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アークナイツモジュール文学その2

 前回はこちら。ヘッダーは我らがスーお嬢様の金言です。


 またぞろテキストに感じるものがあるモジュールが溜まってきたので再度紹介を試みんとす。いや、たまに「もう本編でちゃんと紹介してやれよ」レベルの情緒のあるものがあるので油断のできない育成コンテンツです。性能を突き詰めれば数を読めない、物語を網羅すると性能が突き詰められない………。そう誇りとは刃に


①イフリータのモジュール「シンテクシス」

 御存知、超骨太イベント『孤星』でもその精神的成長を見せつけたイフリータのモジュール。おすすめです。内容としては嵌合実験によって“炎魔”となった彼女と、その内面に潜むものとの対話。ふたつの人格が超克し、ひとつになる過程の断片。

「いいや、お前は恐怖に縛られなどしない」
「今は眠れ、イフリータ。この炎が、私とお前の夢を焼き尽くすことはない。我々は安寧を得るのだ」


このシーンありえん泣いた


このテキストに限らず、イフリータまわりのテキストはプロフィール、イベント、公式漫画すべてがめっちゃいいんですよ。

②ホルハイヤのモジュール「図書館」

 こちらも『孤星』から。マイレンダー基金の元エージェントにして『ククルカン』を追う神民の末裔、ホルハイヤのモジュール。オペレーターとしての入職検査のために身に着けたものを脱ぐ一幕だ。なんだかエッチですね。
 『孤星』のシナリオの中で彼女は己の一族が依って立つ寄る辺を粉々に粉砕された訳だけど、そんな彼女が(不幸中の幸ともいえる形で)見出した新たな灯火がロドスであり、ドクターなんですよね。

 「翼」と「皮膚」、そして「孤高」であること―――このすべては、彼らにとって重荷であると同時に、誇りでもあった。
 こうした偽りの装飾品を脱ぎ捨てる時が来るのなら、それは彼らが「ククルカン」の姿へと回帰する時だと彼等は信じていた。

 この一幕が持つ意味はホルハイヤにとってとても大きな意味を持っていて、終始奔放なトリックスターを演じる彼女にとっての最大限の敬意で、祈りだと俺は思うんですよね。密室で密やかに果たされる誠実さなんですよ。
 しかし、つくづく思うんだけど、過去と未来、目指すものは違うのに信じる者への体重の掛け方ってミュルジスと本当にそっくりなんですよ。


③ケルシーのモジュール「医師」

 内容なんてもうどうでもよくないすか?いや流石に嘘ですけど。スタートから圧倒的な質感で綴られる過去の情景で一発でノックアウト。

砂塵が空に口づけする中、遠方にあるオアシスの畔(ほとり)では行商人が足を休めている。

こんな書き出しで始まる掌編は、おそらくバベルが瓦解したあと、『ロドス・アイランド製薬』として新たなるスタートを切る彼女達の前日譚。砂捲く強風の中に佇む、まだ幼いアーミヤを見つめるケルシーの心の機微が描かれる。いや、これ本当に読むかどうかで結構印象変わると思うんだよな。

④アのモジュール「フルーツ味の救急箱」

 リー探偵事務所の面々の小話ってどれもかなりいい感じなんですよ。テキサスが「爆発と歓声」と表現する喧騒の街、龍門の空気を伝えるテキスト群。俺はアの声優の三瓶由布子さんの声がすげえ好きで、口語体で描かれるこの文章は脳内再生がめっちゃ容易なのもミソ。

多少の副作用は仕方ねえだろ。それと、二度と医者なんて呼ぶんじゃねえぞ。
はっきり言っとくが、その爺さんは今夜を超えられたとしても―――
まあいい。少なくとも、今夜は越えられるわけだしな。

 アの生い立ちからの“悪ぶり”と医者としての“心根”の綱引きが心地よい、おすすめのテキストだ。


⑤ポンシラスのモジュール「故郷を示す明星」

 ポンシラスの話していい?するね!?ぶっちゃけポンシラスの事しゃべりたいがためにこのテキストを書き始めたんで今までの話は全部前座。

スキルによる防御結構バカにできん高さ

 ポンシラス、先日のイベント「火山と雲と夢色の旅路」にて実装されたオペレーター。彼女は、冗談みたいな不幸体質から鉱石病を患ってしまったんですね。

 俺最初、「火山と雲と夢色の旅路」で何故ポンシラスが実装されたかわかんなかったんですよね。いやアークナイツの星5オペってあんまりシナリオと関係なく唐突に実装されることもあるしそこまで深く考える必要もないかなって。シナリオの区切り区切りで何故かシエスタを目指す彼女の一幕が時折挿入されるんすよ。そしてモジュールで描かれているのは、そんな彼女の、故郷を目指す旅路の終わり。

斜陽ががらんとした街角を染め上げながら通り過ぎ、柔らかな海風と共に風化した看板をかすめて、鈍い金色に輝かせた。
客足を待つ店、高みを目指して背伸びする古びた建物、そしてまだ成長しきってない高木。
永遠に時間が止まってしまったかのような、こうした光景もまた、さざ波のような夕日に照らされて、陽光のようにぼやけていた。

 おれもうこの書き出しの五感に訴える感じで軽く泣いちゃったんですけど、先を読むと「何故シナリオの基幹に絡まないポンシラスの一幕が必要だったのか」が分かるんですよ。彼女は言わば、ニューシエスタの心の擬人化ともいうべき存在なんですね。長いんですけど終盤を引用。

誰しも、過去の幻影の中で永遠に生きられるわけがないし、思い出を糧として永遠に情熱を燃やし続けられる人も存在しない。
加えて、過去に戻りたいがために覚めない夢につくというのもおかしな話だ。
何事にも終わりが来るもので、その先には新たな始まりが待っている。
彼女はこれまで、恐ろしい絶望に直面してきた。
自己否定も、鉱石病がもたらす戸惑いも、己が他者より優れているわけではないと気付いたときの憂いも、すべて乗り越えてきた。
あとを追い続けるだけなど、もうたくさんだ。
彼女は新たな目標と情熱、そして成果を得ることになるだろう。
太陽は完全に沈み、彼女は遠くに灯る明かりを見た。それはニューシエスタの輝きだ。
さよなら、幼き日の夢よ。今こそ、次の目的地へと向かう時だ。

 もう爆泣きですよ。火山活動の再開でかつての栄華を失ったシエスタはえっちらおっちらと、新たなる一歩を踏み出したんですよね。一方で、祖父からかつての隆盛を伝え聞いた若き建築家もまた、“鉱石病”という不可逆の不幸を背負って前に進んでいる。栄華を懐かしむ心と決別し、かつて憧れたルーツに背を向けた彼女の前に灯る明星、それが彼方に輝くニューシエスタなんですよ。都市と、そこに生きる人々と、かつての繁栄都市をルーツに持つ一人の女の子の決意のシンクロが、ひたすらに美しい。彼らは絶対に苦難に負けない、そんな希望にあふれたモジュールテキスト。みんな絶対に解放してくれよな!

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