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春、千葉、不確定性

 人生の不思議というものが往々にしてある。再会というのはその一つだ。


 過日、千葉県にある以前から推しているレストランに父母と出かけることとなった。コロナもあって随分とご無沙汰していたが、久々に美味い料理を堪能していた。

 コースも中盤に差し掛かったところで、うちの父を呼ぶ声がした。俺の知らない人である。聞けば父の大学の後輩だという(父の学校はOB会の力が結構強く、随分離れた先輩後輩間が案外顔見知りだったりするらしい)。同じ日に、申し合わせたわけでもなく、数年来あっていない知人に出先で再開するというのはちょっとした奇跡の一種で、人生の不思議だ。


 不思議である以上もちろん種がある。確率論的なやつだ。出かけたレストランは名店で、“そこを目的地に遠出してもいい”ようなところだ。これが地元のトリキとかだったらこうはいかなかった可能性は高い(代わりに地元の友達と会う可能性は高いが)。そしてうちの父がなんだかんだで交友関係を大事にしていて、顔が広いことだ。やはり俺ではこうはいかなかった可能性が高い。

 だがなんといっても最大の理由は、結局のところ“ちゃんと外に出かけるかどうか”これに尽きる気がする。リアルの空間にはソートされていない無数のカオスが渦巻いている。そして、インターネット上では簡単にマスクしてしまえる個人情報というか、IDというか、そういったものが(常にフルフェイスヘルメットでもしていない限りは)強制的にオープンになってしまう。これがでかい。自分のために快適に設えられたタイムラインでは見逃してしまう何か(それは快感かもしれないし不快感である場合もある)が外の世界には広がっているということだろう。

 予定調和を超えた何かをインターネットだけで生み出していくことは多分けっこう難しい。まるで本屋の平積みの書籍のように、ランダムに僕らの目に飛び込んでくる事象を愛して、あるいは日々にカオスの種を撒きながら、思わぬ不確定性の快感へ備えていきたい。出不精な自分ではあるが、父に起こった思わぬ再会を見てそう感じた。今年は出会い厨していきます!


 せっかくなんで備忘録として食ったものの話をメモっていきます。“不確定性”というテーマと偶々被るけど、ここのレストランは季節の食材をその時の仕入れ状況に合わせて出してくれるので、季節の定番はあれどめちゃくちゃ幅があって気持ちよくなれます。春夏秋冬いつかコンプしてみたい

ブレザオラ(牛の生ハム)と新玉ねぎのロースト。玉ねぎが甘い…。
マグロの炭火焼。赤身とトロ。白いのは山わさび。軽めの赤ワインとの取り合わせが抜群
モズクカニのニョッキ。濃厚さに寄り切らない塩梅に拍手
春といえば?なの?アミガサタケ。ほかのキノコで味わえない食感
俺調べで宇宙一うまいフォカッチャ
地の野菜と雉のポルペッティ(肉団子)。雉で取った出汁が滋味深い
春を感じるタケノコのグリルも入ってる。
タコの煮物なんだけど食感を変えるために吸盤取ってあってこれは生。さらにチーズかと思ったら乾燥タコをすりおろしたものがかかってる。無敵か?
二種のイシダイ。山わさびと魚の出汁のソースで。マジでソースが魚そのものの味する。
トコブシとウド。肝のソースがありえん美味い。焼きうどと生うどの食感の差もすごい
うーん説明不要!!
口直しのふきのとうのソルベ。苦みと酸味がバッチリ決まってる
フレッシュトマトと花山椒のパスタ。トマトが異次元に美味いが、ここにフレッシュの山椒が合うのが俺にはびっくりだった。
地元の牛乳で作ったヨーグルトとアイス
食後のドリンクとミニカンノーリ。




 これは今日の話なんですけど、銀座に行って初めてバクラヴァを買ってきました。イスタンブルの“ナーディル・ギュル”が出店してると聞いてずっと行きたかったんですよね。真のバクラヴァを食べてみた感想ですが、マジで甘くてバターまみれの最高のお菓子です。熱いコーヒーと一緒にいただきたい。また一つ未知の文化を体感出来て、めちゃくちゃいい休日。

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