資格者』と『受給権者』の違いをおさらいです。ここを勘違いすると、試験問題を解けません。
・受給資格者…大枠としての権利者。今回の記事でいえば、亡くなった労働者の収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹の全員が該当します。『受給権者となる資格をもっている人』ということです。
・受給権者…遺族(補償)等年金を実際に受給する者
社労士試験でいえば、行政書士さんや大学卒である等で社労士試験を受験できることが『(受験)資格者』、そのうち、受験を申込んで受験料を支払った人が『(受験)権者』。。。というイメージでしょうか?(余計に解りにくくなったらすいません。。。)

遺族(補償)等年金の受給権者(条文では『遺族(補償)等年金を受ける権利を有する遺族』と表現されます。)となるのは、次の受給資格者(条文では『遺族(補償)等年金を受けることができる遺族』と表現されます。)のうち最先順位者です。
また、前記事(vol.065)内で、障害(補償)等年金差額一時金における欠格のことを書きましたが、その記事中の『障害(補償)等年金差額一時金』を『遺族(補償)等年金』に置き換えれば、欠格の事由は同じです。労災保険で欠格の取り扱いをことさらにいうのは、後で述べますが、前の順位者が亡くなる等の理由で次順位者に受給権が移る『転給』という制度があるからです。労災保険は、労働者が被災したことによる『使用者の償い』というものなので、受給資格者(償ってもらえる人)が存在する限り、転給が続きます。ちなみに、厚生年金(遺族厚生年金)などの社会保険には転給という制度はありません。
【受給資格者となる遺族】
絶対条件は、
『亡くなった労働者の収入によって生計を維持していたこと』
です。いくら使用者による償いという意義があっても、労働者が亡くなっても生活に困らない者までにも償いをする必要はないということです。ここで、『生計を維持していた』とは、もっぱら又は主としてその死亡した労働者の収入によって生計を維持を維持されていることを要せず、その労働者の収入によって生活の一部を維持されていれば足りるとされています。したがって、共稼ぎもこれに含まれます。『労働者の死亡により、生活費を切り詰める必要が生じる人たち』というイメージです。また、生計を維持していたことの認定は、当該労働者との同居の事実の有無、当該労働者以外の扶養義務者の有無その他必要な事項を基礎として厚生労働省労働基準局長が定める基準によって行うこととされています。
以下に掲げる順位による最先順位者が受給権者となります。
①配偶者
・妻は無条件
・夫は『60歳以上又は厚生労働省令で定める障害の状態(以下『障害の状態』という)にあること』(以下、『条件a』と表現します。)つまり、障害の状態にあれば年齢に関係なく永遠に受給できます。自分で働くことが困難なので給付金を必要としているからです。
②子
・『18歳に達する以後最初の3月31日までの間にあるか(概ね『高校生』)又は障害の状態にあること』(以下、『条件b』と表現します。)
③父母
・条件a
④孫
・条件b
⑤祖父母
・条件a
⑥兄弟姉妹
・条件a、及び条件b
死亡した労働者が58歳(例)であるときの兄姉(条件a)と、死亡した労働者が20歳(例)であるときの弟妹(条件b)双方を想定しています。
⑦~⑩は、いずれも、
・『55歳以上60歳未満の者で障害の状態にないもの』です。
⑦夫
⑧父母
⑨祖父母
⑩兄弟姉妹
※『子』がこの年齢層に入っているとは想定されていません。(80歳の労働者とか、子が『養子』だったら可能性はあるんですけど。。。)
【厚生労働省令で定める障害の状態】
(傷病が治癒して)障害等級の第5級以上に該当する障害がある状態又は傷病が治らないで、身体の機能若しくは精神に、労働が高度の制限を受けるか、若しくは労働に高度の制限を加えることを必要とする程度以上の障害がある状態(つまり、労働して賃金を得ることが非常に困難な状態のこと)をいいます。
ちなみに障害等級第5級とは(抜粋)、
・一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
・一上肢を手関節以上で失ったもの
・一下肢を足関節以上で失ったもの
・両足指の全部を失ったもの
等が、該当します。
【婚姻の届出をしていない事実婚の場合】
この論点は、社労士試験全般に当てはまる論点です。おそらく、例外はありません。
配偶者(妻又は夫)には、『婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者(内縁関係の者)』が含まれます。
ただし、届出による婚姻関係にある『戸籍上の』配偶者と、事実上の婚姻関係にある『内縁の』配偶者がいる『重婚的内縁関係』の場合は、前者(戸籍上の配偶者)の婚姻関係がその実態を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みがない場合には後者(内縁の配偶者)が配偶者とされます。
【上記⑦~⑩の者】
上記⑩~⑩の者(以下、『若年停止者』といいます。)は、受給権者となっても60歳に達する月までの間は、支給停止されます。『まだ若いし、障害もないし、自分で働いて生活費を稼げるでしょ?』ということです。
また、若年停止者となった後で障害等級5級以上の障害者となっても、順位者①~⑥の扱いに繰り上がることはありません。亡くなった労働者の死亡当時の状態で順位が確定するということです。

2)胎児出生の場合の取扱い

原則、胎児の権利関係の発生は、胎児が出生したときに発生するとされています(民法等)。ちなみに、非嫡出子(わかりやすく、昔風にいえば、『愛人の子』)については、父親に対しては『認知』を必要としますが、母親に対しては父親の認知は必要ありません。母親は『その子を産んだ』という絶対的事実があるからです。(税理士試験の『相続税法』では出題されうる論点ですが、社労士試験では、おそらく、この論点での引っ掛けはないかと思います。)
また、恒例の蛇足論点ですが、ちょっと前までは、非嫡出子の法定相続分は、『嫡出子の2分の1』でした。つまり、相続人が非嫡出子と嫡出子が1人ずつのみの場合、相続分は、非嫡出子が3分の1、嫡出子が3分の2となっていました。しかし、『非嫡出子となったことに関しては、その子供には責任はない。』ということが認められて、今は相続分の差はなくなりました。(前述の例でいえば、相続分は、ともに2分の1ずつとなります。)血縁関係が生じる特別養子縁組はもちろん、(普通の)養子縁組により養子となった子も、当然に子として同じ扱いです。

『労働者の死亡の当時胎児であった子が出生したときは、受給資格者の適用については、『将来に向かって』、その子は、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子とみなす。』
つまり、出生したときに受給資格が発生するのであって、労働者の死亡時にさかのぼって発生するものではありません。
【胎児の出生時に後順位者が受給権者となっていた場合】
労働者の死亡の当時胎児であった子が生まれたときは、子より後順位の者(順位③~⑩までの者)は受給権者ではなくなり、胎児であった子が受給権者となる。ただし、受給資格が消滅(失格)するわけではないので、出生した胎児の受給権が消滅した場合には再び受給権者となることはあり得ます。なお、胎児が出生するまでに正当に受給を受けた遺族(補償)等年金は、返還するなどの精算をする必要はありません。(これが『将来に向かって』ということです。)

3)年金額

遺族(補償)等年金の額は、受給権者及びその者と生計を同じくしている受給資格者(若年停止者を除きます。)の人数の区分に応じ、次の順となっています。
たとえば、亡くなった労働者が30歳として、その者から見て、その労働者により生計を維持されていた
・58歳の父と54歳の母
・28歳の妻
・2歳の子
がいた場合、
54歳の母は、そもそも受給資格者ではなく、父も若年停止者なので数に入りません。よって、受給権者である妻と受給資格者である子の2人ということになります。この給付日数は、数字ゆえ試験問題にしやすいので、ズバリと出題される可能性があります。少なくとも①の妻のパターンは覚えましょう。(なぜか『生涯の妻、午後イナゴを採りに行く。』という謎の語呂合わせが頭に残っています(笑)。)
①遺族の数が1人
・給付基礎日額の151日分
・ただし、55歳以上の妻又は障害の状態にある妻にあっては、給付基礎日額の175日分
②遺族の数が2人
・給付基礎日額の201日
③遺族の数が3人
・給付基礎日額の223日分
④遺族の数が4人以上(つまり上限)
・給付基礎日額の245日分
また、受給権者が2人以上(②~④のケース)の場合は、各受給権者に係る加算対象者(生計同一の受給資格者。たとえば、父母と兄弟姉妹が生計同一であるケース)の有無及び数の多少に関係なく、年金額を受給権者の数で等分した額が各受給権者に支給されます。(なぜか、すべて割り切れない数字ですが。。。)分かりやすくいえば、『みんなに平等に給付するから、あとはそっちで上手く使って!』ということです。
後の記事で説明しますが、『未支給の年金』については、相続人が何人いても、請求したその1人にのみに代表として給付されます。元々死亡した者1人に支給すべきであったものを相続人の数にわざわざ分割して支給するということはしないということです。この取扱いとの引っ掛けが試験には出ます。ちなみに、年金は2ヶ月遅れで支給されますので、年金権利者が死亡した場合、必ず、未支給の年金が発生します。
また、遺族(補償)等年金を受けている者が老齢厚生年金を受けるようになっても年金額は減額されることはありません。支払元の『財布が違う』ということと『元々、亡くなった労働者が生活を支えていた者が老齢厚生年金をもらうようになっても、その労働者はその者の生活を支え続けているだろう。』というイメージです。

4)年金額の改定

遺族(補償)等年金の額の算定の基礎となる遺族の数に増減を生じたときなど(下記6)参照)、年金額の改定事由が生じたときは、その改定事由が生じた月の翌月から、遺族(補償)等年金の額が改定されます。
恒例の『月末24時のスイッチ』が入るわけです。

5)所在不明による支給停止

『遺族(補償)等年金を受ける権利を有する者の所在が1年以上明らかでない場合には、当該遺族(補償)等年金は、同順位者がある場合には、同順位者の、同順位者がないときは次順位者の申請によって、その所在が明らかでない間、その支給を停止する。
この場合において、同順位者がないときは、その(所在不明の)間、次順位者を先順位者とする。この規定により遺族(補償)等年金の支給を停止された遺族は、いつでも、その支給の停止の解除を申し出ることができる。』
『死亡隠し』による不正受給までは想定していないとは思いますが、所在不明というのは、もはやその遺族は遺族(補償)等年金を必要とはしていない状態なので、支給する必要はないだろうということと、等分すべき分母が減る同順位者は受給額が多くなりますし、次順位者に至っては、『もらえるはずのなかった年金』が受給できるのですから、残された遺族にとっても有利な規定です。
また、支給停止の時期は、所在不明となったときにさかのぼり、所在不明となった月の翌月から、支給を停止(年金額を改定)します。逆に、支給停止の解除の時期は、所在が明らかとなったときにさかのぼらす、解除を申請した月の翌月から、支給を再開(年金額の改定)をします。
支給停止のケースは、対象遺族の数が減るので、給付総額が減ることが多いので政府も積極的に精算をしますが、支給停止の解除のケースは、支給総額が増えるので申請の翌月からしか改定しません。。。というイメージです。(筆者の勝手な推測です。)

6)失権及び失格

遺族(補償)等年金の受給権者又は受給資格者が次の①~⑥のいずれかに該当するに至ったときは、受給権者の場合はその受給権が消滅し(失権)、受給資格者の場合はその受給資格者が消滅します(失格)。
失権も失格も『最初から受給権者・受給資格者ではなかった』という扱いになりますが、すでに正当に受給した年金を返還する必要はありません。
①死亡したとき
②婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)をしたとき
※別家庭を築いたため、亡くなった労働者の遺族(補償)等年金に頼らずとも生活できるだろうということです。
③直系血族(亡くなった労働者の父母など)又は直系姻族(亡くなった労働者の配偶者の父母など)以外の養子(届出をしていないが事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む)となったとき
※俗にいう『孫養子』が世間一般に多くなされているという事情と、残された子供にとってもそれが一番自然(幸せ)だろうということと、養子に迎える祖父母が老齢年金のみしか収入がないときでも『遺族(補償)等年金』付きの孫だと経済的にも養子に迎えやすいだろうということを逆から見た規定です。よって、叔父叔母(傍系親族)の養子になった場合には失権・失格します。
④離縁(養子縁組の解消)によって、死亡した労働者との親族関係が終了したとき
※この場合は、その養子だった子は生父母の籍に復籍しますので、生父母と生計同一となるからです。
※これとイメージの似た事案で、奥さんだった人が元の姓に戻る『復姓』をしても、全く、関係ありません。
⑤子、孫又は兄弟姉妹(主に弟妹)については、18歳の年度末が終了したとき(労働者の死亡の時から引き続き障害の状態にあるときを除く)
※高校を卒業して自分で働いて収入を得られるようになったからです。
この『障害の状態』は、労働者の死亡の当時から引き続いているものでなければなりません。したがって、胎児が障害児として生まれた場合は、『労働者の死亡のときまでさかのぼらない』わけですから障害者とは扱われず、また、労働者の死亡の当時14歳で、その後18歳になるまでに障害者となった場合でも、18歳の年度末に失権・失格します。(この場合、この者が20歳になれば、自身の障害基礎年金(二十歳前障害)が支給される場合があります。詳しくは、国民年金法の記事で述べます。このような『バトンタッチ』の論点は実務上は重要ですが、社労士試験では同一法内でのバトンタッチ以外は問われません(両方の法律で出題されてしまう可能性があるから。)。しかし、頭の中にイメージとして残りやすいので、記事内では、出きるだけ触れていきます。)
⑥障害の状態にある夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、その状態がなくなったとき(ただし、夫、父母又は祖父母については労働者の死亡の当時60歳以上であったとき、子又は孫については、18歳の年度末までの間にあるとき、兄弟姉妹については、18歳の年度末までの間にあるか又は労働者の死亡の当時60歳以上であった者を除く。それぞれ、年齢要件の方に該当して受給権が発生しているからです。)
※労働者の死亡の当時55歳以上60歳未満(つまり若年停止者)である夫、父母、祖父母又は兄弟姉妹について、状態の状態に該当しなくなったときは、その障害の状態でなくなったときの年齢ではなく、労働者の死亡の当時の年齢により前記⑦~⑩に該当する者(つまり若年停止者のまま)として扱われます。
【転給】
受給権者が失権した場合において、同順位者がなくて後順位者があるときは、次順位者に遺族(補償)等年金が支給されます。これを転給といい、労災保険法独自の制度です。
元々受給資格者は、その亡くなった労働者により生計を維持されていたことが要件なので、遺族(補償)等年金を必要とする者がいる限り、支給が続きます。
【権利の復活(はしません。)】
受給権者又は受給資格者が、一度、失権・失格すると、原則として再度当該年金の受給権者又は受給資格者とはなりません。たとえば、上記②(婚姻)により失権又は失格した者が、その後離婚したからといって再び当該年金の受給権者又は受給資格者とはなりません。
ただし、この場合でも、後述の『遺族(補償)等一時金』が支給される場合に該当したときは、その遺族(補償)等一時金の受給権者又は受給資格者となることはあります。

②遺族(補償)等年金前腹一時金

労働者が死亡することにより残された遺族が亡くなった労働者の抱えていた負債の清算や引っ越しなど一時的に資金が必要となる場合があります。そのようなケースを想定した制度です。
『政府は、当分の間、労働者が業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により死亡した場合における当該死亡に関しては、遺族(補償)等年金を受ける権利を有する遺族に対し、その請求に基づき、保険給付として、遺族(補償)等年金前払一時金を支給する。』
なお、前記事の障害(補償)等年金前払一時金と同様に、支給されるべき額の合計額から一定の利息相当額を控除した額が一時金の額に達するまで、年金は支給停止されます。年金を担保とした借金みたいなものですね。
また、若年支給停止者であっても、その者が最先順位者である場合には、この遺族(補償)等年金前払一時金の請求かできます。『労働者が亡くなったことにより、『今』お金が必要となったから。』(筆者推定)です。

1)支給額

遺族(補償)等年金前払一時金の額は、給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分に相当する額から、受給権者が選択した額となります。
試験対策としては、ここだけ読むと『間違うはずがない』と皆さんは思われると思いますが、これが『1200日分』と出されると、思わず○としてしまいます。この1200日分というのに引っ掛かるのは、療養開始後3年を経過してもまだ治らない労働者に対して、使用者が1200日分の休業補償をすれば解雇できるという解雇制限の解除の規定(労働基準法)のイメージが強いからです。
後述の遺族(補償)等一時金が給付基礎日額の1000日分なので『それと同額まで前払一時金が支給してもらえる。』という覚え方がよろしいかと思います。

2)請求

『遺族(補償)等年金前払一時金の請求は、同一の事由に関し、1回に限り行うことができる。遺族(補償)等前払一時金の請求は、遺族(補償)等年金の請求と同時に行わなければならない。ただし、遺族(補償)等年金の支給の決定の通知があった日から1年を経過する日までの間は、当該遺族(補償)等前払一時金の請求をすることができる。』
この規定も、障害(補償)等年金前払一時金と同じ扱いで、
・支給決定の通知があってから1年
・これを請求できるときから(つまり労働者が死亡した日の翌日から)2年
のいずれか早い日が請求期限となります。
試験対策上、『同じものはまとめて覚える』というのが、頭の中のメモリーを消費しないので有効です。
なお、障害のない子が18歳に到達した場合のように、先順位者が前払一時金を受給した後に失権した場合は、転給による受給権者(たとえば、労働者の死亡の当時60歳以上の父母)は前払一時金を請求することはできません。試験上の引っ掛けは『合計額が1000日分に到達するまでは請求できる。』で、✕。。。です。支払う側も、ちょこまか請求されたらめんどくさいのです(笑)。
支給月も、前払一時金の請求が年金の請求と同時でない場合は、障害(補償)等年金前払一時金の場合と同様に、『奇数月』です。老齢年金などの定期の年金支給が『偶数月』で、臨時的・例外的なものの支払いは『奇数月』がほとんどです。(多分、私の試験勉強中、例外はなかったかと思います。)

③遺族(補償)等一時金

1)支給要件及び支給額

遺族(補償)等年金の受給資格者が元々いないなどの場合に、遺族(補償)一時金が、次の場合に、次の額が支給されます。
①労働者の死亡の当時に遺族(補償)等年金の受給資格者がないとき…給付基礎日額の1000日分
②遺族(補償)年金の受給権の権利が消滅した場合において、他に当該遺族(補償)等年金の受給資格者がなく(つまり、転給ができない場合)、かつ、当該労働者の死亡に関し支給された遺族(補償)等年金の額及び遺族(補償)等年金前払一時金の額の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき…給付基礎日額の1000日分から既に支給された遺族(補償)等年金の額及び遺族(補償)等年金前払一時金の額を所定の方法(つまり利息相当額を加算)により合計した額を控除した額
つまり、遺族(補償)等年金前払一時金が、限度額である給付基礎日額の1000日分を支給された場合は、遺族(補償)等一時金は支給されることはありません。

2)受給権者

遺族(補償)等一時金の受給権者となるのは、次の受給資格者のうち最先順位者(①~④の順序で、①~④の中では掲げた順序による者)です。
(共通事項としては、いずれも一定の障害者ではないことです。)
①配偶者
※妻…この配偶者の方が収入が多いなどの理由で労働者の収入で生計を維持していたわけではなかったという場合です。
※夫…妻と同様の場合と労働者の死亡の当時55歳未満である場合
②労働者の死亡の当時、その収入によって生計を維持していた子、父母及び祖父母
※子と孫については、18歳の年度末を過ぎている場合、父母及び祖父母は55歳未満である場合(祖父母は考えにくいですが、途中に養子を挟むとあるかも。。。法律は『万が一のケース』まで考えていますので。)
③労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していなかった子、父母、孫及び祖父母
※この場合は、年齢は問われません。
④兄弟姉妹
※その労働者によって生計を維持されていなかった、又は18歳の年度末を超えているか55歳未満である場合
※兄弟姉妹は通常は『別家庭』を築いているだろうということで、最後順位者となります。
また、元々遺族(補償)等年金を受給していた子や弟妹が18歳の年度末を超えた場合は年金の受給資格者を失格しますが、その場合でも、条件が揃えば遺族(補償)等一時金の受給権者となる場合があります。よって、年金の受給権獲得後から失権までに1000日ない場合は、1000日分の前払一時金を請求するのが得策です。(この論点ですが、筆者がいくら調べても『18歳の年度末までの日数分までしか請求できない』という支給制限の扱いが書かれていないので、請求できるだろうと思いますが。。。試験には出ないとは思いますが、逆に知っている方がいらっしゃったら教えてください。多分、政府から見たら、形は違えどどうせ合計1000日分の給付をするわけですから制限はないと思いますが。。。『もらった人が上手く分けて使ってね。』ということだと思います。)
受給資格者の欠格は、障害(補償)等年金差額一時金と同様で、
・その労働者を故意に死亡させた者
・先順位又は同順位の受給資格者を故意に死亡させた者
・労働者の死亡以前に、先順位又は同順位となるべき者を故意に死亡させた者
は、受給資格者とはなりません。
試験としては、年金と一時金を引っくるめて、
①誰が
②年金か一時金のどちらを
支給されるのかの判断が問われます。

④葬祭料等(葬祭給付)

1)支給要件
『葬祭料等(葬祭給付)』は、労働者が業務上の事由(葬祭料等)、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要件とする又は通勤により死亡した場合(葬祭給付)に、葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて支給する。』
【葬祭を行う者】
一般的には遺族になります。ただし、葬祭を行う遺族がいない場合に、社葬として会社において葬祭を行ったようなときには、当該会社となります。ですから、社長等が亡くなった場合の社葬でも遺族がいる限りは該当しません。
その他の留意事項としては、
・葬祭料等(葬祭給付)を請求する者が、遺族(補償)等年金の受給権者である必要はありません。『喪主』というイメージです。
・葬祭料等(葬祭給付)の請求と遺族(補償)等年金と同時に行う必要はありません。葬祭が労働者の死亡後すぐに行われるとは限らないからです。健康保険から支給される『埋葬料・埋葬費』は、原則、死亡届の提出と同時に請求しなければならないのとの違いに注意です。埋葬は、死亡後、すぐに行われるからです。
・請求時に、『葬祭に要した費用を証明する書類』を提出する必要はありません。つまり、一時金の一種で定額支給が原則というイメージです。
・傷病(補償)等年金を受給していた(つまり、療養継続中の)労働者が、私傷病が原因で死亡(たとえば癌など)した場合には、葬祭料等(葬祭給付)は支給されません。

2)支給額

『葬祭料等(葬祭給付)の額は、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額(その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合には、給付基礎日額の60日分)とする。』
パッと分かりにくい表現ですが
①315,000円+給付基礎日額30日分
②給付基礎日額60日分
のいずれか『多い方』となります。給付基礎日額の30日分が315,000円より『多い』場合が、②給付基礎日額60日分となるケースです。『最低保障額』という表現をするなら、②の額より低くなることは絶対にないので(①の方が高いときは①が選択されるから)、②が該当します。(試験には、『最低保障額は~』という角度での問いはされないと思いますが。。。)

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