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9/1開催【ドコモベンチャーズセミナー】この1年メタバースはどう進化した?~Mogura VR編集長によるXRの最新動向を総括~

【ドコモベンチャーズセミナー】この1年メタバースはどう進化した?~Mogura VR編集長によるXRの最新動向を総括~

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。

今回は2022年9月1日(木)に行ったイベント、

【ドコモベンチャーズセミナー】この1年メタバースはどう進化した?~Mogura VR編集長によるXRの最新動向を総括~

についてレポートしていきます!

本イベントには、VR/AR業界関連のメディアを運営するMogura VRの編集長が登壇しました。この1年のVR/ARやメタバースの動向と技術進展、そしてこうした現状の光と影についてみていくとともに、今後起きると考えられる展開についてご説明していただきました!

  • 新規事業開発を担当される大企業の皆様

  • XRを用いた事業開発を検討されている大企業・スタートアップの皆様

  • 新規事業、オープンイノベーション等をご検討されている方

  • 最新のサービストレンド、テクノロジートレンドに興味のある方

  • 既存産業のアップデートを目指す皆様

にぜひお読みいただきたい内容となっております!

以下、セミナーの内容をご紹介します!

<株式会社Mogura 代表取締役/Mogura VR 編集長 久保田 瞬様>


株式会社Mogura 久保田 瞬様

・はじめに

「メタバース」という言葉は2022年1年で知名度が一気に上がり、本イベントへの参加登録者が600名を超えました!

久保田様は2015年にVR専門メディア「Mogura VR」を立ち上げ、Mogura社を創業して以来、XRを中心としたバーチャル業界に関連するメディアやイベント企画、起業支援などを行っています。

業界全体に詳しい久保田様のプレゼンテーションをご紹介していきます。まずは、XRの最新情報についてです。

・XRとメタバースについて

まず「XR」とは、VR、AR、MR、SRなどの、仮想空間または仮想的なものを用いて、新たな体験を演出する技術のことを言います。

そして「メタバース」とは、バーチャル空間でXR技術を用いた仮想空間内で、ユーザがアバターなどを介してコミュニケーションや買い物、レジャーなど様々なサービスを行うことや、その仮想空間自体を指しています。

しかし業界統一の定義はなされてはおらず、ポジショントークにとどまっています。久保田様は、「3次元のインターネット」という表現が、最もしっくりくるメタバースの表現方法だと述べていました。

・VRの最新情報

久保田様が考える2022年~2023年のVRの姿

VRは2016年頃から一般向けのデバイス販売が開始され、ゲームやコミュニケーション向けにコンシューマ市場が拡大してきた段階です。有名なデバイスでいうと、Meta社が製造した「Meta Quest 2」や「PlayStation VR」などがあります。

しかしこうしたVRデバイスの販売台数は、VRではないゲーム用デバイスと比較してようやく平均的な販売台数になってきたという段階です。

今後は、2022年の年末から2023年初頭にかけて新たな競争状態になると予測しており、「Meta Quest 2」の値上げも相まって、上記で紹介した企業以外の参入も見込まれます。MetaやPlayStationも同時期に新製品の発売が予想されています。

・ARの最新情報

ARに関しては、目立ったコンシューマ向けデバイスは存在していません。AR技術の多くは、スマートフォンを通じて主にSNSを提供するアプリケーション上で確認できます。

日常的な使用が可能なARデバイスを製造するのは、技術的にも困難な状況であり、現在ではスマートグラスを中心に開発が進められています。

またAR技術は視界に限ったものではなく、音のARも着実に進んでいます。具体的には、空間音響という言葉で表されるような、現実世界には存在しない音を用いて特別な表現をするもので、大手のイヤホン・ヘッドホンメーカーの多くに採用されています。

VRにしろARにしろ、体験するコンテンツ自体を作ることについても注目する必要があります。

現在では汎用性の高いUnityのようなゲームエンジンや、iPhoneを用いた3Dスキャン、モーションキャプチャなどの技術が広がってきており、そのコストも低下しています。

2022年から急速に拡大した、視覚情報をもとにして位置情報を特定するVPSという技術とARを掛け合わせたサービスも発表されており、ARグラスの発展も期待されています。

・メタバースの最新事情

「メタバース」という言葉は2021年の10月から一気にバズワード化しており、その背景には旧Facebook社がMeta社に社名変更をしたということがあります。

しかしメタバースという言葉・概念は突然現れたわけではなく、ゲームと制作ツールの発展や、VR機器等の進化、Web3への流れ、コロナ禍などの様々な要因によって、2021年以前から話題になっていました。現在、多くの企業がメタバースの実現に向けて動いています。

一方でメタバースへの参入を表明したのちに、撤退した会社もあります。その一例が、マッチングアプリの「Tinder」です。

なぜそのように参入を諦めてしまう企業が存在するのでしょうか。理由のひとつが、現時点での技術ではメタバースでできることが限られていてマネタイズには結びつきづらいということです。メタバースに参入してもすぐに収益が得られるような業界は、まだ多くはありません。

メタバースのビジネスポジションを分類すると、次のようになります。

メタバースのビジネスポジションと期待収益・コストの関係性

供給側の役割
(4)メタバース上でサービスを提供する役割
(3)メタバースでモノづくりを行う役割
(2)モノづくりをサポートする役割
(1)メタバースの基盤を作る役割
※スライドの表記と順番をあわせています。

出典:日経BP「メタバース未来戦略 現実と仮想世界が融け合うビジネスの羅針盤」

上記の(1)から(4)の番号が大きくなるほど、供給側の投資コストは下がるものの、メタバースが定着期に入った時の期待収益も小さくなります。基盤を作るような役割は、初期ユーザも少ないため収益モデルが作りにくく、リスクが高いのが現状です。

投資領域としては、「メタバースでモノづくりを行う役割」に該当する部分が現時点では魅力的であるといえます。企業がクリエイターとコラボするという事例が増えてきています。

・ブーム開始から現在までの振り返り

メタバース領域への投資も盛んに行われています。Meta社は年間1兆円投資を有言実行しました。また、日本の会社を含む多くのメタバース関連のスタートアップが数億円から数百億円の調達をしています。さらには、既存ビジネスのプレイヤーがメタバースに参入する例もあります。

ナイキが公開したワールド「NIKELAND」の中では、プレイヤーがバスケットボールなどのスポーツを楽しむことができます。公開から数か月の間に数百万人がアクセスしています。

大企業に限らず、中小企業や自治体、学校法人までもがメタバースへの参入を始めており、各団体が既存事業や広報活動としてメタバースを利用している事例が多く見られます。

メタバース内でサービス利用のために使用できる暗号資産は一時的に価値が上昇しましたが、その後暴落。結局のところ2022年に元の水準に戻っているという見方もできます。

メタバースのサービス提供者もユーザも、中長期的な目線でメタバースに踏み込んでいくこと、マネタイズを意識しすぎないことが大切です。

・メタバースは進化したのか

ここまでメタバースに関連する動向を見てきましたが、結論からいうと、技術的にはここ数年で大きな進歩があったわけではありません。

しかし、Meta社への改名をきっかけに特に盛り上がった過去1年間の結果として、メタバースに関する事例と投資が急激に増加したことは確かです。

メタバースのプラットフォームは着実に進化していくと言えます。将来の発展を予測して、現時点でできることが何かをすべてのプレイヤーが考えていくことが大切です。

・Q&A

Q. 1
コンタクトレンズ型のAR技術について、現状と今後の展望を知りたい。
A. 1
コンタクトレンズを用いたAR技術については、現実世界に併せてオブジェクトを表示するという段階にまで進んでおらず、視力が悪い人向けの補助的なデバイスという位置付けに留まっています。
今後、技術の発展と「裸眼立体視」の技術を用いた表現にも注目が集まっています。

Q. 2
旅行業界が、VR/AR、およびメタバースに参入する理由について知りたい。
A. 2
VRやメタバースを用いて観光地を再現し、PRすることにより、それまでその場所に興味がなかった人の興味をひく、あるいは、現地に赴くことが困難な人に向けたコンテンツを提供できるからだと思います。
今後、今までECで購入していた商品をメタバースを介して購入するという転換が起これば、商品そのものだけではなく、商品に関連する体験もユーザに届けられるようになり、それが観光地の活性化につながるかもしれません。

Q. 3
映画「マトリックス」のような世界は訪れるのか。
A. 3
そうした状況になることはないと思います。なぜなら消費者がそうしたディストピアを望む可能性が低いからです。
特に食欲や睡眠欲はメタバースの中で満たすことが困難であるため、メタバースの位置づけはあくまで現実の補完という程度に留まると考えられます。

Q. 4
五感を伴った体験について、どの程度の進展が予測されるか。
A. 4
今回のプレゼンテーションで私が紹介したほとんどのデバイスは、視覚・聴覚(・触覚)を用いたものです。
たとえば森林浴で人間が感じるものと、それをメタバースで再現したものとは、必ず差が生じます。そうした差を理解しつつ、再現された現実世界をメタバースとして楽しむという方向に向かっていくのではないかと思います。

Q. 5
メタバースの「相互接続性」は必要か。
A. 5
相互接続性とは、簡単にいうと、メタバースがいろんなワールドやプラットフォームで展開されるようになっていく中で、ユーザが共通のアバターを用いて楽しむことができる性質のことです。
現状、そうしたニーズは小さいものの、ユーザの幅が広がったり、メタバース世界が拡大した場合にニーズが生じる可能性があります。
しかしながらメタバースが各プラットフォームごとに独自性を増した場合、手遅れになる可能性があるため、相互接続性に関する議論自体は時期尚早ではありません。

Q. 6
中国、韓国、米国がメタバースの領域で注目されているが、ヨーロッパの事例はあるか。
A. 6
地域差は、その国の企業が積極的に発信しているか否かに依ると思います。実際にイギリスでは2016年から産業振興としてメタバースの支援が行われています。
他にも、北欧の国々はメタバース関連の取り組みをしており、フィンランドを中心に事例があります。

Q. 7
メタバースと親和性の高い分野、および会社はどういったものか。
A. 7
これについては
 1.現在のようなメタバース黎明期における親和性の高い領域
 2.中長期的に見てメタバースが発展した場合に、親和性の高い領域
の2つに分解して考えます。前者については、コンテンツをすでに持っている会社、もしくは不動産・鉄道会社のようなリアルな場を持つ会社が、ユーザを獲得しやすいため、親和性が高いといえます。
後者に関してはほぼすべての企業、業界が関わってくる可能性があるため、すべての分野に関して親和性が高いと言えます。

Q. 8
久保田さんおすすめの、メタバースに関連する作品があれば教えてください。
A. 8
1つ目は、メタバースという言葉を初めて使った小説「Snow Crash」(Neal Stephenson著、1992年)がおすすめです。
あとはARとVRの両方が出てくる、「ソードアート・オンライン」の映画「オーディナル・スケール」を見ると、なかなか興味深い描き方がされていることがわかると思います。

・まとめ

今回は、メタバース関連の最新トレンドについてのお話をお聞きしました。

今後、メタバースが徐々にマネタイズ可能な領域へと変化していき、今より資金力のある企業の参入が相次いだ場合、メタバースやVR/AR関連の周辺機器の進化が加速していくことが予測されます。

仮想現実の一種の最終形態ともいえる、人気アニメ「ソードアート・オンライン」で描かれている「フルダイブ」型の機器が完成するのは何年後になるかはわかりません。しかし久保田さんの言葉をお借りすれば、「将来の発展を予測して、現時点でできることが何かをすべてのプレイヤーが考えていくこと」が重要なのかもしれませんね。

Mogura社主催 国内最大級のXR/メタバース開発者・クリエイター向け
テックイベント「XR Kaigi 2022」(2022年12月開催)もお見逃しなく

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!

引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!

>>今後のドコモ・ベンチャーズのイベントはこちら


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