今日は都立高校の合格発表らしい

犬の散歩をしていたら、外はとても暖かく、春らしい空色が広がっていました。この感じ、17年前に経験した都立高校の受験を思い出します……。


2005年3月1日。制服を着て電車に乗り、一人で合格発表を見に行きました。校内に入るとぽつぽつと帰宅していく中学生たちとすれ違います。みんな分厚い紙封筒を抱えていますが、その表情からは合格しているのか、不合格なのかよくわかりません。普通に朝学校にいくような感じの表情です。

不合格だったらそそくさと逃げるように学校を出て行こうと考えていると、発表会場にたどり着いてしまいました。しかし、数字が書いてあるデカデカとした模造紙が見つかりません。中学生数人が受付窓口の窓に目を凝らしてのぞき込んでいました。窓に張られたA4サイズの紙に合格番号が印刷されているようです。

375(担任の先生が語呂合わせで「みんな合格」とも読めるので縁起のいい番号だと言っていました)

私の受験番号も印刷されていました。合格です。一人で見に来たので「あっ……!! ふーん」みたいな気持ちで合格書類を受け取りに行きます。事務のおばちゃんが能面みたいな表情で「合格おめでとうございます」と言ってくれました。学校事務のおばちゃんが、私の合格をお祝いしてくれた人・第一号となりました。

私も分厚い封筒を持って帰宅です。校門の前ではどこかのお母さんが息子と友人が集まってニコニコとしている写真を撮っていました。学校を出る親子も表情は明るいです。

帰宅途中の井の頭線は、フカフカでボヨンボヨンのシートが特徴のようでした。穏やか日差しがシートを温め、眠気を誘います。

こっくりこっくりしながら電車を乗り換え、地元の駅に着きました。母からは「ねえどうだったの?」「なにか返事してよ」というメールが2件ほど入っていました。着信もあります。「よし、暗い表情で帰宅し、親を不安にさせたあと『合格してたよ……』といって驚かせてやろう」と思って折り返しの連絡はしないことにしました。

家に帰る前に学校に寄り、先生たちに合格発表の報告です。部屋に入るちょうど入れ違いのタイミングで、隣の隣のクラスの女子が出てきました。彼女は5年生のころ、席が隣だったことがあるのですが「わたし、山川君(俺のこと)のことあんまり好きじゃないんだよねぇ」と女同士で話していたのです。それからというもの、私は彼女に強い苦手意識を持っていたのです。

女「あ、受験お疲れ」

私「あ、お疲れ様です……」

女「どうだった?」

私「合格してたよ。君は?」

女「私はダメだった」

私「あ、そうだったんだ……」

女「合格おめでとう」

私「ありがとう……。じゃあ先生に報告してくるから……。お疲れ」

女「お疲れ様」

彼女はどんな気持ちで声をかけてくれたのでしょうか。どんな気持ちで「おめでとう」と言ってくれたのでしょうか。私はどんな言葉をかければよかったのでしょうか。そんなに悪い人ではないのかもしれないな、と思い、先生に合格報告をしました。

担任の先生は見たこともない笑顔で「よかったなぁお前……!! 本当によかったじゃないか!!」と肩をバシバシ叩いてくれました。先生は私の合格を笑顔で祝ってくれた人・第一号です。


家に帰って玄関を開けると母親が駆け寄ってきました。

「あなた、どうしたのよ……!!」

両眉毛を「ハ」の字にしています。その表情は不合格を確信しているようでした。私は無言でうつむき、足早にリビングに向かいました。母も足早に追いかけてきます。

「ねぇ、どうしたのよ……⁉」

「……、受かってたわ……」

「もう!」

背中をバチンと叩かれました。相変わらず眉毛は「ハ」の字でしたが、口元はほころんでいます。母も合格を喜んでくれているようでした。

お昼はホクホクのマックポテトとダブルチーズバーガー、ビッグマックをドカ食いしました。朝、合格発表にいく前、母に「お昼何が食べたい?」と聞かれていたので、「お腹いっぱいマクドナルドが食べたい」と話しておいたのです。涙いっぱいでマクドナルドを食すことにならなくて本当によかったなと思いました。

おしまい

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