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残骸から君へ(ブルアカ-ive a LIVE雑感)

 一生、一生読み終わらなかった。ずっと辛くて読み進められなかった。


スイーツ部イベント、『-ive a LIVE』を。あまりにも俺の大学時代の事を思い出してしまって。アイリ、お前は俺だ……!!


・大学時代のこと

 『青春の偶像』に憧れがあった。男子校六年、浪人二年。積み上げてきたオタクイズムとアイデンティティの不在は“何か”への憧憬へと変わっていた。受験勉強の合間に楽器店に行ったりしてさ。俺はベースの音がすげえ好きだったからべース売り場で不審者になってた。一番好きなのはフリクリのせいでリッケンバッカー、次はジャコ・パストリアスのせいでジャズべ。フレットレスは当然無理。次はスティングレイ……。いやまあとにかく、空想ばかりを膨らませながら、大学合格の時を願っていたんだね。

 俺は二浪の末に大学に合格して軽音サークルに入った。たしかウェルカムライブは四人で組ませてもらったんだけどおれ以外の全員が経験者で、おれはひたすら足を引っ張ってばかりだった。練習したのはフジファブリックの『銀河』と『虹』。あとGRAYの何か。

 今聴いてもマジで当時の辛さ思い出す。演奏全然うまくいかなくて、おれは千葉駅の近くの一風堂でラーメンを食いながら泣いた。続くイベントであった夏休み合宿を急にブッチして、高校時代の友人の家にしけこんだ。夏休明け、おれは引きこもりになった。サークルの仲間、同級生たちも連絡をくれたのに全てを無視した。


・逃げ出したその先に救いなんてない

 おれはアイリに伝えたかった。青春の群像から逃げ出して残骸になって、その先に何もなかったって。いや、正確に言えば生きている以上思ったものと違う何かはあったんだけど、それでも逃げ出した時に受けた背中の傷がじくじくと痛まなくなるまでは長い長い時間がかかるって教えたかった。“自分は何も持ってない”そんな気持ちに囚われた人間の孤独感、だれの言葉も寄せ付けられない孤立感はおれのことだったから。


お前の色をお前のリズムで

 でも、本当に何もなくただ愚かだった俺とアイリは別な人間で、彼女は彼女のままでしっかり輝いていて、そんな光に引き寄せられた仲間はそんなことにとっくに気づいていて、すべては杞憂に終わったんだ。だって彼女はスイーツ部を作って、青春のモラトリアムに素敵な指向性を与えて、それでとっくに人を楽しませてるんだから。輝きに気づかないのは煌星ばかりなりって事なんですよ。


 雨上がりの屋上、青空を映すつかの間の鏡、響くモラトリアムの旋律と歌声。おれがあの時掴めなかった虹を確かにそこに見た。それだけでおれは救われた気がした。


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