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世界に愛を振りまいた君に、誰が報いたというのだろう

 キモオタなのでソシャゲの話をします。おはようございます。いやぁ空気がうまい。

 今日の話題はFGOでしばらく前にあったイベントシナリオ、『大奥』の悪役、カーマの話です。

こいつです。猛りますね…

 情報流れてきたときに俺の中の雁夜おじさんがガッツポしましたし、描いてるのが俺が昔お世話になったエッチ漫画の人だったのでこれは何としても弊カルデアに迎えねば、って思ったんですよ。だけどね、シナリオ終わらせて、色々考えて、何をおいても来てもらわねばならない、ってなってしまった。完全に運営の掌の上。

 今回は単なるスケベを超えて、俺のどんなところにこいつがこんなにも刺さったのかを、出来る限り整理してお伝えしていきたいです。読みにくかったらごめんなさい、ではやっていきます。

※今回はFGO大奥イベントはもちろんのこと、いくつかの漫画のネタバレがふんわりと含まれます。今回は『ぼくらの』『ARMS』が入ります。御留意下さい。



・高解像度の砂漠の中で

「誰にも愛されないかもしれない」という漠然とした不安を持ったことのない人間は、いるとすれば随分と幸せだなあといつも思う。僕は例によって劣等感の塊なので、そういう想像には事欠かない生活を送っている。

 しかし、今の僕は同時に、それが誤解だと知っている。両親には愛されてきたと思う。友人にも恵まれている。彼女は、その、うん。とにかく、セックスの関わる領域以外の親愛を得ている自覚はある。俺の想像は、いわば靄のかかった荒野を歩いているような景色に近い。何が隠れているか分からないが、荒れ野のような気がしてる。そんな愚かな妄想に過ぎないというわけだ。では、カーマにとってのそれはどうなのだろう。

 結論から言うとそれは“高解像度の砂漠”とも言うべきものだ。劇中でカーマはキアラに「一瞬、強制的に“愛させられた”」といった事を言っている。これを『定量的に愛を観測する術を持っている』と解釈すると、彼女の観てきた地獄の正体がわかる。それは晴れ晴れとした青空の下の、どこまでも続く砂漠の景色。蜃気楼も逃げ水も無い、幻想の入り込む余地のない砂の大地。愛は湧かず、情は茂らず、どこまでも乾ききった心象世界を見つめながら、ただ世界のために、蛇口から溢れるレディメイドの愛を振りまく日々。

 桜に存在した、士郎を中心とした“愛すべき世界”がカーマにはない。そんな要素は全部パールヴァティが持っていってしまった。やさぐれて当然である。

この話の補遺として非常に優れたモデルケースがあって、漫画『ぼくらの』のチズ編です。

めちゃくちゃざっくばらんにこの女の子の話を説明すると

“学校の先生に惚れてセックスしたら、先生の知り合い達に売られて散々生ハメされて妊娠。ちなみに先生は自分の姉と『本気で』付き合ってる。命を消費して動かす巨大ロボットの力を悪用して死と引き換えにレイプ犯達と先生に復讐しようとすると、レイプ犯は愛する妻と子供と一緒、先生は姉とデート中なのを発見する”

って感じ。鬼頭莫宏、鬼かよ。

 この話のミソは、性的関係を持った全員がチズの事を便所かなんかだと思ってて、先生を含めた全員が「本当に愛する相手」がちゃんと居るって事にチズ自身が非常にクリティカルな形で直面する、って事です。本稿の理解の一助となる事を確信するだけではなく、大変な傑作漫画なので未読の方は是非ご一読を。

この理解に沿って卑近な例えをしてしまうと、カーマは“ガワだけはいいクラスヒエラルキー最下層の性処理担当。周りのジョックやクイーンビーに「最近クラスへのご奉仕、足りてなくない???」って嫌味を延々と言われ続けてる”って感じになるんじゃねえかな。あ、キアラは三角形のトップに居ます。経験人数はカーマとおんなじくらい。唯我独尊セックス魔神です。


・そしてカーマは敗北した

圧倒的優位を覆され、カーマは敗北した。宇宙を支配したはずなのに、たった一人の女の“大奥”に全ての前提を破られ、神の槍をその身に受け野望は潰えた。

 消滅の時を迎えたその瞬間、世界の裏側で、己の最大の敵対者の手により“嫌がらせの為に”、その自我を、縁を、保つことを強制される。屈辱に屈辱を重ねた、完膚無きまでの敗戦である。 

 あまりに酷い。いやそれはね、カーマの野望が成った暁には人類終了でしてね?ヒトとケモノの生存競争に良心の呵責なんざ要らねーんだって言えばそれまでよ。だけどさ、陰キャとしてはどうしてもカーマのこの顛末が可哀想で仕方ない。クラスの半端ないレベルのいじめられっ子が教室にダイナマイト投げつけようとしたら、今までイジメに関しては見て見ぬフリしてた学級委員長に彼氏持ちマウント付きの正論パンチでボコられた挙句、こんな世界からは消えちまおうって思ってたら教室の隅っこに強制転移させられてそこで陽キャパーティを眺めてな!ってやられる感じ? お前らには無いのか、人の心、もとい、手心というものが。俺、理解しちゃったよ。『ARMS』で、黒のアリスに思わず手を差し伸べてしまったカツミの気持ちがさぁ……。敵だって見過ごせねえもんは見過ごせねえ。

  でもね、それと同時に俺は思うんですよ。この敗北の先にしかカーマの本当の幸いは無いって。


・HF再演としての“大奥”

カーマが、桜の抱える負の運命との連続体であると言う事を前提に最終決戦を眺めると、そこにはHFの影が見え隠れする。暗黒に堕ちた女と、善性を以って相対する女。後者の手には、男から得た輝き持つ武具。HFにおいて桜は凛の宝石剣と争う事になる。桜が勝利した場合、凛は虚数空間で陵辱の限りを尽くされ、BADENDとなる。あのBADは、桜にとってもそうなのだ。彼女は愛する男と、愛憎半ばする憧れの姉にその悪行を止められて初めて、本当の春を迎える女なのだ。では、桜の悪性と共鳴したサーヴァント、カーマの場合はどうなるだろうか?


・ひねくれ陰キャのホントの願いは痛め付けないと出てこない法則

 マイティーソーのロキの話を前回したばかりなのだけれど、高度に自我を内側に閉じまくったキモオタは、本人が本人の望みを大きく誤解してる場合がとても多い。カーマも例に漏れずそうだ。散々っぱら「愛の過剰供給で甘やかし殺してやる」と気を吐いていた癖に、トドメを刺される段になって

こうである。彼女が今際の際に漏らした本音を勘案すると、彼女の野望の成就の暁に待つものが見えてくる。それは後も先もない、広大無辺の袋小路だ。本当に彼女の望むものを与えてくれるかも知れない存在は、彼女自身が鏖殺してしまった。

全てを愛で窒息させ、がらんどうになった世界で彼女は笑うだろう。頬を伝う涙に、誰一人気付くことのないままで。

 だからきっと、これで良かったのだ。いじめられ、復讐を志し、学級裁判ばりに断罪され、惨めったらしく消えようとした瞬間に生き長らえさせられ更にコケにされる。こんな地獄を通らないと、彼女の本当の幸せは訪れない。

 

カーマ。僕は君の話が聞きたい。神も人も忘れ去った、古き神話を。愛の神の物語を。愚痴っぽくなったって構わない。僕は人間だから、神様のスパンに合わせられないかもしれないけど、出来るだけ頑張るよ。

ようこそ、ノウム・カルデアへ。今紅茶を用意してくる。まずは一息ついて、ゆっくり休んでほしい。お疲れ様、よく頑張ったね。


そして僕の財布からは3万円が漂白されたのであったとさ。僕、王の財宝持ちじゃないから冗談抜きでこれが限界だったんだよなぁ。PUでもない不夜城のアサシンが二枚出た時は流石に耳から変な汁が出たね。なんとパールヴァティは一枚も出ていない。


補遺:絆レベル数値から見るカーマ

これね、アットウィキから剽窃してきたカーマの絆レベル必要ポイントなんですよ。わかります?こいつの心の動き。最初、自分に向けられてる親愛を認識出来てねえんですよ。正真正銘一度も向けられた事ないから。不在は認識するんですけど存在はわかんねえんですよ。んで、一度そうだと認識するとすげえ警戒心高めてくるの。このパート、訝しむってレベルじゃないので仲良くなるのに遅々として時間食うわけです。

んで赤丸の所、音速でチョロくなります。俺本当にこの一連の心の動き痛いくらいわかる。自己の存在に価値を見出してない奴の心だよ、これ。

絆レベル5になったカーマはこう述べる。「とにかく、もう完全に、あなたは私の中なんです。絶対に逃げられない。それだけは忘れないでくださいね?マスター」

逃げられない。離さないと彼女は言う。時の彼方に置き忘れた、愛の素晴らしさを思い出させて欲しいと請い願う。

ドクソ重い。好きだ。俺にあげられる愛なんてほんのちっぽけなものだが、受け取ってくれーっ!!


キキーッ!どんっ! おしまい

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