1978

その部屋の窓からは、東京タワーが見えた。

木造の古い部屋にベッドが3つ。

新入りは真ん中。

庭に大きなびわの木があって不味い実をつけた。

その木に登って庭に入り込もうとした不届き者もいた。そいつはどうなったんだっけな。

初めて親元を離れて暮らさなければならなくなった

高校1年の夏の終わり。


寮にはお当番とか門限とか昔ながらの規則がいろいろあった。

お風呂に毎日入れなかった。

朝ごはんに時々出てくる、油っぽい醤油味の焼き飯が大好きだった。

寮のおばさんは毎日お弁当を作ってくれて

「油揚げが裏返しになっているお稲荷さん」を

初めて見た。


ほんの3、4歳年上のお姉さんたちがとてもとても大人に見えた。


ラジオの深夜放送

商店街の銭湯

ディスコ、合コン

そして初めてのデート


携帯電話もないけど

親の干渉もない

何より痴漢に悩まされた1時間半の電車通学から

学校まで徒歩3分になったこと


楽しいことがたくさんあった

1年半だった。





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