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社労士試験 予備校では教えないポイント解説 vol.078

雇用保険法(6)

求職者給付Ⅲ

①高年齢求職者給付

1)高年齢受給資格

高年齢求職者給付金は、離職による高年齢被保険者の資格喪失の確認を受けた者が失業している場合において、算定対象期間に被保険者期間が通算して6箇月以上であったときに支給されます。
なお、高年齢受給資格に係る算定対象期間は、一般被保険者の受給要件の原則(離職の日以前2年間で被保険者期間が12箇月以上)の場合と異なり、原則として、『離職の日以前1年間』をいいますが、疾病、負傷等により最大で4年間にまで延長される点は、一般の受給資格者の場合と同様です。
【待期・給付制限(後の記事で説明します。)】
基本手当の場合と同様です。②特例一時金(公共職業訓練等を受ける場合の特例も含む)も同様です。
※この待期や給付制限は、不当な受給を制限するのが目的なので、各求職者給付一律に適用されるというイメージです。
【特例高年齢被保険者】
※以前の記事で説明しましたが、事業主の異なる2つの事業所の労働時間を合算して週20時間以上となる場合(1の事業所の労働時間が週5時間以上である場合に限ります。)に、高年齢労働者の任意により雇用保険を適用させるものです。
特例高年齢被保険者となる申出に係る適用事業(週所定労働時間の合算の対象となる事業)のうちいずれか1の適用事業を離職した場合も、高年齢求職者給付金の支給対象者となりえます。この場合は、離職した1の適用事業において支払われていた賃金をもって後記3)の支給額を算定します。
※特例高年齢被保険者本人も保険料を負担していますので、その払い戻しという意味もあるとイメージしたら理解しやすいかと思います。

2)受給手続

高年齢求職者給付金の支給を受けようとする高年齢受給資格者は、離職の日の翌日から起算して1年を経過する日(以下、『受給期限日』といいます。)までに、管轄公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした上で、失業の認定を受けなければなりません。

3)支給額

高年齢求職者給付金の額は、原則として、基本手当相当に、以下の給付日数を乗じて得た額となります。
ただし、失業の認定日から受給期限日までの日数が以下の日数未満であるときは、当該認定日から受給期限日までの日数分しか支給されません。(つまり、極端な例ですと、受給期限日当日に手続きをすると、1日分しかもらえません。次の特例一時金も同様です。)
①算定対象期間が1年未満…30日
②算定対象期間が1年以上…50日
【自己の労働による収入があった場合】
高年齢求職者給付金は一時金であり、上記の出頭をした時点で失業の状態であればよく、したがって自己の労働による収入があっても減額されず、そもそも届ける必要もないです。一時金ですので、失業の認定日は、管轄公共職業安定所長が定める日の1回のみとなります。(次の特例一時金も同様です。)
【賃金日額の最低・最高限度額】
基本手当の日額相当額の算定基礎となる賃金日額の最高限度額は『30歳未満の者』に適用される額となります。(これは、65歳以上となれば、子も独立し、生活環境が30歳未満の者に近いとイメージすれば納得できるかと思います。)
なお、最低限度額は受給資格者と同じ(2,746円)となりますが、特例高年齢被保険者については、その申出に係る適用事業(週所定労働時間の合算の対象となる適用事業)のうちいずれか1の適用事業を離職した場合には、最低限度額の規定は適用されません。離職した当該事業の週所定労働時間が短く、元々の額が小さいので、算定結果が最低限度額未満になることが多いからです。
【算定基礎期間】
高年齢求職者給付金に係る算定基礎期間には、高年齢被保険者となった日前に基本手当、高年齢求職者給付金又は特例一時金の給付を受けたことがある者については、これらの給付の受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前の被保険者であった期間は、含みません。
※給付金を受けたら対象期間もリセットされるということです。

②特例一時金

1)特例受給資格者

特例一時金は、離職による短期雇用特例被保険者の資格喪失の確認を受けた者が失業している場合においては、算定対象期間(前述の高年齢受給資格者の場合と同様)に被保険者期間が通算して6箇月以上であったときに、支給されます。
この被保険者の計算においては、月の途中で資格を取得したときは、その月の初日から資格を取得したものとみなし、資格喪失日の前日(離職日、つまり最終勤務日)が月の途中であるときはその月の末日を資格喪失の日の前日とみなします。(被保険者期間はすべて曆月単位で計算され1箇月未満の端数の期間が生じることはありません。)
※つまり、極端な例ですと、『月の末日1日+4箇月+月の初日1日=4箇月と2日』でも6箇月とみなされるわけです。夏場の海の家や冬場のスキー場で働く労働者のための規定といってもいいでしょう。
なお、高年齢受給資格の場合と同様に、特例受給資格者に係る算定対象期間も、原則として『離職の日以前1年間』とされています。また、疾病、負傷等により最大4年間まで延長されることも同じです。

2)受給手続

特例一時金の受給を受けようとする特例受給資格者は、離職の日の翌日から起算して6箇月を経過する日(以下、『受給期限』といいます。)までに、管轄公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした上、失業の認定を受けなければなりません。

3)支給額

特例一時金の額は、原則として、基本手当の日額相当額の30日分(当分の間は40日分)になります。ただし、失業の認定日から受給期限日までの日数が30日(当分の間は40日)未満であるときは、当該認定日から受給期限日までの日数しか支給されません。
※この『30日(当分の間40日)』という論点は、試験に出題しようとすれば、正答が複数にならないように、『本則では(30日)』とか『施行規則では(40日)』と書かないといけないので、その時点で受験生に感づかれて正答を導かれてしまうので、出題しにくいのでは?と思います。択一式で出題するなら『50日』等、必ず✕の肢になってしまうはずです。
【賃金日額の最低・最高限度額】
基本手当の日額相当額の算定基礎となる賃金日額の最高限度額は、一般の受給資格者の場合と同様ですが、65歳以上の特例受給資格者の最高限度額は、『30歳未満の者』に適用される額となります。なお、最低限度額は、一般の受給資格者と同じ2,746円となります。

4)公共職業訓練を受ける場合の特例

特例受給資格者が、特例一時金の支給を受ける前に公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等(その期間が30日(当分の間は40日)以上2年以内のものに限ります。つまり、特例一時金の所定の給付日数を超えているということです。)を受ける場合には、特例一時金は支給されず、その者を一般の受給資格者とみなして、当該公共職業訓練等を受け終わる日までの間に限り、一般被保険者に係る求職者給付(基本手当、技能習得手当及び寄宿手当に限ります。つまり、傷病手当は対象外ということです。)が支給されます。『受け終わる日まで』なので、訓練延長給付のような受講後30日までの延長給付はありません。また、この規定を受ける場合には『特例受給資格者証』を返還しなければなりませんので、訓練修了後に改めて特例一時金を受給することはできません。『今まで短期雇用であった者に、技能を身に付けて安定した職業に就いてもらえるように、特例的に基本手当を支給することにより支援する。』という趣旨なので、一般の被保険者とは違う取り扱いがあるのは、仕方がない部分ですね。

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