【共創コラム】画期的なスマート養殖で水産業の革命をめざす!リージョナルフィッシュとNTTグループが連携協定を締結
皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
私たちは、日経BP総研 イノベーションICTラボとのパートナーシップで「未来共創Lab」を展開しています。
これまで足かけ6年にわたり、ドコモ・ベンチャーズやNTTドコモ、NTTグループとのコラボレーションを発信してきました。それらの実りある取り組みをnoteでも紹介していきたいと思います!
トップバッターは、京都大学発のスタートアップとして注目を集めるリージョナルフィッシュ。“スマート陸上養殖”で、日本の水産業を救うためにチャレンジを続ける企業です。
■リージョナルフィッシュとは?
リージョナルフィッシュは、欠失型ゲノム(DNA全体の遺伝情報)編集で魚類の品種改良を手がけるスタートアップです。欠失型ゲノム編集とは何ぞや?と思われるでしょうが、これは特定の遺伝情報のみをピンポイントで改変する技術。外来遺伝子を導入する遺伝子組換えとは異なり、自然な変異を促すのが特徴です。
同社の調査でも天然魚との差が見られず、安全との結果が得られています。欠失型ゲノム編集では、これまで30年ほどかかっていた品種改良プロセスを10分の1ほどの2〜3年にまで短縮できるのだそうです。
こうして生まれた新品種を、ICT技術を駆使したスマート陸上養殖によって増産します。陸上養殖のメリットは、天候状況に影響されずに生産力を担保しやすいこと、場所を選ばない多様な魚種の養殖が可能なこと、トレーサビリティの確保が容易なことが挙げられます。
2021年9月には、自社で開発したブランド鯛「22世紀鯛」の提供を開始。クラウドファンディングを活用して支援者を募ったところ、100万円の目標額に対して320%となる320万5500円もの資金を集め、大成功に終わりました!
ゲノム編集により生まれた可食部増量の22世紀鯛。厚生労働省、農林水産省への届出は完了済で、国の手続きを経て上市する世界で初めてのゲノム編集動物性食品となりました
22世紀鯛は可食部マシマシの真鯛で、丸々と太った見た目がいかにも食欲をそそります。10月には立て続けに「22世紀ふぐ」の支援を募り、こちらは目標額に対して389%を達成しています。
■創業者はどんな人?
2019年に創業したリージョナルフィッシュの技術基盤は、京都大学のゲノム編集技術と近畿大学の完全養殖技術。ところが共同創業者/代表取締役社長の梅川忠典氏は、新卒で経営コンサルティングファームに入社、次にプライベートエイクティファンドへと渡り歩き、コンサルティングや経営支援に従事したという、いっぷう変わった経歴の持ち主です。
梅川氏が起業したきっかけは「日本の養殖産業を高付加価値化し、水産業をサステナブルな成長産業に変えていきたい」との思いからです。創業当初からオープンイノベーションをめざしてきたのも、その思いの現れと言えます。
リージョナルフィッシュの梅川氏
■NTTグループが多方面で協力
このイノベーティブなアプローチにNTTグループが共鳴しました。2020年10月には、NTT、NTT東日本、NTTドコモらと連携協定を締結し、同じタイミングでドコモ・ベンチャーズらによる資金調達を実施。研究、技術、出資と多方面から協力体制を敷いています。
「中核となる京大のゲノム編集技術と近大の完全養殖技術は、世界に誇る力を持っています」と胸を張る梅川氏。とは言え、自分たちの技術力だけではカバーできないところも出てきます。例えばスマート陸上養殖に活用しているAI、IoT、最新の循環ろ過技術などです。そこで水産業がより高度化していくために、現在世に出ている技術を転用することが効率的と考え、NTTグループとの協定を結びました。
リージョナルフィッシュにNTTグループが協力。左から、
ドコモ・ベンチャーズ田口知宏氏
NTT久住嘉和氏
リージョナルフィッシュ梅川氏
NTT東日本・田口幸敬氏
NTTドコモ横井優子氏
リージョナルフィッシュ本社に置かれた水槽前にて撮影。
具体的には、NTTが「海洋中に溶け込んだ二酸化炭素(CO2)量を低減させるCO2変換技術の実証実験」、NTT東日本が「陸上養殖場でのICTを用いた実証」、NTTドコモが「バナメイエビの養殖における最適解の実証実験」を共同で実施しています。
水産業とNTTグループは遠いように思われるかもしれませんが、昨今のSDGsや地球環境保全の流れもあり、NTTグループでは第一次産業との協業を推進しています。2019年にNTT東日本が農業×ICTの専業会社「NTTアグリテクノロジー」を設立したり、NTTドコモが東日本大震災の東北復興を機にカキ漁師と一緒に開発した「ICTブイ」を2017年から提供したりと、実は関わりが深いのです。
出資を担当したドコモ・ベンチャーズの田口知宏氏は、リージョナルフィッシュについて次のように話してくれました。
自らも養殖魚が好きなドコモ・ベンチャーズの田口氏は、個人的にもリージョナルフィッシュに興味があったという
「NTTの紹介を受けてサービスを知ったとき、こんなに面白いサービスはなかなかないと興奮したことを覚えています。ただ、ビジネスとして出資に値するかを判断するのはまた別の視点が必要です。“養殖がスケールするのか?”“NTTが養殖をやる意味は?”など、多方面から考察しました。
決め手になったのは、ゲノム編集と完全養殖技術が確立され、競合に対する高い優位性が確保されていたこと、また既存の養殖事業と比較し期間当たりの生産性が4倍と圧倒的に高められること、NTTグループとのシナジーによりさらに生産性を高められる道筋があったことです。そして、大手企業を巻き込むことに長けた梅川さんとゲノム編集の第一人者である京都大学の木下政人先生というチームのバランスも魅力的でした」
■リージョナルフィッシュの由来とは
直訳すれば、“地域の魚”となるリージョナルフィッシュ。社名の由来には、梅川氏のこんな思いが託されています。
「農作物も畜産物も品種改良を重ねながら進化してきたわけですが、水産業は未だに天然モノが一番だととらえる風潮が残っています。それは農耕畜産に比べ水産養殖の歴史が短く、品種改良が進まなかったから。長期的に見れば水産物も品種改良が進み、やがて品種改良されたもののほうが美味しいという時代が来るに違いないと考えました。未来には、イチゴのあまおうやとちおとめのように、その土地ならではの品種改良された美味しい魚が味わえるようになる。社名のリージョナル(地域の)フィッシュ(魚)には、新しい“地魚”を作り、地域を盛り上げたいとの願いを込めています」
■今後の展望
ビジネス畑から飛び込んだ梅川氏は、明確なビジョンを持って事業を進めています。
「最大の目標は、日本の水産業がもう一度世界で戦えるようになること。海に囲まれた国にもかかわらず、日本の水産の生産量は年々減少し、30年前の世界1位から8位になってしまっている。トップに返り咲くためには、最新のテクノロジーを採り入れて、ほかの国が真似できない養殖技術を確立するしかありません。
ゲノム編集による品種改良はその先駆けとなるものです。生産性の高い品種や高付加価値な品種を作ることから始まり、平易なスマート陸上養殖によって水産業の就業人口の減少をカバーし、ICTの力で必要な人に必要なタイミングで魚を届けるようにする。すべてがスマートになれば、日本はまだまだ挽回できます。そのためには、リージョナルフィッシュ1社だけでは非力過ぎる。だからこそオープンイノベーションで、さまざまなプレイヤーが一丸となることが重要なのです」
■まとめ
革新的なテクノロジーで、日本の水産業が再び世界で戦える地点まで引っ張っていく。リージョナルフィッシュの梅川氏の言葉からは、決意表明のようなものが感じられます。そこにNTTグループの技術と知見、資本が融合することで、ワクワクする未来が実現しそうです!
ちなみに、リージョナルフィッシュでは22世紀鯛や22世紀ふぐを自社のオンラインで販売中。興味がわいた人は、チェックしてみてはいかがでしょうか。
見るからに美味しそうな22世紀鯛!
(オンライン販売ページ)
https://regionalfish.online/collections/madai22
(元記事はこちら)
未来共創Lab
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/22/nttdocomov0125/
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