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IP(歴史)を繋ぐもの(マリオ映画ネタバレ気味雑感)

 巷で話題のマリオの映画を観た。俺ははっきりってマリオの歴史に対して全くの門外漢なのだけど、それでもこの映画に込められた分厚い“地層”のようなものが感じられるすごい映画だった。

 ブルックリンのうだつのあがらない配管工兄弟というオリジンから始まり、ある種の“異世界転生”のようなフォーマットでキノコ王国の物語と合流。クッパの野望を砕き、ブルックリンとキノコ王国双方を救う英雄となるというシンプルで力強いプロットの中で、今までマリオシリーズが歩んできた歴史を縦横無尽に回収していく様は恐るべき手腕だった。個人的に目が覚めるようだったのは、ルイージとマリオが分かれてしまった時のルイージ側の状況が、彼自身の初主演?作である『ルイージマンション』の雰囲気をきれいに踏襲していたことだ。クッパ大王も“愛すべき悪役”を存分に発揮したキャラ造形になっており、シリーズの屋台骨を支えた立役者たちへの制作者の限りない愛がうかがえる。

 音楽についても“これはマリオで聴いたことがある!”と一聴すれば分かるアレンジにあふれており、ここでもシリーズが築いてきた地層を思い知る。本編の話にはあえて触れないが、『名探偵ピカチュウ』“Game On”がかかったら我々はホンモノの戦いが始まる合図だってわかるじゃん? シリーズが繋いできた歴史が僕らの中に埋まった感情の地雷を起爆させる。知らない人はYouTubeとかで調べてほしい。マジでポケモンちょっとでもやってたらわかるから……。

 思えばポケモン映画、D&D映画、そしてこのマリオ映画と、昨今は紡いできたIPの歴史を上手に炸裂させるエンタメが多くなってきた。これは言わば、ゲーム的エンタメの綺羅星であり続けた本物のスター、その第一世代の歴史がまさに爛熟期に入っていることを意味しているんだと思う。懐古厨になろうって話をしているわけじゃあない。ここからたくさんの第二、第三世代的なエンタメコンテンツが時という無慈悲な研磨剤に磨かれ、研ぎ澄まされつつ歴史を重ねた時、きっと僕らの下の世代に直撃する、最高の歴史をぶつけてくるエンタメが生まれていくんだろうなって思ったわけ。いったいどんな作品が歴史の結晶として我々に届くのか、楽しみで仕方ない。

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