ドボクをもっと身近に
どうも。月刊「土木技術」で編集長をしております、今枝と申します。
毎月「土木技術」では「○○と土木」と題し「社会と土木を結ぶ総合誌」をキーワードに様々な生活や文化、社会に隠れている土木(技術)の営みや技術を紹介している雑誌です。
そんな専門雑誌「土木技術」ですが、来年2022年5月で100周年を迎えます。当社、土木技術社(おおもとは理工図書という大学テキストを中心にした版元です)の前身は、日本で初めて鉄道時報を発刊した「鉄道時報局」に始まります。創業者は木下立安。慶應大学をトップで卒業し、福沢諭吉とも縁があった隠れた(?)大物です(←自社自慢w)。2019年にちょうど会社として120年を迎えたということもあり、2020年暮れに「理工図書株式会社120年の歩み」という非売品の冊子を作成したのですが(こちら読みたい方はコメント欄にその旨、お伝えくださいませ)、何と1922年に土木建築雑誌「Civil Engineering & Architecture」を発刊したことが元となり、その後、紆余曲折を経て「土木技術」が戦後の1946年にリスタートすることになりました。 1922年に英語で銘をうった雑誌を発刊するのは、当時の雑誌担当者のモダンさというか粋を感じさせます。
そうしてリスタートとした「土木技術」ですが、インターネットがこれほどまでに普及する前には、海外のビックプロジェクト報告や女性技術者の紹介、施工レポートといった今からすると結構先端的な記事も多々ありましたが、ほとんどが技術的で高度なハードルの高い論文を掲載することを主目的としていました。
しかし、時代や社会が変わるのと同様に、建設業や土木業界もこの数十年で環境は激変しました。高度経済成長期に造られた構造物はメンテナンス・補修の時代に入りつつあり、また国の予算として当てられる公共事業費は諸外国では増える一方なのに、日本は減り、ビックプロジェクトは影を潜め、国をつくるための根幹ともいうべき国土計画もしっかりとしたグランドデザインがなかなか描けないでいます。将来の担い手でも深刻な問題を抱えています。土木は「縁の下の力持ち」と呼ばれていて、同業種に近い、建築のような花びらかな世界と異なり「3K」に象徴されるようにイメージが悪い。
実際、僕も大学では、社会学、政治学や政治哲学なんかを学んでいたのですが、「戦後日本政治史」みたいな授業を履修すると必ず出てくるのが、土建国家日本、派閥政治と闇金、談合、巨悪の田中角栄などなどのオンパレードです。たぶんにもれず僕もそんなネガティブな印象をもって雑誌「土木技術」の編集部に携わるようになり、最初は、おっかなびっくりでした(笑)。「編集会議」なるものが社外の人含めてあるらしいけれども、赤坂かどこかの老舗料亭でお酒でも飲みながら、会議をするのかなぁ・・・僕は下戸だし「君、俺の酒が飲めんというのかね」とか偉い人たちから言われて・・・などなど勝手な妄想を抱きながら雑誌制作に携わることになりました。でも、入社してすぐに見えてきたのは、そういったネガティブな印象を様々に受けながらも、僕らの生活基盤を陰で黙々と無言で、確実に支えている技術者たちの真摯な姿でした。
ドボクはもっと自分たちの仕事や価値、役割を発信した方がいい。災害大国・日本で生活するなかで、そして2011年3月11日の東日本大震災やその後の中越沖地震、繰り返される豪雨災害、いずれも土木技術が防波堤として機能したり、できなかったりです。でも、自衛隊の支援活動は報道されるのに、自衛隊が災害現場に乗り込むために必要な土木の啓開活動は報道されない。それにもへこたれず頑張って災害復旧に従事するたくさんの技術者たちが現実にいるーー。それはもっとPRした方が良いんじゃないか。雑誌「土木技術」の制作を通じてそう思うようになりました。土木は陰日向で密かに輝いているからこそ、素晴らしいんだという美学意識も確かにあります(古市公威や青山士はその典型かもしれません)。でも、深刻な人材不足を土木・建設業界が抱えている以上、もっともっと広く土木の魅力や価値・役割をPRしていくことが、土木の総合誌を制作している身としては必要なのではないか。しかも若い人に向けて。
土木は、日本社会が共有しているようなネガティブな世界ではない。土木や社会基盤インフラはイデオロギー抜きで、その是非を問われなければならないはずです。
随分と、前置きが長くなりました(笑)。僕は技術者でもなければ大学で土木工学を学んだ人間ではありません。今、土木技術者の方々と懇意にさせて頂きながら、土木のことを学びながら雑誌で情報発信をしています。
そんな僕が、紙の誌面ではなかなかできないことや、日々感じることを、このnoteを使って不定期で連載していこうと思います。
名付けて・・・
「文系の、文系による、文系(理系初学者)のためのドボク入門(独善的w)」
です。
どれぐらいのペースになるのか、どんな内容になるのか、このタイトルも思い付きのような企画でスタートさせているので、、、まあ、、、とりあえず軽い気持ちで「へぇードボクって面白そうじゃん」と文系の人間に理解してもらえれば、趣旨としては成功かなっと(笑)。
どうぞ宜しくお願い致します!
月刊「土木技術」編集長 今枝宏光
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