おばあちゃんのともだち

おばあちゃんの友達の大親友が細木数子であると母が言っていた。

小さい頃、そのおばあちゃんの友達(細木数子の大親友)に私も占ってもらったことがあるらしいんだけども

「30歳になったら人生で大きな転機を迎える」

と言われたらしい。


今年の4月に私は30歳になった。

付き合っている人と

「結婚できたらいいな」「支えられるように自分もしっかりしなきゃな」

とほんのりと思っていた。


自分の誕生日の12日後に誕生日を迎えたかつての愛犬の仏壇にも手を合わせ

「実はずっと言ってなかったんだけども、付き合っている人がいて○○さんっていう人なんだ……。うまくいくように見守っていてくれ……。」と、諸々の近況報告とともに密かにお願いをしてしまった。


その数時間後、付き合っていた人にLINEでフラれた。


フラれてみて久しぶりに体重計に乗ってみると、いつの間にか体重が激増していたことに気づく。数年かけて増えた贅肉。裸で鏡を見ると腹の出た男と目が合った。

「こんな醜い男は死ねばいいのに」

そう思ってからしばらくしてジムに入会。今では「死ね!死ね!」と心の中で念じながらダンベルを持ち上げている。通い始めてから体重は7kg減った。


もっと人生に潤いが欲しいな……

と思った私は、中学の部活以来のテニスを再開した。勘を取り戻すのに時間はかかるけど楽しい。調子に乗ってラケットも買い替えた。色は自分にとって縁遠く、好きでも嫌いでもない黄色。中学では白ガット以外は使用禁止だったけど、大人だから黒ガットを張った。


「あら、あなた……。」

母親にラケットを見せると

「黄色ってあなた確かラッキーカラーだったはずよ。細木数子の大親友だっていうおばあちゃんの友達がそう言ってた気がする。あれ、青だったかしら……」

と言いだした。ラケットは黄色でもグリップテープは青にしたからどっちでもOKだ。


「30になったら大きな転機を迎える」

小学生くらいの頃から、おばあちゃんの友達がそう言ってたと母親に教えられていた。


転機ってなんだ?

ラッキーカラーは何色だ?


おばあちゃんの友達で細木数子の大親友であるその人に聞いてみたいけども、おばあちゃんはもう認知症でその名前は思い出せない。でも、元気だったころ、頭脳明晰で「歩く辞書」と言われていたスーパー頭脳の持ち主だったころであっても「あの人、名前なんて言ったっけな……?」とその名前を思い出すことはなかった。

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