ヒトは巨人に抗し得るのか・アークナイツ8章雑感
オタクなのでソシャゲの話をします。ヘッダは本編内容と全く関係ない、最近レベルマにした推し
過日、実装されたアークナイツ8章『怒号光明』の、未来の自分向けのネタバレ感想です。ざっくりと自分にとってどういうところがささったのか書いていくつもり。なんかバックアロウのサブタイみたいになっちゃってるね
https://m.youtube.com/watch?v=ik0-XprwShU
めちゃくちゃかっこいいですね。このPVの1番最初のココ
これでもう既に俺の心はしんどさに支配されてました。ターゲット無力化じゃあねえんだよ。一人の偉大な戦士の終着点が、たった一行に貶められてしまったような気がして。たとえそれが彼自身が選んだ終わりであったとしても、愛国者の最後を俺だけは覚えておこうと思った。
8章という物語
視点人物たるドクターの記憶喪失の只中、レユニオン・ムーブメントとの戦いに始まった一章から続く一連の物語は、タルラの過去と、チェルノボーグと龍門の物理的激突に立ち向かう現在が交錯し完結を迎えた。その構造ゆえに沢山のドラマと人生を内包した群像劇であったが、敢えて誰かを語るのであれば、それはアリーナを置いて他にいないのではないかと思う。
というのも、8章に至るレユニオンムーブメント崩壊の物語は、タルラという英傑の中で繰り広げられた一つの葛藤を舞台にした、アリーナとコシチェイ……つまり、ヒトと巨人の代理戦争であった、と自分には思えるからだ。
アリーナという女
きっとアリーナのような女は、珍しくはあってもきっとウルサスの村々に、そしてテラのさまざまな地域に、少しづつ居たのではないかなと思う。日々の営みや家族を大事にしていて、ほんの少しだけ村の人間よりも知識欲があって、他者の機微への鋭い観察眼を持っている。だけど取り立ててオンリーワンのなにかを持ち合わせるような人間でもない。
村の崩壊、憲兵との対立。紆余曲折を経て南を目指したレユニオンムーブメントの中で、タルラと彼女は何度も話す。他愛のないこと、レユニオンの行く末について。タルラはまさにオンリーワンの、英雄たるべき宿命と素質を持って生まれた存在と言ってもおかしくはない。
そんな彼女にアリーナは語るのだ。
アリーナの語ることはひどく曖昧な部分もあって、だから指導者としてのタルラにとってはきっと飲み込めない部分もあったのだと思う。パンや温かい毛布、そして迫害された人々へ新天地を約束することも、当然だが重要なことだ。それでも尚、彼女は語るのだ。
『目に見える敵がみんないなくなったら……あなたは未来が見えない人たちと同じ敵に向き合うことになるわ。』『その時になってやっと、本当の戦いが始まるの……』
アリーナの語る“本当の戦い”、その正体が一体何なのか、この時点ではきっとタルラにも、そして僕もわからなかった。
憎しみの大地にあってなお
アリーナは命を落とした。下手人はタルラにも、読者たる僕にも分からない。
彼女が最後まで、それを教える事を拒んだからだ。
前述した通り、アリーナは普通の女だ。ちょっとだけ賢く、とても優しく、けれどちゃんと怒りやマイナスの感情も持ち合わせた、普通の人格だ。
恐怖も怒りも、あるいは憎しみもあったのだろう。けれど彼女は“偽りの戦い”に身を投じる事を、なによりタルラにその戦いのバトンを渡すことを最後まで拒否した。己の誇りと、タルラの尊厳を守り抜いたのだ。
コシチェイのアーツについて
一旦ここで少し話を脱線する。コシチェイ、つまり不死の黒蛇のアーツについて考えたい。
彼は己の意思を対象の人間に転写することが出来るのだろう。ただ、彼自身がそれを強制的に行えるかというとどうもそうじゃないらしい(やれるなら才賀貞義よろしく“ダウンロード”してしまえばいいわけで)。であるならば、彼のアーツというものは言ってみればウィルスと同じで、設計図の転写にとどまるものなのだろう。知識や感情……つまり人格の材料は、彼のアーツの影響下にある人間本人が持ち合わせている必要がある。
コシチェイはタルラを後継者にするにあたり、教育を施した。帝王学、知識、戦闘の技術……。そしてタルラが出奔してから、テラの大地で思い知るであろう人間の醜さへの嫌悪、憎しみ。教育が全て終わった時、既にコシチェイは確信していたのだろう。タルラがこの世界の醜さを知り、心に失望を宿すことを。
かくてウィルスに与えられた設計図を基に、コシチェイの人格は再構成された。彼はこうやって、この世界で生きながらえてきたのだろう。シビアな事実の一つとして、コシチェイが、つまり不死の黒蛇がこうして続いてきたということは、テラの大地は(少なくともウルサス帝国のある土地は)千年以上の長きに渡り、争いと猜疑に満ちていたのだろう。そしてそれはこれからも変わらない。少なくとも蛇はそう確信していた。
アリーナの守り抜いたタルラの尊厳は、後年、コシチェイの予言通り粉々に砕かれる事になる。アリーナの誇りは、彼女の命を賭けた痩せ我慢は、全て無駄だったのか? 歴史を弄ぶ不死の黒蛇に、我々は屈するしかなかったのか? 僕らは既に結末を知っている。過去と現在の交差点で、アリーナの残した意志は最期の一線を守り抜いたのだ。
歴史を繋ぐ本当の戦い
タルラはコシチェイの影響下の只中にあって、最後にタルラ自身であることを手放すことはなかった。ただ捨ててしまえばそれで済んだチェルノボーグの制御キーを最後まで手放さずに済んだのは、ウルサスの村で彼女を守った老夫婦、感染者の行く末を語り合った焚き火の光景、最後まで“本当の戦い”を手放さなかったアリーナ。“不死の黒蛇”の、巨人の視点からは決して見えない、人々の芥子粒のほどの善意の連なりが、ほんの僅かな時間を稼いだ。もしもこれが無ければ、完全にタルラの中に“馴染んだ”コシチェイは全てをつつがなく完遂し、チェルノボーグと龍門の衝突は防げなかった。炎国とウルサスの戦争の火蓋は彼が望んだように切られただろう。
人ならぬ不死が結論付けた、テラに充満する悪意と猜疑は本来なら絶対であったのだ。だがきっと、地獄のような世界の片隅に、小さな善意の連なりは滅ぼされる事なく在り続けた。これが“本当の戦い”なのだ。
ロドスに軟禁されたタルラは静かな視線を中空に向ける。きっと不死の黒蛇は滅びた訳ではない。彼女が猜疑に支配された時、再び現れるかもしれない。彼女はこれから、大地に生きる人々の営みを、ロドスと共に経験する事になる。
『この大地の答えを求めて』
彼女の本当の戦いは始まったばかりだ。どうすれば勝ちかも分からない、終わりがいつかも分からない、限りなく分の悪い賭け事。だが彼女は戦い続けるだろう。仲間と過ごしたセピア色の景色が、背中に背負った小さな賢者の言葉と微かに残る温もりが、折れそうな両膝を支えるのだと。新たな烈火を灯した瞳が、静かに不屈を叫ぶのだと。
概ね言いたいことを言い尽くしたので後はその他の作中で好きなシーンについて適当に話して終わりにします。アリーナとタルラの話ばっかりしたけどその他の話題もめちゃくちゃ面白い章でしたよホント
ファッション狂人
傭兵単芝女ことW。おれこいつ好きなんすよね。何が好きっておっぱいが大きいからなんですけどそれだけじゃないんすよ。前からなんとなくコイツ本当はそんなに道化じみた性格してねぇよなって思ってたんだけど今回で確信したよね。
Wはこの下らなくて何処を見渡しても酷いテラの大地と運命を、笑ってなければやってられないから仕方なく笑ってるんだな。自分も含めた大体全部が無価値だと思ってる癖に、大切な人間だけ(テレジアやScout、そして名もなきサルカズの傭兵仲間)は彼女より先に舞台から降りていく。本当はそんなに笑いたくなんかないのかもな、とすら思う。
だから、そういう目線でWのこのスキンのボケーっとした表情を見ると俺はちょっと心に疼痛が走る。黄金の傭兵時代、なんてベルセルクみのある美しさはきっと無いと思うけど、少なくともこの時代、彼女には笑わないで済む瞬間があったのだと思う。
運命を憎んだ英雄
パトリオットはここ最近の娯楽作品の敵役で一番好きな存在なんだけど、何が好きって彼自身が“運命”みたいな極めて不明瞭な何かに対して作中で最も怒ってるからなんだよね。七章の段階で既に
この台詞見た時、この男は本当にありとあらゆるものに奪われ、裏切られ続けて来たんだろうな、って思ったんですよね。だから、過去のレユニオンの歩みの中で、彼がレユニオンムーブメントを信じると決断したことの重さ、そして賢しらに甘い未来を語る者への強烈な侮蔑に震わされてしまった。彼自身はきっと個人という個人に怒りはないのだろうけど……。
『先見の明を自負する者は、まだ運命に弄ばれていないだけだ』
またな!
今回のイベントスチルは全てが良かったんですけど、タルラとアリーナ関連以外で1番正のベクトルに感情が動かされたのはやっぱりこのシーン。遊撃隊、良すぎますよね。思わずコイツら絶対一人も欠けさせねえって気持ちになったもんな。実質俺がロスモンティスみたいなもん。猫耳美少女。
遊撃隊の連中の何が良いって、ロドスと袂を分かつ選択をしておきながらも、自分たちが間違った道を進んでいることを望んでいる事なんだよね。英雄を失い、この世界の綺麗事を信じるには擦り切れすぎた戦士たちが、綺麗事の先に向かおうとするロドスの行く道を寿ぐ。こんな事ってあるかよ。自分達は間違っていたいって、そんな事言うならボブおじさんみたいに安らげる道を見つけに行ってくれよ………!
このまんまでは戦士たちが救われる明日は来ない。おれがテラを幸せな世界にしてやるからな………!(了
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