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【ギビング・プレッジ】国外の巨額寄付から見る日本寄付文化について

今や世界の多くの国々で、富裕層が自身の大部分の財産を慈善事業に寄付する"ギビング・プレッジ"と呼ばれる取り組みが行われています。しかし、日本では、このような寄付文化がなかなか定着せず、世界からは少し遅れているように思います。実際、イギリスの「チャリティー・エイド・ファンデーション」による「世界寄付指数」(2016年調査)では、日本は世界で最下位グループにランクインしており、寄付後進国とみられているのです。

今日はギビング・プレッジなどに見られる寄付文化と、日本の寄付市場について考えてみたいと思います。


ギビング・プレッジとは?

"ギビング・プレッジ"とは、富裕層/資産家が生前または死後に自身の資産の半分以上を慈善活動に寄付するという誓約(プレッジ)です。この運動は、ウォーレン・バフェットとビル・ゲイツ夫妻によって2010年に始められ、多くの富裕層がこれに賛同しています。

こうした動きは、世界中の富裕層の寄付行為を促そうとするもので、法的なものではありません(金額や実際の寄付も確認されません)が、すでに28カ国、230名以上の誓約者が登録していると言われています。

メンバーにはマーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクをはじめ、誰もが知る巨大企業の創業者/経営者、資産家が名を連ねています。

日本の寄付文化の背後にある要因

日本とアメリカの年間個人寄付総額は、40倍近いと言われていますが、"寄付元年"と呼ばれる2011年、東日本大震災により多くの人々が寄付しました。この時は実に日本国民の7割近くが寄付をしたことと同程度の推計とも言われています。

しかしながら、まだまだ"寄付大国"アメリカには及ばず、日本国内の富裕層/資産家の間でもギビング・プレッジのような文化は広がっていません。
なぜ日本は寄付後進国と言われているのでしょうか?その答えは、文化、税制、信頼の3つの要素にあります。

文化的な要因

日本では、個々の富裕層が社会に対して貢献するという考え方が一般的にまだ浸透していないようです。
私たち多くの日本人は"税金"を通じて国が社会的な問題に対処すべきと考えている傾向が高く、個人が社会を変革させることができるという意識が他国に比べ低いだと考えられます。

さらには、日本の社長の年収が低いことを要因の一つに挙げる意見もありました。年間報酬が1億円以上の役員の氏名と金額を上場企業は公表しなければならず、横並びを好む国民性ならではの足枷になっているのかもしれません。

税制上の要因

日本の現行税制は、寄付の意義を全く無視しているわけではありません。しかし多くの国々と比較してみると、寄付に対する税制優遇が不十分であると感じる方も多いのではないでしょうか。具体的には、日本の税制では、個人が公益法人への寄付を行った際、一定の限度額を超える部分については所得控除の対象となりますが、その限度額が比較的低いため、寄付を行うインセンティブが十分でないという問題が指摘されています。

さらに、企業についても寄付に対する税制上の優遇措置があるものの、これもまた限定的です。特に、対象となるのは公益認定法人や地方公共団体への寄付であり、その他のNPOなどへの寄付は対象外となっています。これにより、寄付を行いたいと思う企業でも、税制上のメリットを享受することができず、寄付の動機が薄れてしまうこともあります。

信頼の要因

3つ目の要素として"信頼"が挙げられます。
日本人は、寄付を受け取る団体への信頼を必要以上に重視する傾向がありますが、日本国内にはソーシャルセクターの透明性や信頼性を評価するための公的な評価機関が未だに存在しません。これにより、寄付を検討している人々は、自分が寄付をする組織が信頼できるかどうかを自分自身で判断しなければならない状況にあります。

さらに、過去の一部のスキャンダル(不正など)により、非営利団体への一般的な信頼が損なわれていることも考えられます。これらのスキャンダルにより、多くの人々が寄付をすることに対して慎重になっているのかもしれません。

私たちができること

今まで以上に寄付文化を広く浸透させ、多くの人に社会課題に対する個人の影響力を感じてもらうためには、非営利セクターやファンドレイジングの一端において、継続的な情報発信、教育や啓発活動が強く求められています。

そのためには、非営利団体の活動の透明性をより高め、寄付金の使途を明確し、非営利団体への信頼を強化していくことが求められています。

寄付文化の確立は、私たち一人一人の意識の変革から始まるものです。文化的な理解の深化、税制改革の推進、信頼の確立、これらすべてが連動して初めて、日本の寄付文化は進歩することができるはずです。

それでは最後に、これから私たち個人ができること、ソーシャルセクターとしてできることを考えてみました。ぜひ参考にしてみてください。

個人レベルでの行動

  • 自分自身が寄付する習慣を持つこと:私たち自分自身が少しでも定期的な寄付を行うことで、寄付の習慣が形成され、寄付文化の浸透につながります。

  • 情報発信を行うこと:自分が寄付を行ったこと、または寄付活動について積極的にSNSなどで情報発信を行うことで、周りの人々に寄付の大切さを伝えることができます。

どうしても寄付や慈善活動というと大袈裟で、気恥ずかしいような気がしてしまいますが、まずは自分が行動し、隣の誰かの背中を押すことでその連鎖が広がっていくといいですね。

ソーシャルセクターとしての取り組み

  • 寄付の透明性を確保すること:寄付金の使途を明確にすることで、寄付者に対する信頼を得ることができます。組織の運営費用やプロジェクトの進行状況等を公開することで、寄付者は安心して寄付をすることが可能になります。

  • 寄付者へのフィードバックを行うこと:寄付者に対し、寄付がどのように活用され、何を達成したのかを報告することで、寄付者は寄付の有意性を実感することができます。これにより、一度寄付した人々が再度寄付を行う可能性が高まります。

  • 富裕層/資産家へのアプローチ:多くの富を持つ層へ、ソーシャルセクターからアプローチを行い、彼らの思想や動機を理解することでギビング・プレッジのような運動を促進しましょう。

社会全体の視点から見たとき、個人、ソーシャルセクター、そして富裕層が互いに関わり合うことで、より平和で調和のとれた社会を築くことができます。必要な資金を今必要としている場所へ、適切に分配される仕組みを私たち自身がどんどん発信し、共生する社会へ促していくことが今後の日本において求められていると思います。
それは、共感と敬意に基づく、新たな社会の形を定義することになるでしょう。


いかがでしたでしょうか。

これらの行動を通じて、私たち一人一人がギビング・プレッジや寄付文化の浸透に寄与することが可能です。
一人の行動が少しずつ社会全体に波及することで、日本の寄付文化の改善につながると信じています。

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